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中嶋広樹
NAKAJIMA HIROKI

中嶋広樹

ワールドネットインターナショナル株式会社 代表取締役

予測不能な地震、水害、放射能に備え、
大切な人の命を守る防災シェルター事業。
日本は震度1以上の地震が年間2000回以上発生する地震大国だが、耐震シェルターの普及率はあまりにも少ない。また、爆風や火災、さらに核攻撃に耐えうる核シェルターの普及率を海外と比較すると、スイスは107%、イスラエル100%、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア78%、イギリス67%。
「シェルター後進国」の日本はわずか0.02%に留まる。北朝鮮からのミサイル発射や台湾有事のリスクなど、東アジアをはじめとした世界の安全保障が不安定化するなか、欧米各国に比べて大きく遅れているのだ。
中嶋広樹
画像はイメージです。
「命を守る」「生活を守る」「健康を守る」

ワールドネットインターナショナル株式会社代表取締役の中嶋広樹氏は、こうした状況に危機感を募らせる。同社は「命を守る」「生活を守る」「健康を守る」を理念に掲げ、防災シェルター事業、防犯カメラ事業、高気圧酸素カプセル事業の3本柱を軸に事業を展開。防災シェルター事業では、自社で耐震シェルターや核シェルターの開発・製造を手掛けている。

シェルターで重要なのは「陽圧速度」だと中嶋氏は言う。陽圧とは、シェルター内部の気圧が外気よりも高い状態を指す。陽圧速度が速いほど、救命能力が上がり、救出人数を増やすことができるという。これには、同社の高気圧酸素カプセルの技術が応用されている。

「私たちの生活圏の気圧は1気圧。これに対し、水深約3mでは1.3気圧になります。一般的な酸素カプセルは1.3気圧が主流であり、2.0気圧を超えるものは治療用の医療機器になります。当社の酸素カプセルは1.2〜1.9気圧。健康機器のカテゴリ内で最も高気圧な酸素カプセルを目指しました。お陰様で、健康意識の高いユーザー層に支持されています」

既存の製品では物足りないというユーザーのニーズにいち早く応え、研究開発を進めたという中嶋氏。安定して製品を開発できるようになるまでには、困難も多かったという。

「何度もトライ&エラーを繰り返し、2011年にようやく販売開始しました。当初、同業者からは怪訝な目で見られたものです。斬新な商品だったので、驚きもあったのでしょう。しかし、高気圧を保てる強靭な装置を追い求めていたら、その技術を転用して耐震シェルターをつくることができました。東日本大震災の際に現地の凄惨な様子を目の当たりにしたこともあり、命を守るこの事業に誇りをもっています」

中嶋広樹
未来に残せる資産で大切な人を守る

耐震シェルターは、既存の住まいに手を加えることなく、短期間で設置できることが特徴だ。自宅が倒壊してもシェルター内だけは守られる仕組みで、大がかりな耐震改修工事よりも費用を抑えることができる。近年の防災意識の高まりを受け、役場・警察署をはじめとする行政機関、大学、大手企業からの注文や問い合わせが相次いでいるという。同社のシェルターは580トンの耐震荷重試験に合格した「HG5800」をはじめとした規定品のオーダーが7割。残りの約3割は利用者の身長や体格に合わせたフルオーダーメイドで対応する。また製造にあたっては「ものづくり大国・日本」の矜持を掲げ、ネジ1本に至るまで日本製を貫く徹底ぶりだ。

「今、当社が売るべきなのはサービスではなく『命の安全』。有事の際は、家族全員、従業員全員が1分以内に最上階から地下のシェルターに逃げ込める環境を整備し、提案します。シェルターは、未来に残せる資産のひとつです」と中嶋氏は語る。

核シェルターは個人からの問い合わせが多く、その中心を占めるのが高齢者だ。人生の終わりが見えてくるなか、かわいい孫たちに何を残してあげられるか。お金は使ったらなくなってしまうので、何か形に残るものを、と考える高齢者は多いという。「大事な家族に、とにかく笑顔で生き続けて欲しい」と、シェルターを遺産代わりに購入するという。

「当初は美容・健康機器の販売を行っていた私たちですが、そこから防災事業、防犯カメラ事業を展開したことで、取引先も大きく広がっていきました。従業員やその子どもが誇れるような、生命に関係する事業に、これからも傾注していきたいです。皆と同じことをしていても、あくびが出るくらいつまらないから。誰もやっていないことを率先して調べて、開発して、失敗してはまた戻って……。私にとっては、そんな人生のほうが面白いかなと思っています」

中嶋氏の挑戦を続ける熱い魂は、後進にも受け継がれている。同社では、入社3カ月の新入社員が新商品について社長に直談判しに来ることも珍しくないという。「組織づくりにおいては、フランクに意見を言い合える風通しの良さを心掛けている」と中嶋氏は話す。

一部の自治体では耐震シェルター設置の補助金制度があるものの、日本ではまだ認知度が低い。さらに、核シェルターに関しては「この平和な国で何を言っているんだ」という冷ややかな声が未だに多いという。だが、昨今の社会情勢の変化により、少しずつ国民の意識に変化が生じているのも確かである。大事な人を失わないためには、いざというときの備えが必要だ。同社では国内でのシェルター設置率向上を目指し、商品改良や普及啓発、販売促進に取り組んでいく。

中嶋広樹

ワールドネットインターナショナル株式会社 代表取締役
https://wni-group.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。