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奥田敏光
OKUDA TOSHIMITSU

奥田敏光

株式会社アースダンボール 代表取締役社長

段ボールを通じて
幸せをつくっていきたい
業界を問わず、価格競争で疲弊することなく生き残っていくためは、独自の付加価値を提供することが必要だ。フルカラーインクジェット印刷をした段ボール箱のネット販売という武器で勝負する、株式会社アースダンボール代表取締役社長、奥田敏光氏の挑戦をご紹介しよう。
奥田敏光
ひと箱からオーダーできるフルカラー段ボール箱

我々にとってもっとも身近な梱包・包装用容器のひとつ、段ボール箱。段ボールといえば、通常は地味な茶色のものを思い浮かべる人が多いだろう。しかし埼玉県の株式会社アースダンボールなら、全面にさまざまな色を使った段ボール箱をオーダーできる。企業ロゴだけでなく、写真やイラストを使うなど、デザインも自由。しかも低コストで1個からのオーダーもできる点が特長だ。これを可能にしているのは、インクジェットプリンタによるデジタル印刷を採用しているから。段ボールのシートは、波状の紙の両面に平らな紙を貼り合わせた構造をしている。紙への一般的な印刷方法であるオフセット印刷では印刷時に強い圧がかかって波状の部分が潰れてしまうため、通常は柔軟性のある樹脂製の版を用いるフレキソ印刷を行う。

「よりクオリティにこだわる場合はオフセット印刷をした紙で段ボールをラッピングするという方法もありますが、当然割高になります。いずれにしても製版コストがかかるので小ロット印刷には向かないのですが、インクジェット印刷ならその点を解決できます」と語る、同社代表取締役社長の奥田敏光氏。「インクジェット印刷は段ボールと相性がいい」と感じた同氏は、20年以上も前からこれに取り組み、2000年から業界で一番早く小ロットインクジェット印刷段ボール箱の受注販売をスタートした。

「始めたころは専用のインクジェット印刷機などなかったので、ポスター制作などに使う大サイズの紙用の汎用機を使いましたが、1立方メートルの印刷に15分もかかっていました。とにかくユニークな段ボール箱を使いたいという限られたお客様向けでしたね」

またインクジェット印刷機はヘッドをきれいに保たないと、かすれたり余計な線が入ってしまったりする。そこで機械をアップデートしつつ、メンテナンス方法を工夫するなど研究を重ね、高速かつ安定したクオリティで印刷するノウハウを蓄積。18年には独自の超高速段ボール専用フルカラーインクジェット印刷システム「ミラプリ」の構築を実現した。

「ネット通販は店舗がないので、店と客の最初の接点は商品の箱が届いた時。だからその瞬間を盛り上げて店へのよい印象をもってもらうために段ボール箱のデザインに凝る傾向があるんです」

しかし中小のネット通販事業者の場合、あまり箱にコストをかけられないし、コストを下げるために大量発注しても箱の置き場に困る。そこでミラプリが重宝され、順調に売り上げを伸ばしている。

奥田敏光
結果として時流をつかんだ独自の試み

1953年に「奥田製作所」として創業して以来、一貫して段ボール箱製造を手がけてきたアースダンボール。99年に代表取締役に就任した奥田氏は祖父、父に次ぐ3代目社長だ。大学の工学部を卒業後、82年に同社に入社した氏。しばらくしてバブル景気時代が訪れたが、その状況に甘んじず、常に会社を成長させていくために必要なことを模索し続けた。そして90年には学生時代に身に着けたコンピュータプログラミングの知識を活かし、個別原価計算の手法を導入した自動見積システムを独自に開発。

「それまで業界で一般的に用いられていたのは高度経済成長期につくられた方法で、単純に言えば段ボール板の使用面積に応じて原価を算出するというものでした。しかしそれでは平均のロットから外れた場合に適正な価格にならない。そこで箱製造や印刷の機械の占有時間など、個別に細かくかかった経費を反映できるプログラムを組みました」

さらにバブル崩壊後はこれまでと同じ営業方針では競争に生き残れないと考え、日本でインターネットが普及し始めた96年にいち早くホームページを立ちあげて段ボール箱のネット通販を開始。00年ごろから本格的にネット環境のインフラが整ってネット通販が盛んになると、これに伴う段ボール箱需要をつかみ、ネット経由の顧客数を大きく伸ばすことができた。少ロット多品種でも適正な価格を出せる自動見積システムをつくっていたことは、ネット通販、とくにインクジェット印刷をした段ボール箱の販売をやるうえで大いに役立った。


「すべて時代を先読みしてやっていたわけではなく、その時々の発想で、とにかく何かにつながればいいなと思ってやってきただけなんですよ」と言う奥田氏。フルカラーインクジェット印刷のダンボール箱は、売り上げとしては全体の1割程度だが、まだ伸びしろはある。この分野の先駆者として、圧倒的な立ち位置をつくっていきたいと言う。そんな奥田氏のモチベーションの源は、顧客の声。

「サイトに寄せられるたくさんのレビューコメントは毎朝すべて目を通しています。こちらの努力に対して、お客さんが喜んでくれて、それをコメントしていただけるっていうのはやっぱり嬉しいですよね。ただ売上げが上がればよいというのではなく、お客さんや取引先、社員も含めてみんながよくなればいい。これからも段ボールでみんなの幸せをつくっていきたいですね」

奥田敏光

株式会社アースダンボール 代表取締役社長
https://www.bestcarton.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。