2040年度、介護福祉職員は57万人不足
2025年以降、国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者という超高齢社会を迎える日本。厚生労働省の推計では、2040年度に必要な介護福祉職員の数は272万人とされる。現状と比べて約57万人の不足が見込まれ、国は職員の待遇改善のほか、外国籍介護人材の登用拡大に努めている。これに対し、一般社団法人愛知県介護福祉士会会長の下山久之氏はある懸念を口にする。
「日本では、ケア労働の大部分を女性がアンペイドイワーク(無報酬労働)で担ってきました。外国籍介護人材の受け入れ拡大も一つの方法ではありますが、ケア=安い賃金で済ませようとする発想が根底にあるままでは、専門的な知識や技術を有した担い手は育ちません」
介護福祉職員は、高齢者の生活歴や生活習慣、文化、思考、どんな最期を迎えたいかという思いを尊重してケアにあたることが求められる。それには適切な教育・研修を受けた人材が不可欠だ。下山氏が会長を務める一般社団法人愛知県介護福祉士会は、国家資格である介護福祉士資格取得者を会員とする職能団体。専門職である介護福祉士に新しい知識や技術を伝達する研修会などを実施するほか、愛知県内の地方公共団体と協働し、地域住民に対する情報提供を行っている。
職能団体は、医療職をはじめとする専門職が他会員との交流や自己研鑽を目的として活動する組織だ。厚生労働省の報告によると、日本医師会への入会率は約60%、日本看護協会では50%であるのに対し、日本介護福祉士会(東京都)ではわずか5%に留まる。下山氏は「介護福祉職の間で、資格取得後も学び続ける風土はまだ整っていない」と指摘する。
「特に認知症患者へのケアは、この20年間で相当に考え方が変わっています。患者さんがより自分らしく生き続ける環境をつくるために、我々も新しい知識や技術を更新し続けなくてはなりせん」
その一つとして下山氏が挙げるのが、デジタルテクノロジーの活用だ。例えば、認知症患者は自分の尿意を認識できなかったり、上手く伝えられなかったりして失禁してしまうことがある。失禁対策として介護福祉現場の多くは定時のオムツ交換を実施しているが、排泄物が皮膚に付着したまま放置すると、炎症や感染症を引き起こすリスクも。患者の健康が損なわれ、不快感から何度もナースコールを押して職員が疲弊、施設の稼働率が低下するといった悪循環を招く。
こうしたトイレ介護をサポートするのが「排泄予測機器」だ。超音波センサーを使用して膀胱内の尿のたまり具合をリアルタイムで計測し、排尿のタイミングを事前に通知。オムツの費用や介護者の負担を軽減する。