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独自理論の構築と起業への歩み
ロジックが好きで、法律的な切り口から不動産に関わろうと、大学で法律を学んだ渕ノ上氏。卒業後は不動産コンサルタントとして活動した後、変数が多いことから興味を抱いていた区分所有建物(マンション)の資産価値評価の適正化を志し、大手マンション管理会社に入社した。
そこで得た知見を活かして構築したのが、「コンドミニアム・アセットマネジメント(CoAM)理論」。不動産の本質的な価値を見極めるこの独自の分析手法では、賃貸用不動産、自己居住用不動産それぞれの物件に対し、土地、建物に管理を加えた3要素について多角的な変数から分析を行い、賃料を基準に客観的な資産性評価を行う。
この理論を活かし、真に消費者サイドに立って資産運用を行うために、2018年に立ち上げたのがコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社だ。さらに、目的から逆算した5つのステップで中長期的な戦略の最適解を探るという、管理会社在籍時から取り組んでいた独自のカウンセリング手法を、「Journey(ジャーニー)」として構築・展開。カマー理論とジャーニーの両輪によるコンサルティングによって、顧客の利益の最大化を実現してきた。
また22年には、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」で知られる株式会社MFSのグループに加わり、不動産投資総合プラットフォームサービス「INVASE(インベース)」事業の最高戦略責任者に就任し、開発・運営を担当。カマー理論やジャーニーに加えて、資産拡大・承継に関する「サクセション・アセットマネジャー(SuAMer/サマー)理論」を展開し、不動産投資の裾野を広げてきた。インベースの会員数は約6万人に及び、MFSグループは24年に東証グロース市場への上場を果たしている。
顧客の利益を守る「真の伴走者」へ
こうして精力的に活動してきた渕ノ上氏が今もっとも注力しているのは、AIアセットマネジメントサービス「Premia(プレミア)」の構築・運営だ。
「本来、不動産投資を軸とした資産運用は、長期的な視野で戦略的な観点から行う必要があります。また、法人化や保険を活用したタックスマネジメントでは、相続・事業承継なども計画に入れることが重要です。しかし、膨大な労力と高いスキルを要し、収益化のタイミングが後ろ倒しになるケースが多いため、対応できる不動産業者は稀で、『本当のカウンセラー』が存在しないのが現状です」と語る渕ノ上氏。そこでプレミアでは、AIツールを活用しつつ、長期的な視野での資産運用について、知識・情報のインプットを軸にサービスを展開する。会員は専用のチャットを通じて、渕ノ上氏と対話するような感覚で不動産投資や資産運用に関するあらゆる相談ができる。
「現在、私がプレミアでご提供させていただいているサービス内容を、私と同様に行える人材の育成が容易ではないということが実情です。そこで、AIに私の分身になってもらうことにしました」
AIに学習させるロジックを用意するために、この1年間で立て続けに4冊の書籍を刊行。現在5冊目を執筆中だ。
「もちろん、AIの正確性は完璧ではなく、管理や民度など、データに現れづらい情報は反映できないという限界もあります。ですから、ジャーニーによるリアルな面談と、オフラインで毎週開催している各種セミナーを併せてフォローをさせていただいています」
プレミアの会員数は約150名。うち8割近くは、節税対策や資産承継の準備が必要な40代から50代だが、セミナーでは大手企業在籍者を中心に、これから資産形成を始めようとしている20〜30代も積極的に受け入れている。渕ノ上氏がこうしたサービスや活動を通じて目指すのは、不動産業界の知識・情報の非対称性の解消と、イメージ改善だ。
「この業界は、消費者と業者間の知識格差が非常に大きい。また、業者が長期的な視野に立ちづらいため、売るときだけの対応になりがちで、顧客の目的や市場状況を無視した物件を売ってしまうケースも多いです。そのせいで『不動産屋は信用できない』というイメージが根強い。知識・情報の提供により、そのイメージを刷新したいのです」
将来的には、「不動産を学ぶのが当たり前の文化」を創ることが夢だと語る渕ノ上氏。
「いつの日か、より多くの人が合理的な判断で不動産を売買し、嫌な思いをすることなく資産を増やせる社会を実現したい。それが私の挑戦です」