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菊地仁
KIKUCHI HITOSHI

菊地仁

医療法人社団三和会 東京東病院 院長

消化器がん治療を通じて江戸川区の平均寿命を延ばしたい
日本人の死因の上位を占めているのが、大腸や胃などの消化器のがん。がんで命を失わないために最も重要なのは早期に発見し、治療を行うこと。全国や東京都全体に比べて短い江戸川区の平均寿命を伸ばすことを目標に掲げている、医療法人社団三和会東京東病院院長の菊地仁氏の挑戦をご紹介しよう。
菊地仁
画像はイメージです。
消化器医療に特化し、最新の高度医療を提供

「この病院が建っている土地は、私が幼い頃から育った場所でもあります。元々は約50年前に父が建てた診療所があり、当時は自宅も同じ敷地にあったんですよ」と語る、医療法人社団三和会(みつわかい)東京東病院院長の菊地仁氏。小岩駅から車で10分ほどの場所にある同病院は、同法人グループの入院施設として、2008年に開設された病院だ。

この病院の最大の特長は、消化器医療に特化し、急性期の消化器がん分野においては大学病院やがんセンター並みの高度医療を迅速に提供できるという点。2部屋ある手術室には最新の医療機器を取り揃え、内視鏡を使ったESD手術(粘膜下層剥離術)や腹腔鏡手術といった患者の体に対する負担が少ない手術、治療も可能だ。

またもうひとつの特長は、病院横に併設されているグループ内の介護老人保健施設などと連携を取ることで、緩和ケアも含め、消化器がん患者を病気の最初から最後まで診ることができること。3つの輪が並ぶグループのマークは、「医療・介護・福祉」の一体化という病院のコンセプトを表している。幼少時から開業医として働く父親の姿を間近で見ていた菊地氏は、小学生のころから自分も医師に、しかも父と同じ消化器外科医になりたいと思うようになっていた。

「母の実家も開業医でしたし、私にとって医師は最も身近な仕事でした。患者さんから感謝される父を見て、お医者さんっていい仕事だなと感じた記憶があります」
そして大学の医学部を卒業した後は、東京逓信病院に入局。さらに消化器外科医として技術を磨きたいという思いから、国立がん研究センター中央病院、次いで東京都立墨東病院でがん治療ならびに一般外科診療の研鑽を積んだ。

「私が地元に戻ってきたのは2004年。父の診療所である菊地外科胃腸科で外科診療に携わりました。菊地外科胃腸科はベッド数19床の診療所でしたが、当時すでにグループとして介護老人保健施設や認知症患者のための専門施設、特別養護老人ホームなどを開設していて、入所者が増えたことでいざというときに受け入れるためのベッド数が不足していました。またそれに加え、それまでより高度な外科手術を行えるようにということで、東京東病院を開設することになったというわけです」
そして病院開設と同時に菊地氏が院長に就任し、今日に至る。

菊地仁
がんの早期発見・早期治療についての啓蒙に尽力

国立がん研究センターなどでさまざまな症例を経験したことで、地域医療の役割について深く考えるようになったと語る菊地氏。

「いざ病気になったとき、特にがんとなると、どの病院に行ったらよいか迷われる方は多い。患者さんやそのご家族にしてみれば、できれば地元の病院で、ご家族の近くで治療できたほうがいいですよね。そのためには地域の病院がしっかりとかかりつけ医の機能を果たし、診断したうえで必要があれば専門機関に送るという連携が重要だと思います。当院の場合、消化器外科の領域に関しては他に負けない技術をもって治療に当たり、消化器以外のがんなどについては信頼できる病院を紹介する。患者を囲い込むようなことはせず、うちで受診された方が病気を克服できるようにすることが使命だと考えています」

そんな菊地氏が院長就任以来の目標として掲げているのは、病院がある江戸川区の平均寿命をがん治療で上げること。じつは江戸川区は東京の他の市区町村に比べて平均寿命が短い。厚生労働省の平成27年「市区町村別生命表の概況」によれば、東京都全体の平均寿命が男性81.1歳、女性87.3歳なのに対し、江戸川区は男性79.7歳、女性86.4歳。最も高い世田谷区の男性82.8歳、88.5歳と比べると1歳以上も差がある。

「大腸がんのスクリーニングである便潜血検査は40歳以上のどなたでも無料で受けられますが、この受診率も江戸川区は低い。都の平均が約20%なのに対し、江戸川区はその半分以下なんです。しかも受診した人の陽性率が高い。つまり自覚症状を感じてからようやく検査を受けている状態なんです」。日本人の死因の上位を占めているのが消化器がんだが、早期に発見し、治療を施せば治る可能性は高い。従って検診の受診率の低さが平均寿命を縮めている原因の一つと菊地氏は考えている。

「この地域の方は、よく言えばおおらか、悪く言えば危機感が薄い。病気について、自分だけはならないと、どこか人ごとのように思っているようです」。そこで氏はがんの早期発見、早期治療の重要性とそのためにかかりつけ医を持つことの大切さを著した『がんで死なないために知っておくべきこと』(幻冬舎)を2018年に出版するなど、啓蒙活動を続けている。

「区内のスポーツジムは賑わっていますし、健康に興味がないわけではないと思うんです。その意識を何とか医療の場にも向けてもらいたい。病院となると行きづらく感じる人もいるとは思いますが、何とか医療機関に足を運んで頂いて治療効果の高い癌に対して早期発見、早期治療を一人でも多くの方に施すための方法などを、いろいろ考えています」

自覚症状が表れる一歩手前の状態で街を歩いている人はたくさんいる。それがわかっていて黙っていることは医療人としてできないと語る菊地氏。医療を通じて地域に貢献すること。それが彼にとっての果てなき挑戦なのだ。

菊地仁

医療法人社団三和会 東京東病院 院長
http://www.mitsuwakai.jp/tokyohigashi/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。