『モノからコトへ』──時代の潮流の変化をつかむ
東京・銀座に本社を構えるネットイヤーグループ株式会社は、最先端のデジタルテクノロジーを駆使してデジタルマーケティングに関するサービスを提供する会社だ。
「Webサイトの裏側では利用者に個別のIDが割り振られており、性別や年齢だけではなく、閲覧履歴からその人の興味関心などがリアルタイムにわかるようになっている。そのデータを活用して、自社の商品やサービスに対する興味関心をもつ層に対し、確実にリーチするための施策を打っていく。そういったあらゆる取り組みを総合して『デジタルマーケティング』と呼んでいます」
同社代表取締役社長兼CEOを務める石黒不二代氏は、日本におけるデジタルマーケティングの先駆者だ。IT企業の聖地、アメリカ・シリコンバレーの中心にあるスタンフォード大学でMBAを取得し、同地にてコンサルティング会社を起業した。その後、97年からアメリカでSIPS(戦略的インターネット専門サービス)及びベンチャー企業に対する支援事業を展開していたNetyear Group, Inc.からのMBO(マネジメント・バイアウト)を経て、1999年に同社の日本進出に参画。以降、デジタルマーケティングを基軸に、法人向けに企業経営及びエンドユーザーとのエンゲージメントの支援を行っている。
「90年代のアメリカはインターネットバブルの全盛期でしたので、インターネットの活用やWebメディアの発達という面では、日本とアメリカでは5年から10年くらいの開きがあると感じました。また、デジタルマーケティングどころか『マーケティング』という概念自体、日米格差が大きかった。日本の企業は営業力が強く、“アラスカで氷を売る”というほど売れないものを売るということが称えられる傾向が今もありますが、アメリカでいうマーケティングとは、それとはまったく正反対のものです」
つまり、適正な製品を適正な価格で、適正な流通経路に置き、適正なコミュニケーションを行えば、たとえ営業マンがセールスをしなくても自然と消費者に選ばれるというのが本来のマーケティングであるということだ。
「日本企業の成長のためにはこのマーケティングの概念を広めていくことは必須。これまでにやっていない分、伸びしろがある。さらにそこにデジタルマーケティングという新しい手法を取り入れたら、より大きな成長につながるということを信じて取り組みました」
2000年代に入り、インターネット利用者が爆発的に増えたことも、同社のデジタルマーケティング戦略に拍車をかけた。
「基本的に今までの日本のマーケティングは大量生産、大量消費向きのもので、一度に何千万人にもリーチできるマスメディアを使った宣伝が一番効果的な方法でした。ところが、インターネットの発達によって、人びとは製品やサービスそのものだけではなく、それを購入することによって得られる一連の体験に価値を見出すようになった」
消費者のニーズが『モノからコトへ』と変化していったのだ。