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柴田秀樹
SHIBATA HIDEKI

柴田秀樹

株式会社Kort Valuta 代表取締役

価値の交換を多様化するフィンテックの活用で、
個が尊重される分散型社会の基盤構築を目指す。
「昨年11月24日に、念願の資金移動業者の登録ができたことは弊社にとって非常に大きい。これを軸にさまざまな新しいサービスをローンチすることで、思い描く世界観の実現にまた1歩近づくことができます」と語る、株式会社Kort Valuta(コートヴァリュタ)代表取締役の柴田秀樹氏。
柴田秀樹
画像はイメージです。
フィンテックとヘルステックの融合から生まれるIDテック

同社が開発・展開する「TwooCa(ツウカ)Wallet」は、Visaプリペイドカードのタッチ決済機能を搭載した日本初のハイブリッドデジタルIDカード。社員証や学生証、会員証、診察券などとして活用可能なこのカード及びアプリに、導入企業は自由にカスタマイズポイントを付与できる。

たとえば社員証なら、社員は加盟店企業の商品やサービス、社食などを社割価格で購入できるなど、さまざまなシーンでのポイント利用が可能になる。社員や会員にとってはもちろん、導入企業にとっても、福利厚生の実施に伴う事務的コストや手数料負担を軽減できるというメリットがある。

「資金移動業者の登録をしたことで、今後はチャージした金額を現金出金する機能や、メンバー間での送金による割り勘機能なども利用可能になります。さらには、23年4月に解禁された給与デジタルマネー払いのサービス展開も考えています。給与をデジタルマネーで受け取ることによって、給与から決済への流れがよりスムーズになり、そこで得られるデータを活かして利用者へ還元することで、生活の質の向上につなげることができます」

また、昨年9月に発表した「TwooCa Ring」は、世界初のVisaのタッチ決済に対応した健康管理機能付きスマートリング。
心拍数、歩数、睡眠状態、体温の測定が可能だ。一般的な健康管理だけでなく、社員の勤怠管理や、運輸業界ならドライバーの体調管理、医療業界なら患者のモニタリングなど、さまざまな分野での活用が期待できる。

「TwooCa Walletというソフトによるフィンテックと、TwooCa Ringというハードによるヘルステック。現在、この2つの領域から取得できるデータを結合・分析する独自のAI『TwooCaコンシェルジュ』を開発しています。完成すれば、自分よりも自分のことを知っている『デジタルセルフ』がスマホの中にいるという世界観が実現し、ユーザーはデータの提供に対して本当の意味での利便性やリターンを感じられるサービスになるはずです」と語る柴田氏。
これによって達成できる新しい事業領域を、柴田氏は「IDテック」と定義する。

柴田秀樹
分散型社会の実装によって平等で豊かな社会を実現する

IDテックが目指すもうひとつの目的は、学歴や勤務年数、年収、資産などの表面的な数字に基づく従来の与信モデルでは融資ができなかった層への、金融サービスの提供だ。
「少子高齢化に直面している日本では、早期リタイアからの再雇用、副業やフリーランサーといった働き方、海外からの労働力などの需要が高まっていますが、これらは従来の与信モデルではカバーしづらい。しかしTwooCaの決済データとヘルスケアデータを分析すれば、より内面的かつ本質的なデータを利用した、新しい与信モデルの創出が可能です。これによって、社会における金融的な選択肢の幅を増やすことができるとともに、よりパーソナライズされた、本当に利用者が求めているサービスを提供することが可能になると考えています」

柴田氏がその先に見据えるのは、自分らしさや個が尊重される分散型社会の実現。これは、柴田氏がかつて米国でコアエンジニアとして仮想通貨Rippleの開発に携わっていた頃から目指していた夢でもある。既存の金融ネットワークを介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとして生まれた仮想通貨をはじめ、フィンテックの本質は「人の価値と価値の交換をどのようにするのか」を考えていくことだと柴田氏は語る。

「これまでの中央集権型の社会では、人々は権力から価値交換の手段を一方的に押しつけられてきました。巨大な資本力にものを言わせ、サービスを無料で行き渡らせておいて、普及したところで手のひらを返したように搾取する。そうしたやり方は、紀元前から何も変わっていません。私は人が求めるものを上から落とし込むのではなく、BtoBtoCの形で色々な企業と組み、個人個人にとって価値があるものを見出し、色々な形で色々な価値を交換できる世界を実現したいのです」

分散型社会に適合する価値の交換を実現するために、これまでに紹介した取り組みに加え、24年度には各コミュニティをつなぐ自社ステーブルコインを発行し、ステーブルコインや仮想通貨建ての支払いを既存のペイメントインフラに提供することも予定しているという。

「何千年も続いてきた中央集権的社会を、今、テクノロジーによって変えられる可能性が出てきています。こんな機会は二度とないかもしれません。当社と世界観を共有してくれる人たちが増えれば、きっと変えることができると信じています。そうした人たちがいる限り、私たちも結果を出すことで報いていきたいですね」

柴田秀樹

株式会社Kort Valuta 代表取締役
https://kortvaluta.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。