
協力企業とネットワークを組み、世界へ
EV業界に参入しても消えていく企業が多いなか、同社の電動バイクが成功したのは、品質と価格のバランスが良いというシンプルな理由からだ。
「日本では設計から製造、販売まで垂直統合するやり方が好まれます。確かに良いものはできますが、価格が高くなりすぎて売れません。そこで当社では、一からすべてを作る大手とは対照的に、自社で部品の選定やデザイン考案に特化し、部品は他社の既製品を購入する分業制を採用しています。製造コストを抑えつつ、他社の良い部品を集結させることで質の良いバイクを追求できます」
国産大手二輪メーカー出身のスタッフが、パーツメーカーへ寸法をはじめ細かくオーダーし、要求仕様書は数センチの厚みに達するほどだという。
「中国や台湾メーカーのOEM製品を大量に仕入れて販売している企業もありますが、ライトの常時点灯など、日本の法規に合わせたカスタマイズは必要です。その際にきちんと要求仕様書を作らないと、そのまま常時点灯するだけなので、電装系に負担がかかって燃えてしまうこともある。それで大量のリコールを出してしまい、失敗する企業も多いのです」
近年では、EV販売のみならず、バッテリーシェアリングシステムの構築など、エネルギーインフラ事業の展開もはじめているツバメ・イータイムズ。脱炭素社会へ向け、エネルギーインフラや街づくりに関わることは、山本氏が設立時から視野に入れていたことだ。
「当初は資金調達のノウハウもありませんでしたし、EVはそれまでの事業の延長上にあって分かりやすかったので、まずそこからはじめたのです」
エネルギーインフラ事業においても、一製造業者という形ではなく、協力企業とネットワークを組み、世界に向けて取り組んでいくと語る山本氏。
「そのために、EVに活かせる非接触の充電システム技術をもつ企業をはじめ、二酸化炭素除去技術をもつ企業や再生エネルギー関連の技術をもつ企業など、いろいろな企業と連携し、出資も行いながらネットワークを築いてきました。日本というブランド力に加え、こうしたネットワークをもつ点が当社の強みだと思っています」