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谷口一貴
TANIGUCHI KAZUKI

谷口一貴

​​株式会社FLIGHT TIME 代表取締役社長

海外のフライトスクールと提携しつつ、
世界に通用するパイロットを育成。
パイロットの夢を叶えることは狭き門だと思われがちだが、「目指している人は自信と誇りをもって挑戦してほしい」と、株式会社FLIGHT TIMEの代表取締役社長を務める谷口一貴氏は話す。谷口氏は海外で航空機の操縦免許を取得後、国内での訓練などを経て、パイロットへの道をサポートする民間のフライトスクールを運営している。
谷口一貴
画像はイメージです。
パイロットへの夢を諦められない人をサポート。

エアライン(旅客機)のパイロットを目指す場合、王道は国のパイロット養成機関である航空大学校への入学だ。学費は安く、卒業までに操縦免許を取得する。エアラインパイロットのうち、約4割を航空大学校出身者が占める。大卒者などを対象とした、航空会社による自社養成パイロットの採用枠に応募する方法もある。入社後は会社が費用を負担し、パイロットとして養成。しかし、どちらの道も競争率は限りなく高い。

「今は世界的にパイロット不足で、操縦免許を持つ人材を中途採用する航空会社が増えてきました。社会人を経験した後、民間のフライトスクールで操縦免許を取得し、エアラインパイロットとして就職する人もいますが、日本はパイロットになるためのハードルが高すぎて、多くの人が挑戦する前に諦めてしまう。そんな人たちを応援するために会社を設立しました」

谷口氏自身も、パイロットになることを夢見たひとり。海上自衛隊のパイロットを養成する航空学生という制度に応募したものの二次試験で不合格。一般隊員として自衛隊に入隊したが、空への憧れを捨てきれずに退官。単身渡米し、現地のフライトスクールで操縦免許を取得した。

「日本で就職するために必要な訓練を受けるには高額な資金が必要で、パイロットは諦めました。しかし、他の業界で10年ほど働いた後アメリカへ行く機会があり、昔お世話になったフライトスクールを訪問。現地のような高水準の訓練を日本の人たちにも提供できたらと思ったのが、起業のきっかけです」

谷口一貴
海外のスクールと提携しIT化で時間と費用を節約。

現在、アメリカ、カナダ、オーストラリアのフライトスクールと提携し、今年中にはイギリスとニュージーランドも加わる予定だ。訓練生になると、海外のフライトスクールで講義や訓練を受け、現地で操縦免許を取得。帰国後は、海外で取得した操縦免許を国内向けに書き換え、日本の空に慣れる訓練を行う。

「留学のメリットは、海外では訓練が効率よく進むことが多く、天候に左右されることも少ないため、短期間かつ低料金で操縦免許を取得できること。弊社ならではの取り組みとしては、スマートスクールとしてIT化を促進しています。事前座学などをオンライン化し、試験はeラーニングを採用予定。さらに教官が訓練の進捗状況を管理しやすくするためのアプリを開発中です。効率化によって、時間と費用の節約を実現しました」

操縦免許には大きく分けて、趣味として空を飛ぶための自家用操縦士免許と、仕事として航空機を操縦するための事業用操縦士免許がある。エアラインパイロットになるには、後者に加えて、定期運送用操縦士免許をはじめとした複数の免許が必要になる。同社ではさまざまなコースを用意し、自家用操縦士免許の場合は最短で3カ月、エアラインパイロットになるためのすべての技術を学ぶ場合は約3年の期間を想定している。

「エアラインパイロットを目指す場合の費用は、海外の宿泊費も含めてトータルで2000万円前後。IT化で他社より安く設定できていると自負しています。優秀なパイロットになるには、ただ免許を取得することを目指すのではなく、質の高い飛行時間を1時間でも長く空を飛ぶことが重要です。必須の英語力も身につくため、海外で取得するのは大きな利点があります」

操縦免許を取得後、同社では世界中のネットワークによる情報を提供するなどして就職を支援。海外のフライトスクールと提携する利点がここでも活かされている。国内の就職先としては、LCC(格安航空会社)の中途採用などが多いという。

「私たちの調査では、国内では毎年1万人程度がパイロットを目指していると推測。国内では航空会社以外に、海上保安庁をはじめとした官公庁が有資格者を募集することがあります。もちろん海外の航空会社も募集するので、パイロットになれる可能性は意外に大きいというのが私たちの見立てです」

そんな谷口氏が注力するのが、女性の活躍だ。オーストラリアのカンタス航空は、2035年までにパイロットの男女比を半々にすることを公言。FLIGHT TIMEでも女性スタッフを積極的に採用し、SNSなどで体験飛行の様子などの情報を発信。女性にも間口を広げる取り組みに力を入れている。

「デジタルマーケティングの導入など、この業界では遅れている点も強化していく予定です。さらに、当社は業界初の上場も視野に入れています。パイロット育成という事業はニッチなので、脚光を浴びることはあまりありません。株式上場で多くの人たちにフライトスクールの存在を知ってもらい、世界中で活躍するパイロットをひとりでも多く育てたいと思っています」

谷口一貴

​​株式会社FLIGHT TIME 代表取締役社長
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※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。