当たり前と思えるものでも、組み合わせ方次第で発明となる
出願書類のチェックである方式審査、特許審査官による実体審査をクリアすることで認められる特許権。しかし出願すれば自動的に審査されるというものではなく、また一発で審査を通ることは稀なので、実際に権利を取得するまでには複雑な手続きを踏む必要がある。そこで活躍するのが、知財に関する専権業務事項を持つ弁理士だ。
「特許の審査において焦点になるのは、それを拒絶する理由の有無。そこで文献などの証拠に基づいて、拒絶する理由がないことを証明できるかどうかが鍵になります」と語る、オリーブ国際特許事務所の所長弁理士、藤田考晴氏。
「世の中を動かすアイデアでも、まったくのゼロから生まれるものはありえない。すべては過去のものの組み合わせから生まれます。一見当たり前と思えるようなものでも、組み合わせ方次第で画期的な発明として脚光を浴びることもある。だから私は、出願を依頼される方のお話しはできるだけ先入観を捨ててまっさらな状態で伺うようにしています。そうでなければアイデアのよい部分が死んでしまう可能性があるからです」
横浜・みなとみらいにオフィスを構えるオリーブ国際特許事務所では、藤田氏をはじめ6名の弁理士が年間300〜400件の特許出願を手がけている。経験豊富なスタッフは、出願前のコンサルティングから鑑定・訴訟などの権利化後のサポートまで一貫して対応可能。また外国の特許事情に精通したスタッフも揃う。弁理士は、大学・大学院在籍時の科に応じて得意分野を有するのが一般的だが、藤田氏は機械・制御を専門としている。
大学院生時代に弁理士を志した藤田氏は、企業奨学金を利用していたこともあって卒業後にいったん就職し、携わっていた研究に区切りがついた時点で日本最大手の特許事務所に転職。資格習得後は同所史上最年少で部長に昇進するなど、順調にキャリアアップしていった。
「責任ある仕事を任せていただいたし、待遇もよかった。ただ大手だけに分業化がはっきりしていて、弁理士は特許以外に意匠や商標も扱えるのにそうした案件を手がけることはできなかったし、自分で請求書を切ったりすることもない。専門以外のことも含めて自分のやりたいようにやってみたいという気持ちが強くなっていきました」
もともと弁理士を志望したのも、その独立志向の高さゆえ。そして2003年に退職して設立したのがオリーブ国際特許事務所だ。
発明者に会う際は、発明を膨らませて発明者を元気づけるようにしているという藤田氏。大企業から個人の発明家まで、幅広い依頼者に対応しているが、アイデア段階でも話を聞き、ときには逆に提案を行うことで具体的な発明に繋げていく。その際に武器となるのが持ち前のコミュニケーション力。