Powered by Newsweek logo

蓼沼憲
TADENUMA KEN

蓼沼憲

株式会社ケミック 代表取締役

金属加工液や洗浄液の開発で培った、
確かな技術力で新たな感動を創出する。
自動車部品などの金属部品を加工する際に必要となる金属加工液や洗浄液の製造・販売メーカーとして、1969年に創業した株式会社ケミック。半世紀以上の歴史をもつ同社を率いるのが、代表取締役の蓼沼憲氏だ。「お客様にWAOを提供する」をモットーに、新たな挑戦を続けながら事業を拡大する蓼沼氏に、同社が目指す未来について聞いた。
蓼沼憲
画像はイメージです。
ユーザーの“声”を製品開発に活かす

幼少期から野球に没頭し、高校時代には野球部に所属。大学進学後も「ギターを弾いたりサークル活動に熱中したり、好きなことばかりしていましたね」と話す蓼沼氏。時代はバブル景気に突入した頃。将来の進路には、当時の学生に最も人気の高かった金融関係の仕事を選んだ。
しかし、“寝る間を惜しんでガツガツ働く”といった業界の風潮に馴染めず、勤めていた会社を4年で退職。何気なく眺めていた求人広告で目に留まったのが、ケミックの営業募集だった。

「業界や会社のことを深く知らずに応募したのですが、面接の際に創業者と野球の話で盛り上がったこともあり、あっさりと名古屋支店への就職が決まりました。自社の金属加工油剤や洗浄剤を売る営業の仕事は、販売店をまわることがメイン。しかも創業者がいち早く週休二日制を導入するなど、当時から働きやすい環境がありました」
しかし、入社して2、3年目には、名古屋支店の売上が悪化。そこで改革の先頭に立ったのが蓼沼氏だった。

「どうにか結果を出そうと、販売店への丸投げをやめて直接ユーザーに会いに行くなど、それまでの殿様商売を改めて営業に没頭しました。そうした活動を続けているうちに多くのユーザーからの要望に気づくことができ、それらの声を製品の改良などに繋げていったのです」
結果、約1年で売上は大きく改善し、蓼沼氏は営業部長に昇進。その後も社内で数々の実績を積み上げ、47歳のときに社長となった。

ケミックの主力製品は、金属加工時の冷却を目的とする水溶性の切削・研削油剤。競合は多いがガリバーメーカーはおらず、「それぞれのメーカーが微妙に差別化した製品をユーザーに選んでもらう形は、ラーメン屋さんがスープの味を競うのに似ている」と蓼沼氏は説明する。
「業界で50年以上の歴史を誇る当社の場合、会社や製品への信頼から古い顧客も多く、ユーザーの業績がそのまま売上に反映されるような状況でした。当社には営業、開発、生産、品質管理という4つの部門がありますが、以前はそれぞれの部門がバラバラにお互いの仕事をしているだけ。『製品がそれなりに売れているから大きな変化はなくてもいい』という感覚が全社的にありました」

そうした状況を打破するため、社長となった蓼沼が打ち出したのが、「創って、作って、売る」という、商売の基本サイクルの徹底だ。
「そのために必要なのが、自己満足ではない製品開発。真の意味でユーザーに求められる製品を開発するには、営業が現場で聞いた生の声を開発部門に伝え、ユーザーや時代のニーズに合った製品を開発・生産し、販売する意識を全員にもたせることが重要です。私が社長に就任してからは月に1回の朝礼や研修などを行い、そうした意識づけやマインド教育を社内で根気強く行いました。時間はかかりましたがその結果として、現在はお客様に付加価値を感じてもらえる多くの製品を開発することができています」

蓼沼憲
術力と開発力で「100年企業」を目指す

世界中の多くの企業が影響を受けたコロナ禍では、ケミックも原材料高騰などで大きな煽りを受けた。
「いくら原料が高騰してもそれをそのまま製品に価格転嫁はできません。苦しいときもありましたが、おかげで部門を横断したチームワークや技術力も磨かれ、価格競争に参入するのではなく、高付加価値な製品で勝負するという当社の進むべき道も明確になりました。金属加工の現場やツールの変化に応じて柔軟に製品を改良したり、顧客のニーズを汲み取った他社には真似のできない製品を開発したり、お客様から要求される製品とサービスを高い技術力で実現することこそが当社のミッション。そうした製品を通じてお客様に感動を与え、従業員やその家族に夢を与えられる企業を目指すべきだと考えたのです」

刷新した経営理念には、これからの飛躍への誓いと社員に長く安心して働いてもらいたいとの思いから、「100年企業」という言葉も盛り込んだ。さらには未来に向けて、異分野への参入に向けた製品開発などもスタートさせた。

「当社の製品が最も使われているのが自動車部品の加工ですが、たとえば電気自動車への切り替えが進めば状況は大きく変わります。そうした市場の変化を見据えて数年前からは、当社がもつ技術を現在とは異なる形で応用した製品の開発を進めてきました」
蓼沼氏がそう話すように、現在は洗浄剤などで培ってきた技術を活かし、犬や猫の涙やけを取るシートを開発。今年6月にはペット関連の展示会にも出展し、販売前の製品が上々の手応えを得たという。

「今後も新たなチャレンジをどんどん社内で推進し、社員が楽しく生き生きと仕事に励めるように“働きがい改革”も進めたい。新規事業も含めて10年後には売上20億円を達成し、企業としても大きく飛躍したいと考えています」
今年で創業54年目を迎えるケミック。日本のモノづくりを支える技術力、そして変革を推し進めるリーダーが、その飛躍の鍵を握っている。

蓼沼憲

株式会社ケミック 代表取締役
https://www.chemicool.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。