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山本朋宏
YAMAMOTO TOMOHIRO

山本朋宏

株式会社ツバメ・イータイムズ 代表取締役

電動モビリティやエネルギーインフラ事業で、脱炭素社会の実現に貢献する。
「EV業界への参入障壁は低く、誰でもすぐにはじめられるのですが、とても難しいビジネスです」と語る、株式会社ツバメ・イータイムズ代表取締役の山本朋宏氏。ガソリンスタンドを経営していた山本氏が、新規事業となる電動バイクの開発・販売を行うべく同社を設立したのは2014年のことだ。 翌15年には国内での販売を開始し、16年にはベトナムに進出。ハノイ市の二輪販売店の20%以上と代理店契約するまでに成長を遂げた。
山本朋宏
協力企業とネットワークを組み、世界へ

EV業界に参入しても消えていく企業が多いなか、同社の電動バイクが成功したのは、品質と価格のバランスが良いというシンプルな理由からだ。
「日本では設計から製造、販売まで垂直統合するやり方が好まれます。確かに良いものはできますが、価格が高くなりすぎて売れません。そこで当社では、一からすべてを作る大手とは対照的に、自社で部品の選定やデザイン考案に特化し、部品は他社の既製品を購入する分業制を採用しています。製造コストを抑えつつ、他社の良い部品を集結させることで質の良いバイクを追求できます」

国産大手二輪メーカー出身のスタッフが、パーツメーカーへ寸法をはじめ細かくオーダーし、要求仕様書は数センチの厚みに達するほどだという。
「中国や台湾メーカーのOEM製品を大量に仕入れて販売している企業もありますが、ライトの常時点灯など、日本の法規に合わせたカスタマイズは必要です。その際にきちんと要求仕様書を作らないと、そのまま常時点灯するだけなので、電装系に負担がかかって燃えてしまうこともある。それで大量のリコールを出してしまい、失敗する企業も多いのです」

近年では、EV販売のみならず、バッテリーシェアリングシステムの構築など、エネルギーインフラ事業の展開もはじめているツバメ・イータイムズ。脱炭素社会へ向け、エネルギーインフラや街づくりに関わることは、山本氏が設立時から視野に入れていたことだ。

「当初は資金調達のノウハウもありませんでしたし、EVはそれまでの事業の延長上にあって分かりやすかったので、まずそこからはじめたのです」
エネルギーインフラ事業においても、一製造業者という形ではなく、協力企業とネットワークを組み、世界に向けて取り組んでいくと語る山本氏。

「そのために、EVに活かせる非接触の充電システム技術をもつ企業をはじめ、二酸化炭素除去技術をもつ企業や再生エネルギー関連の技術をもつ企業など、いろいろな企業と連携し、出資も行いながらネットワークを築いてきました。日本というブランド力に加え、こうしたネットワークをもつ点が当社の強みだと思っています」

山本朋宏
3つの挑戦で世界へ羽ばたく

EV販売を軸にしつつ、バッテリー交換ステーションやステーションに電気を供給するシステム、EV使用のデータを活かしたマーケティングなど、さまざまなシステムを切り売りしたり、パッケージで提供したりすることによって、カーボンニュートラルを実現していくことが山本氏の狙いだ。
23年9月には、マレーシア政府が掲げる「グリーン成長戦略」にEVやエネルギー技術を用いて包括的に貢献するために、マハティール元首相が率いるサホカ起業家協会との間で合意文書を締結し、現地企業との合弁会社を設立。海外での活動も積極的に行っている。

「とはいえ、海外の拠点を増やすことは考えていません。 基本的には、世界中から日本に人が集まってほしい。ただ、そうなるようにするには色々な所に出向いて、カーボンニュートラル実現に向けたテクノロジーを広く世界に知らしめる必要があります。ですから、関連する展示会にはどんどん出展していくつもりです。また、『これって本当にできるの?』という疑問を抱かれることもあるので、実装を見せることも必要です。ベトナムの会社は、EVを中心にそれを行いつつ、収益も確保するためのパイロット企業として展開しています」

ツバメ・イータイムズの事業を通じて、3つの挑戦を行っていると語る山本氏。独自のビジネスモデルを展開すること、脱炭素によって世界の環境問題を解決することがそのうちの2つ。残るひとつは、日本の中小企業の新しいマインドセットを行うことだ。

「この国の経済を支えているのは、日本の企業総数の99%を占める中小企業です。中小企業の社長には裕福な方もたくさんいますが、高級な車や時計を買ったりするばかりで、有意義な活用をしている方は少ない」
そこに違和感があって、社会貢献活動をしてきたという山本氏。活動を通じて各界の著名人と知り合い、刺激を受けたことが、今の挑戦につながっているのだという。

「私たちが失敗したら、山口県では今後数十年はこういう挑戦をしようという会社は出てこないかもしれない。ですが成功すれば、地方企業でも新たな産業を作って世界に羽ばたくことができるというモデルケースになり、後に続く若者が出てきてくれるはず。ですから大きなインパクトのある成功をしないといけないと思っています」

山本朋宏

株式会社ツバメ・イータイムズ 代表取締役
https://e-time.tsubame-group.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。