若い頃の苦労が土木業界を変えたいと思った原点。
同社では土木コンサルティングや土木工事、建築工事、管工事、水道施設工事、とび工事、しゅんせつ工事など、地域のライフラインを守る事業を展開。多くは京都府や舞鶴市などの自治体が元請けとなる公共事業を主にゼネコンから受注し、残りは民間の会社などからの仕事を請け負っている。工事現場における施工管理が中心で、20人の従業員を抱えている。
「会社の規模が小さいので、小回りが利くのが当社の強み。極端な例だと、相談を受けた次の日には現場に行けるくらい身軽です。また、長らく公共事業の施工管理を行ってきたので、自治体から要求される規格に対して正確に対応することができます。結果的に質の高い工事になり、見栄えの良い仕事を提供することができます」
舞鶴市出身の河田氏が土木業界に入ったのは23歳のとき。高校卒業後、海上自衛隊に入隊したが、ものをつくることを仕事にしたい気持ちと子供の頃から憧れていたダンプカーへの思いを断ち切れず、地元の建設会社に転職。従業員5人ほどの小さな会社で、ダンプカーの運転手や工事現場の作業員などをこなした。その後、デジタル化の波が押し寄せたタイミングで会社が施工管理の分野に進出することになったものの、土木施工管理技士の資格を取得するのに多大な苦労を要したという。
「同じ苦労を若い人たちに体験させたくないと思い、今の会社では資格取得のための指導を行ったり、そのための経費は会社が負担したりするなどバックアップしています。また私が若い頃は、技術は見て盗めと言われていたので、分からないことを聞くと怒られる時代でした。ですから、新人が入社すると必ずベテランと2人1組になって仕事を覚えてもらい、スムーズに独り立ちできるように指導しています」
その建設会社では20年以上働くことになり、個人事業主として独立した後は、いわゆる一人親方として施工管理の仕事を請け負っていた。仕事が順調に増えるに従って、得意先から人材の増員を求められ、従業員が10数人になったタイミングで法人化に踏み切った。ミライテックという社名は、土木技術をメインとした仕事で未来に貢献したいという願いが由来になっている。
若い世代が自然と集まり地域に必要とされる存在に。
河田氏が決めていることのひとつに、現場の仕事は担当者に任せ、現場には一切行かないことが挙げられる。現場ごとにチームを組み、仕事の進め方や改善、提案は自分たちで考えさせ、主体的に仕事に関わる機会を増やすことが狙いだ。そして、自分たちで考えて動いたり、挑戦したりすることが自信につながり、仕事に対するさらなる興味が湧き、プロ意識や責任感が育まれていく。
「私自身、大きなダンプカーを自分で運転したくて土木業界に飛び込んだので、若い人たちにやりたいことがあれば早い段階でやらせてあげたい。当社はもともと施工管理のみを行っていましたが、若い従業員がダンプカーに乗りたい、土木作業の仕事をしたいというので、現在はそれらの仕事も行っています。挑戦しやすく、成長しやすい環境を用意し、憧れられる職場へ変えるには、まずは自社の現場から意識や体制を変えることが必要だと考えています」
従業員の意見を尊重する点も改革のひとつである。施工管理は自宅と現場間の直行直帰になりがちだが、同社では朝は会社に出社し、夕方に現場の仕事が終わると会社に戻ってくる。そして、河田氏のデスクがあるフロアに皆で集まり、仕事のことやプライベートのことなど、さまざまな話をざっくばらんに語り合う。これは、社長とコミュニケーションする機会が少ないという若手従業員からの意見によって生まれたものだという。このミーティングでは現場からの要望や相談、悩みなどの話も取り上げられ、課題や問題は迅速に解決に向かう。
「土日休みの週休2日制にするなど、働く環境は少しずつ改善が進み、3Kというイメージも徐々に変わりつつあるのではないかと実感しています。従業員によく話しているのは、とにかく現場をきれいにしておくこと。できるなら作業着は汚さないで帰ってきてほしいと伝えています。工事中も工事が終わった後も常に現場をきれいにしておくと、地元の人たちから感謝されることがあります。それは地域への貢献に繋がるだけでなく、従業員が自分の仕事に誇りをもつきっかけにもなります」
こうした取り組みが功を奏し、ハローワークへの求人以外の採用活動は一切行っていないにも関わらず、従業員や知り合いの紹介などで入社希望者が現れるという。そして、これまでに離職者は一人もいないことが、河田氏への信頼が厚いことを示している。
「この業界に限らず、すべての若い人たちの力になれたらと思い、2025年4月から東舞鶴公園野球場のネーミングライツ・パートナーになりました。舞鶴ミライスタジアムという愛称のもとで、未来に羽ばたくスポーツをする子供たちをサポートしたいと思います。現在、生命保険会社と連携して、社会人野球の選手に来てもらい、舞鶴市内の小中学生を対象にした野球教室の計画も進めています。同業種はもちろんのこと、異業種との連携や新しい分野にも積極的に挑戦し、土木業界が変わっていけば、未来はもっと明るくなるはずです」