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田中俊行
TANAKA TOSHIYUKI

田中俊行

名工銘鈑株式会社 代表取締役社長

保守的な社内風土を一新し、社員の成長と挑戦を支援できる企業をつくる。
自動車王国である愛知県において、業界と共に右肩上がりの成長を遂げてきた名工銘鈑株式会社。今なお順調な業績を維持するなか、代表取締役社長の田中俊行が感じる危機感とは。そしてその対策として、田中氏が取り組んでいる挑戦をご紹介しよう。
田中俊行
画像はイメージです。
クライアントに依存する姿勢からの脱却を図る。

「最も大切にしていることは、人財です。社員一人ひとりの成長を支援し、そこで獲得した能力を発揮できる場や機会をどんどん増やしていきます。さまざまな“挑戦の機会を提供する”取り組みを通じて、社員の皆さんに働きやすさと働きがいの両方を得ていただけるように、新たな組織風土、企業文化を醸成していきたい」と語る、名工銘鈑株式会社代表取締役社長の田中俊行氏。

愛知県北名古屋市にある名工銘鈑は、田中氏の祖父が、それまで勤めていた製版会社から独立して1958年に創業した会社だ。シーリング印刷、スクリーン印刷やオフセット印刷、また金属材などへのエッチング加工やプレス加工、トムソン(打ち抜き)加工など、さまざまな素材への印刷・加工技術を基に、シールやラベル、金属製品・樹脂製品などの銘鈑事業を行っている。創業時から大手自動車部品メーカーをクライアントにもち、自動車業界の隆盛に伴って、常に右肩上がりの成長を遂げてきた。

大学で電気工学を学んだ後、取引先企業に就職して営業の修業を積んだ田中氏。名工銘鈑には2012年に入社したが、それからわずか5年後の2017年、先代社長である父親の急逝によって社長に就任した。突然の社長就任とあって、当時は取引先や仕入先からの信用を失わないように毎日必死だったと言う。その後新型コロナウイルス禍とそれに起因する半導体不足などもあったが、それらの難局も切り抜けてきた。そうして安定した経営を維持している現在だが、田中氏はこの状況に慢心せず、むしろ危機感を抱いている。

「長年の間安定して成長してこれたことは喜ばしいことではありますが、反面、社内に保守的で変化を好まない風土が生まれてしまっていると感じます。自動車業界におけるEVの台頭など、世の中のニーズが大きく変わろうとしているなか、いつまでも受け身の体質では変化に対応できません」

自動車部品に貼られる製造番号などを印字したシールなどは、クライアントからデータをもらい、決められた仕様に従って印刷する場合がほとんどだ。大量のシールを正確かつ効率よく印刷するためには熟練の技術が求められるが、製品そのものについて創意工夫する余地はない。
「これからは、言われたものを言われた通りにつくるだけでなく、逆にこちらから提案もできるようにしたり、さらには自社オリジナルの製品を生み出していけるようにしていかなければならないと考えています」

田中俊行
革新的なイノベーター集団を目指し、新規事業に挑戦。

2024年度の中期経営計画において、≪『From making to Creating』…「造」から「創」へ 企業変革を実現する≫をスローガンに掲げた名工銘鈑。これに先駆けて、約3年前には新製品の研究開発を行う部門を発足し、若手を中心に、部門を横断して男女5名の社員を集めて商品開発プロジェクトチームを結成した。「業種に捕らわれず、自分たちがつくりたいもの、ワクワクするようなものを考えていこうということで、自由にアイデアを出しあってもらいました」と、田中氏は語る。その結果生まれたのが、木製銘板の事業だ。
「印刷技術、そして異なる素材同士を貼り合わせる技術など、自動車産業で培ってきた弊社の技術を活かすことができ、再生可能な素材を用いることでSDGs宣言もできる、よいアイデアだと思いました」

プロジェクトチームには、開発だけでなく営業まで任せた。
「彼らにはマーケティングの経験もありませんでしたし、申し訳なく思ったりもしました。また私は営業の仕事が好きなので、あれこれ口も出したくなりましたが、我慢して黙って見守ることにしました。飛び込み営業までしていたのですが、ついに近くにある神社の絵馬やお札などのオリジナルグッズ製作の仕事を取ってくることに成功したんです。もう本当に嬉しかったですね」
新規事業の部門立ち上げにあたっては、社内から「業績は順調なのに、そんなことをする必要があるのか」と反発もあったと言う。しかし田中氏はこれを足がかりに継続して新規事業に取り組み、新たな収益の柱になるまで育てていきたいと力強く語る。

「創業70周年に向けて、自社商品をもった『メーカー』そして、銘板業界の『オンリーワン企業』を目指します。今は売上の7割以上が自動車業界ですが、それ以外の業界へも積極的に進出し、また県外エリアを経て海外へ進出できる企業にしていきたいですね」
自社が手がけるオリジナルの製品によって人々に笑顔と喜びを提供し、そうした社会への貢献を通じて社員がやりがいを見出せる企業になりたいと語る田中氏。
「常に社員ファーストで、社員の挑戦を支援できる環境をつくること。それが私にとっての挑戦です」

田中俊行

名工銘鈑株式会社 代表取締役社長
https://www.meiko-meihan.co.jp
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。