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労働力不足に備えて工場の自動化を推進
「自動車業界の喫緊の課題としては脱ガソリン車・電動車化がありますが、弊社はエンジンまわり以外の部品を多く製造しているので当面は大きな影響はありません。そこでまずは自社の課題を解決することをより重視しています」と語る、代表取締役の保科純一郎氏。
製造業全般に言えることだが、同社の最大の課題とは労働力不足。特に若い日本人の採用に苦労しており、製造現場の外国人比率は50%前後に達している。そこでかねてから取り組んでいるのが製造現場の自動化および省人化だ。
「設備の自動化は、当初は価格競争力という観点で導入しましたが、現状では人手不足対策として進めています。これまで外国人は日本人の補助として比較的単純な作業をしてもらっていましたが、これからはそうも言っていられない。過去はベテラン作業者の力量に頼っていた部分がかなり多かったのですが、経験や技術の伝承が先細りするなかでも会社の実力を落とさずに継続できればと思っています。今後もさらにオートメーション化を進めて、未経験のどんな人でもすぐに作業ができる設備にしていかないといけないですね」
また外国人労働者の採用に関しても、少しでも優秀な人材が得られるように毎年ベトナムから技能実習生を採用している。
「採用が決定したら、その人の実家を訪問させてもらっているんですよ。単純にその人がどんな環境で育ってきたのかを見てみたいという興味からでもありますが、向こうにしても子どもを預ける働き先の社長がどんな人なのか知りたいと思っているでしょうからね」
業界の動向を見据えた的確な設備投資
保科氏が証券会社から妻の実家の家業だったエスケイに転職して2021年でちょうど25年。その間に着実に会社は成長し、取引額も入社時の倍になった。
「この業界は、すごく儲かるわけではない代わりに、真面目にコツコツやっていれば仕事がなくなることもない。会社の規模自体はそれほど変わっていませんが、必要に応じた設備投資によってクライアントの要望に応えられるようにしてきました。そうして信頼関係を築いたことが今日につながっていると思います」
その姿勢は保科氏が代表取締役に就任した2010年以降も変わらない。ライン増設などの設備投資はほぼ毎年のように行い、11年には工場に防音工事を施して24時間稼働とした。
「ところがその直後に東日本大震災が起きて、自動車メーカーの生産がストップしてしまった。約3カ月間売り上げなしになったときは潰れるんじゃないかと思いました。そうかと思うと今度は復興のために自動車やトラックが必要ということで、生産再開するや以前の倍のオーダー。造る先から納品しなければならず、週に2日しか家に帰れない状況になりました。納品が遅れると、メーカーの生産ラインを止めてしまうことになるので大変な責任問題になるんです。実際にそれでパンクしてしまった会社もある。事前に生産能力を増強しておいたことが結果的には会社を救うことになりましたね」
これ以外にも、主だったところでは15年には射出成形の部門を子会社として分離独立。さらに23年末までには従来よりも大型のプレス機を導入する予定だ。
「自動車の電動化によって、これまで以上に軽量化が求められるようになります。軽量化するためにはいくつかの手法が考えられますが、最も有効なのは、金属部品をさらに薄くすること。もちろん強度は保ちつつです。となると、より加圧性能が高いプレス機が必要になります。質を高めるのは当然のこととして、10年先、20年先も生き残れるように、オートメーション化以外にもクルマの構造の変化などを見越して的確に設備投資していきたいですね」
これからも、足元を見失わないように、当たり前のことを当たり前に、できることを堅実にやっていくだけだと語る保科氏。
「社員には難しいことは求めません。無理してでも生産性を上げろとか、新しい生産方法を編み出せとかではなく、自分たちでできることを定着するまで繰り返しながら身に着ける。そしてそれが崩れないように歯止めをかける。そこまでできたら改善に取り組んでみる。というようなことを日々大切にしています。その結果として、社員が自分の子どもを入社させたいと思えるような会社に育てていくこと。それが私の夢。そうして子の代、孫の代まで引き継いでいけたらいいなと思っています」