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佐々木 喜一
SASAKI YOSHIKAZU

佐々木 喜一

成基コミュニティグループ 代表 兼 CEO

元総理から受け継ぐバトン。「世界の人々に尊敬され、信頼される人材を育成するために」。
1962年に京都で産声をあげた“全人教育”をモットーとする学習塾からスタートした、成基コミュニティグループ。現在は関西圏での塾経営を中心に、幼児から社会人までを対象とした多彩な教育サービスを展開するとともに、“志共育”にも注力する。そんな同グループの代表兼CEOを務めるのが、日本の教育業界におけるパイオニアとして知られる佐々木喜一氏だ。第二次安倍内閣の諮問機関である「教育再生実行会議」委員なども歴任。創業60周年を迎えた2022年度には社長職を退き、民間から志共育の普及活動を推進する佐々木氏に、日本の教育の未来や、教育再生を目指してともに戦った故安倍元総理への思いなどを聞いた。
佐々木 喜一
次代を担う人材を育てるための「志共育」

多くの政治家や著名な企業人などを輩出し、関西圏では名門進学塾として絶大な知名度と人気を誇る成基学園。その創業者である父の死後、佐々木氏は28歳の若さで学園の経営を継ぎ、以来、35年以上にわたり様々な改革を実行してきた。たとえば1989年には、「勉強についていけず退塾する子どもたちに『自分は駄目だ』という気持ちを持って欲しくない」という思いから、当時の進学塾では前例のなかった個別指導を導入。今では「ゴールフリー」のブランドで知られる個別教育の成功モデルは、やがて日本のみならずアジア各国に広がった。

いわば教育業界のパイオニアと言える佐々木氏が、教育による日本再生を目指すというビジョンを掲げ、「志教育プロジェクト」を立ち上げたのは2014年。同プロジェクトはその後の2015年に一般社団法人化され、心理学者であり実業家の出口光氏が理事長に就任。佐々木氏は副理事長を務め、特別顧問には、安倍昭恵元総理夫人やサッカー元日本代表監督の岡田武史氏、下村博文元文科相など、錚々たるメンバーが名を連ねる。

では、現在の日本になぜ志共育が必要なのだろうか? 近年、様々な調査で日本の子どもたちの自己肯定感の低さや、日本企業における無気力な社員の増加などが浮き彫りになっている。佐々木氏は、「それらの問題の原因の一端は、戦後の教育に利他の精神、つまり志の大切さを教えることが欠けていたことにあるのではないか」と話す。

「“志”を持つことは、子どもたちが自分のためだけでなく、他人や社会の役に立つ人間となるべく、自ら学び行動するモチベーションになる。また、“志”は人間のOSにあたるものであり、次の時代を担う一人ひとりの日本人が、困難に打ち克ち、力強く人生を歩むための支えになるもの。私たちは、子どもたちを中心により多くの日本人がそうした志を持つことで、日本が再び世界トップクラスの国として、紛争や環境問題など多くの課題を抱える世界の未来に貢献できると考えているのです」
志教育プロジェクトが目指すのは、日本や世界の未来のために、そんな志を持つ子どもたち100万人と、子どもたちの志を共に育むことのできる1万人の先生の育成だ。

「すでに民間の塾や私学での普及が進む志共育を、今後は全国の自治体や教育委員会を通じて、公教育の場にも広げていきたい。私も60歳を過ぎたので塾の経営は後進に譲り、今後は残る人生の天命を果たすべく、日本の小中高3万4千校における100万人の子どもたちの志を現す、志共育の普及に全力を注ぎたいと考えています」と佐々木氏は話す。

佐々木 喜一
「日本のために何ができるか」を、常に考えていた元総理の遺志を継いで

佐々木氏が目指す“教育による日本の再生”。その原点とも言えるのが、安倍元総理の詰問機関である「教育再生実行会議」などでの活動だ。教育業界での実績に注目した当時の安倍内閣から指名を受け、佐々木氏は2013年から安倍元首相が立ち上げた「教育再生実行会議」に参画。いじめ問題から大学入試改革まで、多岐にわたるテーマに応じて日本全国や海外の教育現場を手弁当で視察し、8年以上の活動で多くの提言に関与。その後、2021年には超党派の国会議員170人と民間有職者100人で構成される「教育立国推進協議会」の発起人として、教育国債の発行や大学までの教育費の無償化のための憲法改正についての議論を牽引するなど、「人づくりこそ天命」という自らの志に立脚した活動を続けてきた。

今は亡き安倍元総理とともに、同じ志を持って戦い抜いた教育再生実行会議での日々。佐々木氏は在りし日の安倍元総理の姿を、「内閣総理大臣という多忙を極める要職にありながら、90分に及ぶ50回以上の会議のうち、安倍元総理が途中で退席されたのは、国民栄誉賞の授与式などの2回だけでした。常に私たち委員の話を真剣に聞き、最後はそれぞれの意見に的確なコメントもされていました。何よりも、改革を実際に実行するという強い気概をお持ちだったことが印象に残っています」と振り返る。

そんな安倍元総理から佐々木氏が受け継いだのが、元総理が生前、理想とした「世界中の人々から日本人が尊敬・信頼される人材育成を実現する」というバトンだ。「生前の安倍元総理は、『日本の子どもたちを、世界中から尊敬され、信頼されるグローバルな人材に育てていかなければならない』という強い思いをお持ちでした。そうした思いを実現するために貢献していくことが、残された我々の使命だと思っています」

佐々木氏も参加した安倍元総理の葬儀には、安倍氏の家族や歴代総理大臣、生前に安倍元総理と親しかった人々が参列し、国内のみならず海外からも多くの弔意が寄せられた。当日の出棺の際、気丈にも参列者に挨拶を行ったのは、喪主を務めた安倍昭恵夫人だったという。

「昭恵さんは安倍元総理への感謝を述べるとともに、人生には春夏秋冬があるというお話をされていました。30代の春夏秋冬があり、50代の春夏秋冬があり、その中で安倍元総理は様々な種を蒔いてこられた。『そうした種がいつの日か、春を迎えて芽吹くことを信じています』と、素晴らしい挨拶をされたのです。私としては、そうした種を芽吹かせるための肥料や水として少しでも貢献できればと考えていますし、安倍元総理の死を悔やむ全ての人が元総理の思いを継ぎ、自分自身が『日本のために何ができるか』を考え、行動していくことが大切だと思います。私たち一人ひとりのそうした行動の結果、見えてくる未来の日本こそが、安倍元総理が残した偉大なるレガシーと呼べるものになるのではないでしょうか」
志半ばで凶弾に倒れた元総理の遺志を継ぎ、教育業界のパイオニアが見据える日本再生への道、“志”が創る日本の未来に期待したい。

佐々木 喜一

成基コミュニティグループ 代表 兼 CEO
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