HAMISを用いた革新的な医療システム
「私の代表就任時には県内シェアが約70%になっていましたが、そこから盛り返して現在は約90%。全国展開も行って50億の売上げを120億近くまで伸ばしましたが、これ以上は厳しいですね」と語る、代表取締役社長の小畑貴志氏。
高度管理医療機器は、国の施策もあって価格が引き下げられる傾向にある。今後は、2年に1度の保険償還価格改訂に一喜一憂しないビジネスモデルが必要だと小畑氏は考えている。
「現在は売上の約9割が循環器製品の卸ですが、新規事業に注力し、2025年には売上の3割まで増やしていきたい」
この構想の核となるのが、医療DX商材の販売だ。これによって、病院経営の効率化の支援だけでなく、循環器治療を中心に予防から予後までの医療をITで繋げる仕組みづくりに貢献したいと小畑氏は語る。
「18年にいわゆる『脳卒中・循環器病対策基本法』が成立して、がんなどと同様に、循環器病についても早期発見、早期治療を積極的に促していく流れが生まれました。ここで問題なのは、高齢化が進んだことによって、即入院させて治療する必要はないものの、心臓が弱っている慢性心不全患者が劇的に増えていくということです。今後はそうした患者について、在宅で制御していく仕組みづくりが非常に重要になります。特に地方では医療スタッフの数を増やすことは難しいので、ITの活用による効率化が不可欠です」
その仕組みづくりの見本となるようなシステムが、千葉県銚子市にある島田総合病院を中心に完成しつつある。島田総合病院が、システム開発会社である株式会社エスパイオン・メディカルテクノロジーと共同で開発した「HAMIS(ハミス)」は、統合システム構造を備えた次世代高度病院経営情報システムだ。
「このシステムの特長は、電子カルテ、各種検査、手術室、薬局、医事会計、物流といったさまざまな要素がひとつのシステムとして統合されている点です。データが集約されているので、各業務の連動も非常にスムーズです」と語る小畑氏。医療情報システムは日本の大手ITベンダーも手がけているが、機能が増える度に別のシステムを継ぎ足しするような構造になっているため、使い勝手が悪いのだという。
「また、機能を追加する際はもちろん、システムを利用するスタッフが増えるたびに追加で費用が発生し、最終的には莫大なコストになります。その点HAMISはあらかじめそれを念頭に置いて設計しているため、概算ですがコストを約半分ほどに抑えることができます」