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田原康博
TAWARA YASUHIRO

田原康博

株式会社地圏環境テクノロジー 代表取締役社長

最先端の水循環シミュレーションシステムによって
あらゆる地域の水問題解決に貢献する
今やあらゆる企業にとって、環境への配慮はサステナビリティ活動としてのみならず、ビジネスの観点からもマストとなっている。自社拠点や開発地の自然環境や生物多様性の評価には、水を理解することが不可欠だが、株式会社地圏環境テクノロジーは、独自の水環境シミュレーションシステムによってそれを実現する「水循環のスペシャリスト」だ。
田原康博
水環境シミュレーションが解決するさまざまな水問題

「石油資源と同様に、水資源も上手に使わないと枯渇などの問題が生じる恐れがあります。飲料メーカーや製造業の工場などが地下水を活用した事業を行う際には、その水がどこから来ているものなのか、どの程度使ってよいのか、どのような条件のときに取水制限をかけなければいけないのかといった水収支のバランスを把握しておく必要があります」

そこで弊社では、2000年の創業以来開発し続けてきている流域水循環シミュレーションシステム『GETFLOWS(ゲットフローズ)』や独自のデータ分析・可視化技術を活用して、さまざまな水問題解決のためのデータやソリューションを提供し、課題解決の方法をご提案しています」と語る、株式会社地圏環境テクノロジー代表取締役社長の田原康博氏。

陸域における水問題に対して実用的かつ客観的にシミュレーションすることを目的として、現相談役である東京大学の登坂博行教授によって開発されたGETFLOWSの画期的な点は、従来困難であった地上および地下の水の流れを完全に一体化させたこと。

「地表を流れる川の流れの速さに対し、地下水の多くは非常にゆっくりと流れるので、従来はそもそも一緒に考えることはありませんでした。しかし実際には水は地下に浸透した雨水が地表面へ流動して川へ流出するといった循環の中にあり、川の水と地下水とは相互に影響し合っているため、すべてを把握するシミュレーションを行うべきという発想のもとでこのシステムは生まれました」

GETFLOWSは我々が暮らす流域などの地表水と地下水のシームレスな流れを同時に解くことを実現。対象とする流域のより自然に則した水の流れの再現を可能にした。また基本となる地表水や地下水のシミュレーションに加えて、石油類や有機溶剤など水に溶けにくい流体や、雨が降ったときに川が濁るなどの土砂輸送も可能だ。可視化技術も充実していて、シミュレーションデータを元に地面から下のどの位置に地下水があるか、どこで湧き水があるのか、水の流れの軌跡などを描くことができる。​
これによって、一般的なシミュレーションだけでなく、洪水氾濫シミュレーションや汚染シミュレーションなどを行えるので、冒頭に挙げたような地下水の利活用や持続可能性評価のほか、防災・減災対策、地下水の汚染調査や対策など、広範な分野におけるさまざまなソリューションに活用することが可能だ。

田原康博
水についての理解を深めることで、よりよい社会につなげたい

秦野市における水資源管理のための水循環モデル作成および情報公開支援をはじめ、地圏環境テクノロジーのクライアントはこれまでは自治体が多かったが、民間企業からの依頼も増え、現在ではおよそ半々にまでなっていると語る田原氏。クライアントの業種はさまざまだが、近年では地下水利用のための調査だけでなく、「自社の拠点について、地下水を含む自然がどうなっているのか実態を調査したい」といった目的での依頼も多いという。

「今は、一般企業が自社の拠点だけでなく、サプライチェーンにいたるまで、自然環境や生物多様性に対するリスクを定量的に評価・開示していくことが求められています。自然資本を使って事業をしている企業は、環境へのインパクト評価を投資家に開示しなければなりません」

一方で、調査に多額の投資を行うことは、グローバル企業でもなければ難しいという現状がある。「依頼をいただいてからデータを作りはじめるのでは、コストも高く時間もかかってしまうため、迅速かつ適正な価格で対応できるようにすることが求められていると感じています」

そこで地圏環境テクノロジーでは、現在、水に関する情報をデータベース化した国土情報プラットフォームを整備しているという。比較的単純な調査であればプラットフォームからデータを取り出してそのまま提供。必要に応じて新たなデータを取り込んでシミュレーションを行うことで、より詳細な情報を迅速に適正な価格で提供できる。

「さらに日本国内だけでなく、全世界に提供できるように全球情報プラットフォームの整備も進めています。コンピュータの中にもう1つの地球を創り上げ、あらゆる地域の自然水循環の理解を助け、予測していくことで、すべての人々のさまざまな意思決定に貢献することを目指しています」

また当面は政府自治体や企業相手のビジネスとなるが、将来的は一般の人々にもサービスを届けられるような企業になりたい、と語る田原氏。
「たとえば、スマホアプリを通じて自分が今いる場所の地下水がどう流れているのかを簡単に知ることができるようになったら面白い。防災に役立てたり、教育コンテンツにもできます。より多くの方にサービスを提供し、水について理解していくことで、よりよい暮らし、よりよい未来につながればうれしいですね」

田原康博

株式会社地圏環境テクノロジー 代表取締役社長
https://www.getc.co.jp/ja/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。