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渡邊将博
WATANABE MASAHIRO

渡邊将博

ワタナベフーマック株式会社 代表取締役社長

食肉加工業界に一石を投じる、
グローバル市場に先駆けた技術革新。
1938年の創業以来、食肉加工の機械メーカーとしてシェアを伸ばし続けてきたワタナベフーマック。現在は日本国内に18の事業所を構え、中国(北京・上海)にも現地法人を設置。そのほか欧米や東南アジアをはじめとする世界17ヵ国に20社の代理店網を広げるなど、海外展開にも積極的な姿勢を見せている。その挑戦への道筋と、グローバル市場に向けた次の一手とは──。
渡邊将博
多様化するニーズに動じない、人対人のサービス

ミートスライサーや冷凍スライサー、ミンチ機や真空包装機など、食肉加工機械には実に多種多様な機種が存在する。ワタナベフーマックはその開発から製造、販売やメンテナンスに至るまでの業務を自社で一貫して行い、業界での地位を築いてきた老舗だ。最近では食品加工場のエンジニアリング事業なども手掛け、その技術力やノウハウに興味を示す企業も少なくない。

主な取引先は大手のスーパーや外食チェーン、コンビニエンスストアのベンダーに至るまで幅広く、間接的ではあるが、私たち消費者との距離も近い企業と言えるだろう。そういった同社の強みとなっているのが、既存の機械をブラッシュアップできる技術力と、お客様の要望に添ったカスタマイズ力やメンテナンス力だ。

「お客様目線のものづくりを徹底するのは勿論のこと、時代の潮流とともに技術革新を追求していくことが我々にとって当然の責務。そのためには現状に満足するのではなく、さらなる高みを目指していく必要があると思っています」
そう話すのは、同社の代表取締役社長を務める渡邊将博氏。創業世代から継承されてきた「信頼・技心・調和」をモットーに掲げ、その追求に全ての時間を費やしてきた。

「当社はこれまで、人対人のサービスを心がけ、お客様との信頼関係を築く努力を続けてきました。信頼があって初めて、真のニーズや課題が浮き彫りになると思うからです」
そうした努力が実り、同社には年間200件以上に及ぶカスタマイズの依頼が舞い込む。消費者からのニーズも多様化するなかで、変化に柔軟に対応するための人対人のサービスが真価を発揮しているのだ。

しかし、これまで食肉業界は、狂牛病や口蹄疫などの様々な問題に直面してきた。人口減少により国内市場はシュリンクし、それに伴って省人省力化や働き方改革、生産性向上への対応も急務となっている。そんななか、同社はロボット技術をはじめとする先端技術の導入や研究開発にもいち早く着手し、グローバル市場への展開も視野に入れてきた。

渡邊将博
世界基準の新機種で、海外進出を加速させる理由

とはいえ食肉加工業界では、欧州に拠点を置く各メーカーが世界のシェアを占めている現状がある。実際にワタナベフーマックの売上の内訳を見てみると、海外での売上は全体の1割に満たない。「だからこそチャンスだと捉えています。日本の人口は減少していますが、世界の人口は増加傾向にある。世界に出ていくのは今しかない」と渡邊氏も意気込む。

しかし、ここで課題となるのが、輸出の障壁でもある国際安全規格への取り組みだ。日本ではJIS規格というものがあるが、例えば世界のトップシェアを占める欧州ではCE規格なるものが存在。各地域でそれぞれの安全規格があり、製品開発を行ううえではそうした国際安全規格への適合が重要な前提条件となってくる。

「そのため当社では、3年前に技術部のメンバーを中心に国際安全規格講習を受講し、受講者全員がシステム安全アソシエイトの資格を取得。国際安全規格への理解を深め、機械に潜むリスクを低減させ、製品開発を行ってきました」
それにより、リスク低減モデル「ワタナベSライン」というモデル群(6機種)を立ち上げ、2019年より販売を開始。一部の機種は欧州CE規格準拠を自己宣言した製品とし、さらなる輸出の促進を図っている。

「現在は海外での展示会などにも積極的に参加するなど、日本メーカーの存在を知ってもらう段階にある」と渡邊氏。
「とはいえ海外への輸出だけがグローバル展開ではなく、国内における社会構造の変化へ対応することもグローバル展開のひとつ。当社製品の安全性が世界で認められれば、グローバルスタンダードとして日本国内にも更なる安全性を提供できる。そこが一番の狙いでもあるんです」

国内の社会構造の変化が起こっているなかで、安全に対する考え方、意識というものをさらに啓発していく必要は確かにある。そして、業界全体で安全への取り組みを強化し、安全を担保していく流れにならなければ、グローバル市場で戦っていくことはますます困難になるだろう。そのような背景から、海外展開を視野に入れた技術革新の一翼を担うべく、ワタナベフーマックは率先した取り組みを加速させてきた。

渡邊氏にとって挑戦とは、「不可能を可能にするため続けること」。
「100%安全な機械というのは世の中に存在しないかもしれませんが、リスクを限りなくゼロに近づける安全な製品開発を目指して努力を重ね、今日の全力を続けていくことが重要だと思っています」
その積み重ねの先にある同社の進化に、今後も大いに期待したい。

渡邊将博

ワタナベフーマック株式会社 代表取締役社長
http://www.foodmach.co.jp/index_j.html
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。