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小畑貴志
OBATA TAKASHI

小畑貴志

株式会社エム・イー 代表取締役社長

高度医療情報システムの販売を通じて、安定的な病院経営と地域の医療連携に貢献。
ペースメーカーや人工心臓をはじめ、循環器系の高度医療機器製品の卸業を営む株式会社エム・イー。1989年の創業時は、長野県でこの分野に乗り出した最初の企業だったため、県内のシェアはほぼ100%だったという。
小畑貴志
画像はイメージです。
HAMISを用いた革新的な医療システム

「私の代表就任時には県内シェアが約70%になっていましたが、そこから盛り返して現在は約90%。全国展開も行って50億の売上げを120億近くまで伸ばしましたが、これ以上は厳しいですね」と語る、代表取締役社長の小畑貴志氏。
高度管理医療機器は、国の施策もあって価格が引き下げられる傾向にある。今後は、2年に1度の保険償還価格改訂に一喜一憂しないビジネスモデルが必要だと小畑氏は考えている。

「現在は売上の約9割が循環器製品の卸ですが、新規事業に注力し、2025年には売上の3割まで増やしていきたい」
この構想の核となるのが、医療DX商材の販売だ。これによって、病院経営の効率化の支援だけでなく、循環器治療を中心に予防から予後までの医療をITで繋げる仕組みづくりに貢献したいと小畑氏は語る。

「18年にいわゆる『脳卒中・循環器病対策基本法』が成立して、がんなどと同様に、循環器病についても早期発見、早期治療を積極的に促していく流れが生まれました。ここで問題なのは、高齢化が進んだことによって、即入院させて治療する必要はないものの、心臓が弱っている慢性心不全患者が劇的に増えていくということです。今後はそうした患者について、在宅で制御していく仕組みづくりが非常に重要になります。特に地方では医療スタッフの数を増やすことは難しいので、ITの活用による効率化が不可欠です」

その仕組みづくりの見本となるようなシステムが、千葉県銚子市にある島田総合病院を中心に完成しつつある。島田総合病院が、システム開発会社である株式会社エスパイオン・メディカルテクノロジーと共同で開発した「HAMIS(ハミス)」は、統合システム構造を備えた次世代高度病院経営情報システムだ。

「このシステムの特長は、電子カルテ、各種検査、手術室、薬局、医事会計、物流といったさまざまな要素がひとつのシステムとして統合されている点です。データが集約されているので、各業務の連動も非常にスムーズです」と語る小畑氏。医療情報システムは日本の大手ITベンダーも手がけているが、機能が増える度に別のシステムを継ぎ足しするような構造になっているため、使い勝手が悪いのだという。

「また、機能を追加する際はもちろん、システムを利用するスタッフが増えるたびに追加で費用が発生し、最終的には莫大なコストになります。その点HAMISはあらかじめそれを念頭に置いて設計しているため、概算ですがコストを約半分ほどに抑えることができます」

小畑貴志
医療DXで地域の医療のあり方を変える

さらにHAMISは、クリニックや訪問看護ステーション、ケアマネジャーなどとの連携システムを容易にかつ安価に構築することができる点も大きな魅力だ。
「地域の医療連携のためには、患者とそのかかりつけ医的なクリニック、そして手術など高度な治療を行う病院が繋がっていることが必要なのですが、現在の日本ではまったく実現していない点が問題です」と小畑氏は続ける。その原因のひとつが、クリニックや回復期向けの小規模な病院に電子カルテの導入が進んでいないことだ。

「電子カルテはベッド数400床以上の大病院の普及率は約96%に達しているものの、200床以下の病院はまだ50%以下。コストが高いため、仕組みを下の層まで行き渡らせることができないのです」
そこで、クリニック向けの高度経営情報システムとして開発されたのが「CAMIS(カミス)」だ。

クラウドベースのサービスで、患者とクリニックや訪問看護ステーション、ケアマネジャー間の有機的な連携を実現し、さらにHAMISと接続することで、地域の医療・介護連携システムが一体型で構築される。大病院がHAMISシステムを導入する場合は、協力クリニックのCAMISについては導入費を無料とし、月数万円程度の維持費で済むような運用方法を考えているという。

「検査結果や処方した薬の情報等もすべてリアルタイムに連携でき、更新すると自動的に反映して通知されます。将来的には、患者に心拍数や血圧、心電図等を測定するデバイスをつけてもらい、AIで分析を行うことで、何か起きそうなときにはアラートが発せられて、医療スタッフ間で情報を共有することまで行いたいです」
医療DX事業を開始してから、これまでにさまざまな商材を扱ってきた同社だが、今後はこの医療情報システムをメイン商材に据え、地域の仕組みとしてアレンジを加えながら普及に取り組んでいきたいと小畑氏は語る。

「病院との関係が強い卸業の強みを活かしたい。医療業界だけで完結できる領域ではないので、行政はもちろん、他業種の会社とも協働して事業を進めていきたいですね」
将来的には医療系の総合商社を目指すという小畑氏。医療DXの推進が、地域の医療のあり方を変えていくはずだ。

小畑貴志

株式会社エム・イー 代表取締役社長
https://kkmep.co.jp
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。