人と同じことをしても同じ結果しか生まれない
ウェブサイト、SNS運用、グラフィック、映像などを手掛ける大阪の制作会社、パイナップル・エンタープライズでは、企業が求めるゴールをコンセプト設定からしっかり作り込んだうえで、オリジナルコンテンツを生み出す企画力を強みとする。
「クライアントと制作側、そして発信先である視聴者の想いを一致させないと、価値ある作品は生み出せません。丁寧なヒアリングとコミュニケーション、そしてお客様のビジョンに対する共感を大切に、ブランディング向上に貢献します」と語る。
例えば、求人に課題を抱えるタクシー業界は、平均年齢が高いことが特徴だ。そのため、アプローチしたい層に若者のトレンドは刺さらない。だが、現在TikTokのユーザーの平均年齢が上がっていることに着目し、ドキュメンタリー風にタクシー運転手の半生を30秒ほどで伝える企画を提案。色んな職を経てタクシー業界に流れつく人が多いため、転職潜在層に効果的にアピールできると考えた。
「SNS運用は半年から1年のスパンで見る必要があるので結果が出るのはまだ先ですが、走り出しとしては上々の成果を得ました」と自信をのぞかせる。
そんな同社のビジョンは「イブツとなり、業界に新しい風を吹かせる企業になる」こと。イブツ(異物)であることは、福村氏が自らの性分として大切にしてきたことだ。幼少期から他人と同じ行動をとることに疑問を持っており、大学時代、同級生が就職活動に明け暮れるなか、「“普通”に働かない方法はあるのだろうか」と考えていた。そこで福村氏が取った行動は、企業の選考方法に合わせるのではなく、自ら企画書を持ち込むこと。
当時、待機児童と空き家が問題視されていたため、「この2つを掛け合わせて社会課題を解決する仕事をやらせてほしい」と面会に応じた社員に伝えた。父が自営業で不動産の仕事をしていること、わずか3カ月の勉強期間で宅建の資格を取った実績も添えて。
東京の不動産会社からすぐに内定を勝ち取り、卒業までの残り時間を使って知人のビルメンテナンスに関する一般社団法人の立ち上げに関わることになる。この経験から、やはり自分には正社員としての働き方は向いていないと悟った福村氏は、内定を断り大学時代に学んだ動画のクリエイターとして独立。しかし、思うように仕事が取れず、飛び込み営業を開始する。「オフィスビルでチャイムを押して『仕事ください』と順番に言って回りました」と福村氏。実に驚くべき行動力だ。
「人と同じことをしても、同じ結果しか生まれません。人と違う道を行くから違う経験ができて、その経験が貴重であればあるほど価値を感じてくれる人がいる。動画編集は、今後AIひとつで簡単にできてしまう分野です。だからこそ大事なのは企画力。量産ではないものに価値が生まれる時代だと思います」