地域完結型のこれからの歯科医療をICTで支援。
メディアは、病院歯科と一般歯科を対象に、歯科医療情報システムを中心としたトータルなICTソリューションを提供している。原点は前述の歯科電子カルテシステムだ。大手出版社で医科学系事典の編纂を担当していた辻氏だが、日進月歩で進化する医療分野において、出版という情報化の仕組みではすぐに内容が陳腐化するという現実を目の当りにし、コンピュータを利用した情報提供の仕組みを構築しようと、1982年に独立しメディアを設立。翌年、厚生省(現厚生労働省)がレセプトの電子化計画を発表したことで、日本歯科医師会から対策委員会での活動を依嘱され、天職を得ることになった。
「医師が作成するのはカルテであり請求書ではありません。歯科のカルテは行動分析に基づいて作成するものですから、私はカルテ内容からレセプト請求までの一貫した流れを体系的な診療データベースとしてまとめ、その成果を『歯科保険診療のすべて』として出版。新しい歯科の始まりを予感させる内容は、大きなインパクトを与えました。本書の内容をもとに、歯科市場に初めてリリースしたのが、歯科電子カルテシステムです」
その後、歯科ICTシステム事業に本格参入。医療は患者との情報共有と理解に基づく必要があると考え、口腔内画像を使って患者と医師とが最適なコミュニケーションがとれるシステムや、介護が必要な高齢の患者を訪問して行う歯科訪問診療を支援するシステム、歯科医院で撮影した画像を大学病院などに読影依頼できる歯科遠隔画像診断支援システムなど、さまざまなソリューションを製品化。「歯科医療のパラダイムシフトをICTの世界から」をテーマに、パイオニアとして業界を牽引している。
「これまで歯科医療は院内完結型の診療体系でしたが、今後は地域にある各種医療機関と連携して行う診療体系が求められます。たとえば、インプラントを埋入した患者さんが認知症になった場合、誰がどう面倒を見ていくのか。また、口腔ケアや摂食支援などの医療介護サービスも担っていかなければいけません。弊社は一般歯科に加え、地域包括ケアや遠隔医療、訪問歯科など、国の政策に対応した医科歯科連携において大きな強みをもっています」
団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題の中で、あらゆる歯科医院は地域の介護事業者との連携が不可欠になりつつある。しかし、ほとんどの歯科医は有病高齢者に対する学習経験がない。そのためメディアでは、2022年より日本歯科大学多摩クリニックとの業務提携を通じて、歯科訪問診療総合研修講座をスタート。歯科医が、地域の医療や介護の現場で、口腔の専門家としての期待に応えられる体系的な知識を身につけることができるようになった。
「弊社には、訪問診療を体系的に学ぶ研修講座もあります。訪問診療の体系と院内で行われてきた診療体系をどのような接点で繋いでいくかが、今後の歯科医院の課題になるでしょう」