
広告制作業の傍ら、親族の牧場の経営をサポート。
「帰国して、まともな職歴のない僕を拾ってくれたのが広告業界でした」と語るのは、イベントや配信動画、広告デザインなどの制作を手がけるA&L Project株式会社代表取締役の國府島誠氏。
高校時代から音楽に打ち込みはじめた國府島氏は、卒業後にベースギター1本を持って単身カナダに渡り、カナダやアメリカを拠点に音楽活動を行っていた。
しかし25歳のときに「夢とビザに破れて」帰国。音楽の道をきっぱりあきらめて働こうと思った國府島氏の目に留まったのが、広告代理店のアルバイト募集だったと言う。
実力がモノを言う業界で頭角を現した國府島氏は、正社員を経て30歳のときに独立してフリーランスに。するとITやゲーム・ホビー関連の企業を中心に、代理店時代につきあいのあったクライアント企業から安定して依頼が舞い込み、2018年に法人化した。
「弊社の強みは使い勝手のよさですね。たとえばイベント制作なら、施工関係の資格も保有しているので、会場の設営なども含めて一気通貫でスピーディーかつフレキシブルなサービスが提供できます。また社長である私自身が第一線の現場に立っているので、疑問や要望に対して即答できるスピード感も強みです」
さらに國府島氏指名の仕事として、クライアントと代理店との間に立って、案件を取りまとめる仕事も年々増えている。
「これは制作ではなくて、『どういった制作をしていいかわからない』、『今入っている広告代理店との中継役がほしい』といった問題を解決するコンサルティング的な性格の仕事になります」
そんな國府島氏は、近年ではこれまでに培った知見を活かし、本業以外のフィールドへの挑戦も行っている。そのきっかけとなったのは、母方の実家である北海道名寄の牧場の経営サポートを行ったことだ。
「祖父と叔父が酪農を営んでいたのですが、さまざまな問題を抱えていました。酪農は毎日2回乳を搾らないと乳腺炎などの病気になってしまうので、非常にハードで手間のかかる仕事です。 しかし農場は山奥なのでパートやヘルパーもなかなか見つからない。高齢の祖父と叔父が営み続けるには限界がありました」
親族での会議によって支援に乗り出した國府島氏は、事業を簡易化する目的で、搾乳ビジネスから和牛ビジネスへの転換を行った。すると昨今の和牛ブームも相まって事業は好転。収入を増やしつつ、作業負担を大きく減らすことに成功した。