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松村洋平
MATSUMURA YOHEI

松村洋平

株式会社誠進堂 代表取締役

屋根・外壁塗装の現場から活気を生み出し、中小企業が多くを占める日本を元気にしたい。
日本の企業のうち99.7%を中小企業が占め、そのうち6~7割の会社は赤字だといわれている。そんな閉塞社会を打破すべく、活気を生み出し循環させることで社員一人ひとりが自分の仕事に誇りをもち、生き生きと働くことのできる環境づくりを目指す。この難題に取り組んでいるのが、株式会社誠進堂の代表取締役を務める松村洋平氏。「お客様に満足していただくためには、まずは社員に喜んでもらうことが大切」と、常に社員の心に向き合うことを心掛けている。
松村洋平
画像はイメージです。
社員の幸福が愛社精神や仕事への誇りを育む

本社のある滋賀県大津市を拠点に、名古屋から岡山までの2府6県に9つの支店を構える誠進堂。戸建て住宅の増改築や内外装の工事をはじめとしたリフォーム全般を請け負い、なかでも売上の9割以上を外壁・屋根の塗装工事が占める。営業や施工管理を社員が担当し、現場の作業は協力会社や職人が行う。仕事における最も大きな特徴は、顧客からも職人からも社員の人間性が褒められることだという。

「工期は平均2~3週間で、長いと1カ月くらいになりますので、自ずとお客様や職人さんとのコミュニケーションが増えます。お客様によいものを提供して喜んでいただきたいという気持ちが、立ち居振る舞いなどに表れているのだと思います。また、なぜ誠進堂の社員は自分の会社をこんなに好きなのか、なぜ自分の仕事にこれほどの誇りをもっているのかという興味を惹かれる部分も多いのでしょう。職人さんとの関係性も対等で彼らを尊重しているため、職人さんは自身の能力を100%発揮しようと頑張ってくれます」

その結果、顧客には見えない部分でも手を抜くことなく丁寧な仕事を行い、品質のよさが口コミで広がり顧客が増えていく。興味深いのは、多種多様な競合がひしめき合い競争が激化しているリフォーム業界において、価格競争に巻き込まれていないことだろう。社員や職人に十分な賃金が支払えるように、営業や提案、リフォームの内容に見合い、かつ顧客の負担も考慮した価格を設定している。

「創業時に感じたのは、顧客第一主義は当然大事なことではあるものの、真の意味でピンとこなかったこと。お客様に本当の意味で喜んでいただくには、社員一人ひとりが心から自分の会社が好きで、仕事に誇りをもって楽しんでいないと、難しいのではないかと思いました。だから、どうすればみんながこの会社を好きになってくれて、忘れかけていた夢に向かってもう一度挑戦できるような環境をつくることができるか、そこばかりを考えています。社員が生み出す活気やエネルギーをとても大切にしているのです」

そのために松村氏は理念の浸透に力を入れてきた。同社の理念は、「全社員の物心両面の幸福を追求し続け、お客様に感動と満足を提供。そのために人間的成長(感謝・貢献・自信)に努め、縁のある人々を幸せにし、地域社会に貢献する」というものだ。朝礼で理念を唱和したり、LINEで想いを伝えたりするだけでなく、一人ひとりの給与明細にはメッセージを添える。さらに、全社員に毎月2kgのお米が配られ、誕生日にはプレゼントとメッセージが贈られる。こうした取り組みによって、従業員数は100名を、売上は30億円を超える規模まで成長した。

松村洋平
会社を経営しているのは、喜んでいる社員を見たいから

松村氏は1985年に京都市で生まれた。高校卒業後は関西大学に進学するものの、通学する電車の中でスーツ姿の大人たちの覇気のない姿を見るたびに、社会に出ることに対して不安を感じたという。その結果、大学卒業後もアルバイトで生活する道を選んだが、24歳のときに家庭をもったことで就職を決意。全国展開する大手リフォーム会社の岡山支店に営業職として配属され、成績を上げた松村氏は半年後には懇願して京都に戻り、後に営業所長へと出世していった。

「3年目には全国2位の売上を達成しましたが、会社の方針に馴染むことができず、これから大きくしていこうという別のリフォーム会社に誘われる形で転職。お客様と社員を大切にするという志のある会社だったのですが、品質とコストのバランスという問題に対して、私と会社の価値観に相違が生じるようになりました。それなら理想とする会社を目指して、自分で旗を上げようと思ったのです」

2015年、前々職と前職で苦楽を共にした松田翠氏(取締役)と2人で滋賀県大津市に誠進堂を立ち上げ、2018年に法人化。その5年後には、売上が20億円を達成するなど、急成長を続けてきた。誠進堂とは、1960年に京都市内で松村氏の祖父母がつくった製本所の屋号で、3代目として継いでほしかったという祖母の想いを反映させた。

「子どもの頃、私は『ドラえもん』のジャイアンのような存在で、中学1年生のときに友達がいなくなったことがありました。その経験から仲間がいることへの感謝の気持ちを抱くようになり、社員は大切な家族の一員だと思っています。以前に何のために会社を経営しているのかを自問したとき、どんなときに自分の心は躍るのだろうかと考えました。その答えは、人が喜んでいたり、その人がもつ本来の魅力が発揮されていたり、生き生きとした姿を見ると私自身の心もワクワクするということ。仕事が好きで、家族を幸せにできて、自分の人生をより充実させる、そんな人間を一人でも多く増やすために私は会社を経営していることを実感しました」

順風満帆に見える同社だが課題もある。それは人事の評価制度や理念を浸透させるための方法、業務に関する社内システムなど、さまざまな仕組みだという。一人ひとりのキャリア形成を支援し、将来に向けて自身の可能性を広げられる制度や管理体制を急ピッチで整え、企業としてさらなる成長を目指す。そして、2036年に売上250~300億円という目標を掲げているが、それは目安でしかない。

「中長期的なビジョンは、同じ考えをもつさまざまな会社が誠進堂にジョインしてグループを形成していくイメージです。ちょうど塗装の業界をよくしていきたいと思っている会社が参加する部会のような集まりが誕生し、ミーティングや講演などを行っています。私と同じ想いの人は結構いて、業界全体をよくしていこうという機運の高まりに期待しています」

本当の目標はさまざまな業界の中小企業に良い影響を与え、日本を元気にすることだ。かつて、通学電車の中で見た社会人が自分自身を取り戻す姿を想像し、多くの人々が輝ける社会の実現に向けて、松村氏の挑戦はこれからも続いていく。

松村洋平

株式会社誠進堂 代表取締役
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※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。