Powered by Newsweek logo

佐々木庸
SASAKI ISAO

佐々木庸

藍の都脳神経外科病院 理事長・院長

最先端の脳神経外科技術を取り入れつつ、
患者ファーストの姿勢で後進を育成。
24時間365日体制で脳神経疾患の救命治療に対応し、「一次脳卒中センターコア施設」に認定されている大阪府大阪市の藍の都脳神経外科病院。脳神経外科・内科、循環器内科のほか、神経血管減圧センター、脳血管内手術治療、脊椎・脊髄センターを併設し、充実した脳外科診療体制を構築している。また、最新脳科学に基づいた治療を行うニューロリハビリテーションセンター、リハビリテーション科や併設の人工膝関節センターでは、術後の社会、経済活動復帰をサポートしている。
佐々木庸
画像はイメージです。
男性スタッフの育休取得100%など、ワークライフバランスをサポート

理事長・院長の佐々木庸氏が特に力を入れるのが、脳内の病変に対する定位放射線治療装置「ガンマナイフ」だ。脳腫瘍や脳血管障害、頭部外傷などの疾患に対して外科的治療をする際、一般的には頭蓋骨に穴を開けて脳を露出する開頭手術が行われる。開頭手術は直接脳に触れるため患者の負担が大きく、脳の損傷や出血、脳血管の閉塞を起こす可能性もある。頭蓋内への外科的処置を最低限にし、負担軽減を目的に開発されたガンマナイフは50年以上の歴史をもつが、設備費用が高額であることから、日本では浸透するまでに時間を要した。

佐々木氏は1991年に日本で初めてガンマナイフを導入した中村記念病院に勤務し、恩師の指導のもとで最先端の治療にあたってきた医師だ。
「ガンマナイフは約200個の細い照射口から正確な一点に集中するよう作られた放射線治療機器です。照射を受けた病巣のみが徐々に凝固・壊死し、病巣部以外の被爆は極めて少なくなります。今まで手術が困難であった部位や、手術に耐えられない高齢者などの治療が可能になり、特に転移性の腫瘍に対しては非常に有効です」

しかし、最先端の設備や技能さえあれば万全なわけではない。がんであることを宣告された患者はパニックに陥り、治療計画の中止や変更を余儀なくされることは珍しくないという。そこで、佐々木氏がスローガンに掲げるのが”患者さんファースト“。これは、小児科の医師であった祖母の教えが深く影響している。「当時は珍しい女性の開業医として夜中の往診もこなしていた祖母は、幼児園児だった私に『患者さんは病気になる時間を選べないでしょ』と優しく言いました」と佐々木氏は振り返る。

患者の急変に対応し、かつ親身に寄り添うには、病院で働くスタッフの健康も心身ともに保つことが必要だ。そのため同院では、ワークライフバランスのサポートにも努めている。
 
「男性の育休制度をいち早く導入し、取得率は100%です。救命救急にあたる医師は、妻の出産や子どもの運動会、進路面談などへの参加を断念せざるを得ないことが多い。そのため、チームメンバーでサポートし合える空気をつくり、できるだけ行事には出席するように促しています。私が家庭をもったとき、よい恩師に恵まれました。後進の医師が仕事と家庭を両立し、存分に能力を発揮できる環境を整えることで恩返しができたらうれしいですね」

佐々木庸
患者ファーストの使命感と倫理観を胸に

後進への教育方針は、新しい技術修得に対する貪欲さと、それを楽しむメンタリティを育てること。医療業界は絶えず進歩しており、10〜20年かけて技術を積み上げてきても、ある日突然新しい価値基準に変わることがある。そうした際に従来の技術に固執するのではなく、患者にとってより楽で安全な治療法を選択できる、人格的にも優れた医師を育成することが佐々木氏の最重要課題だ。

「職員だけでなく、学会を通じて会う若い医師や経営者に指導を行うこともありますし、当院への見学は積極的に受け入れています。外科マインドをもったコメディカルの育成も目指しています」
次世代の医療従事者が色々なことに挑戦できる環境を整えるため、経営者としての目標は、経営規模の拡大と安定化だ。

「藍の都では脳神経外科を基軸に、透析、脳神経内科循環器疾患、乳腺外科、介護など、複数の専門分野にわたる知識や技術、能力を向上できる組織体制の下地を構築したいと思っています。さらに藍の都の枠に縛られず、別の法人の経営にも積極的に関わっていくつもりです」

具体的な事例として、広島県の医療法人社団緑陽会からは、佐々木氏が得意とするリハビリに注力した事業継承を依頼された。佐々木氏は退職金規定などの人事制度も設計し、現在は「介護老人保健施設ふぁみりい」を実質的に運営している。また、フィリピンではリハビリに関わる専門施設や大学の設立に挑戦中。マレーシアや中国への展開も目指して模索している。
脳外科医師としての目標は「生涯現役」。100歳を超えても現場に立ち続けるつもりだという。

「当院の名誉会長は70歳を超えていますが、ガンマナイフ治療の現役です。ガンマナイフや血管内手術は動体視力の衰えにあまり影響を受けず、私より上の世代の方も活躍しているので、先輩たちに負けていられません。“患者さんファースト”な使命感と倫理観を胸に働く姿を後輩たちに見せ、残された時間を駆けていきたい」
ゴールは定めず、ただ進むのみ。外科医として、経営者としての責務を果たす覚悟だ。

佐々木庸

藍の都脳神経外科病院 理事長・院長
https://ainomiyako.net/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。