皮膚科改革の必要性
4月中旬、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が全国に拡大されたなか、東京・国分寺のはなふさ皮膚科国分寺分院にて取材を行った。この非常事態において、花房氏は医療機関としての役割をしっかり果たすことをまず口にした。
「この緊急時において大事なことは、大病院での皮膚科診療が止まるなか、私たちクリニックがその受け皿になるということです。こういうときに社会を支えてこそ医療従事者になった意味がある、誇りをもって仕事を続けましょう、そう当院のスタッフたちには伝えています。医師、スタッフ、そして患者さんの安全を第一に考えた感染対策も行ったうえで診療を続けています」
かつて、花房氏は東京大学医学部時代に外科手術を学んでおり、日本の皮膚科クリニックの中では希少な外科手術を得意とする医師だ。
皮膚科においては外科手術を行うのは大病院がメインであり、クリニックレベルで手術を行うところは決して多くない。ましてや難しい症例を診る医師となると、さらにその数は減る。そのため花房氏の元へ届く外科的手術を必要とする患者からの相談が絶えない状況が続く。その現状と問題点を花房氏はこう語る。
「日本は欧米に比べ皮膚科の地位が低いと考えています。その大きな理由は、手術の件数が少ないことではないかと考えています。これは構造的な問題で、医学部で皮膚科を志望する学生の多くが手術を避けたいがために皮膚科を選ぶような状況なんです。皮膚科の手術とは血まみれ膿まみれになりますからね。しかし、それではいつまで経っても日本の皮膚科医療は進歩しないし、患者さんは救われません」
花房氏は、現在の日本の皮膚科医療は本来やるべき手術を避けているのだと訴える。粉瘤(皮膚下にできる腫瘍)や化膿性汗腺炎(お尻、わきの下、鼠径部などに慢性の炎症、線維化、膿疱、瘻孔ができる疾患)も、抗生物質で治癒するものではなく本来手術によって除去すべき症例であるが、薬を処方して終わってしまうことが多いのが現状だという。
「時間がかかる、リスクがある、そして皮膚腫瘍手術は診療報酬の点数が低い。ですからついやるべき手術を避けてしまう。一方、美容医療を行えば比較にならないほど高額な報酬が得られる。こうした制度も問題だと考えています」