
画期的なサービスで弁護士を身近な存在に
「困っている人と弁護士がつながる場所」というコンセプトのもと、弁護士をより身近にするサービスを提供してきた弁護士ドットコム株式会社。無料法律相談や弁護士検索、費用見積比較などができるWebサービスである「弁護士ドットコム」は、今では多くの人に利用されている。しかしサービスを開始した当時は、「サイトに登録してもらう弁護士を集めるだけでもひと苦労だった」と、元榮氏は話す。
そもそも元榮氏は、大学生の頃に自らが運転する自動車で事故を起こしてしまい、弁護士に窮地を救われたことをきっかけに、弁護士を目指すようになったという。
大学を卒業して司法試験に合格した後は、大手法律事務所に入所。M&Aやファイナンス案件など、企業法務の分野で力を発揮すると同時に、「弁護士を人々にとってより身近な存在にしたい」という思いを募らせ、2005年に独立して弁護士ドットコム株式会社を創業した。
日本では戦後に弁護士による広告が禁止され、本格的に解禁されたのは2000年のこと。当時はまだ「弁護士がインターネットに名前を載せたり、自らの法律事務所を紹介したりするべきではない」といった風潮も根強く残り、紹介のない一見の顧客を嫌がる弁護士も多かった。
「私自身はそんな時代がいつまでも続くはずはないと考えていましたが、サイトに登録してくれる弁護士は簡単には増えませんでした。当初は一人でも多くの弁護士に登録してもらうため、登録料を無料にしてハードルを下げ、一人ひとりの弁護士の元を訪ねて粘り強く説明を行い、少しずつ賛同者や登録数を増やしていったのです」
そうした元榮氏の強い思いと努力もあり、2010年頃からサービスの認知拡大が進み、その数年後には事業の黒字化に成功。実質8年間の赤字時代、元榮や社員たちのモチベーションを支えたのが、サイトに届くユーザーからの熱いメッセージだった。
「実際に支援した弁護士だけでなく、サイトを運営する私たちにまでわざわざお礼を書いてきてくれる。時にはそんなユーザーの方からのメッセージを社員たちにシェアし、これだけ価値のあるサービスなのだから、いずれはもっと評価されるはずだという思いで、社員ともに一丸となって苦しい時代を乗り越えてきたのです」
そして2014年には、弁護士として初めての株式上場を達成。さらには税理士版の「税理士ドットコム」や、電子契約サービス「クラウドサイン」なども次々と展開し、オンリーワンの価値を提供する企業へと成長を遂げた。