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有村紀栄
ARIMURA NORIE

有村紀栄

E-Mind株式会社 代表取締役

中小企業の製造現場への
デジタルツイン実装を実現する
大手から中小企業まで、製造業を中心に多岐にわたる業界に向けて、ソフトウェアやロボットを使った営業支援や技術支援、デジタルツインの導入によるDXの実現や、ソリューション企画から製品開発までのコンサルティングなどを提供するE-Mind株式会社。最近では、全国に多数の店舗を構えるメガネブランドであるJINS社からの要望に応え、非対面のセルフ形式でメガネの受け取りができる日本初の「ピックアップロッカー」を開発。営業力と企画力、そしてエンジニアリングの力で企業のDXを強力に推進する、同社の有村紀栄代表取締役に話を聞いた。
有村紀栄
画像はイメージです。
エンジニアリングの繋げる力で
企業や社会の発展に貢献したい

幼少期からPCに触れ、学生時代には趣味でホームページのコーディングなどを行なっていたという有村氏。大学を卒業後は、生保業界での法人営業などで優秀な成績を収め、その後にソフトウェア会社や国内データセンターサービス企業での営業も経験。
「自分自身がシングルマザーだったこともあり、同じ環境にある人に勇気を与えたいという思いから、いつしか起業を目指すようになっていました」

そう話す有村氏が起業のパートナーに選んだのが、国内でも貴重な独立系ロボットSIerで、エンジニアとして数々のプロジェクトを成功に導いてきた森下雄太氏だった。工場などの自動化などに欠かせないロボットなどの導入に、言うまでもなくロボットシステムインテグレーターは大きな役割を果たす。しかし、業界でのエンジニアの地位はなかなか向上せず、「自分たちの仕事の価値をきちんと知ってもらったうえで、技術やサービスを提供したいというジレンマがあった」と森下氏は言う。

そんな2人が共同代表として、2021年に設立したのがE-Mind株式会社。社名に込められるのは、「エンジニアリングの繋げる力と良いマインドで、企業や社会の発展に貢献したい」という思いだ。当初は製造業の顧客を想定していたが、冒頭で紹介したJINS社との取り組みをはじめ、会社の創設から約2年で多岐にわたる業界へと進出。顧客企業の課題をきめ細かにヒアリングして抽出し、少数精鋭の体制ならではのスピード感と提案力、そしてエンジニアの確かな技術で最適かつ有効なサービスやソリューションを提供し、大手から中小企業まで一社一社の顧客との信頼関係を築いてきた。

有村紀栄
サブスクリプションで導入できる
デジタルツインのパッケージを構築

現在、そんな同社が注力しているのが、中小企業などへの「デジタルツイン」の実装だ。工場などで実際に収集したデータをもとに、仮想世界に双子のような環境を再現するテクノロジーであるデジタルツインは、特に製造業の世界などで注目を集める技術の一つ。「たとえば、工場を自動化するためにロボットシステムを導入するには大きな予算に加え、プログラマーやエンジニア、生産工程を管理する企業の担当者など、多くの人が関わりながら時間を掛けて装置やシステムを作り上げていく必要があります。特に装置に関しては完成するとやり直しが効かず、現場と技術者の齟齬のないコミュニケーションや適切なシミュレーションができていないと、せっかく導入しても思うような効果が得られないことも考えられます。そこでデジタルツインを活用すれば、リアルな環境を再現した仮想空間で精緻なシミュレーションを行えるうえ、そこで構築したプログラムをそのまま流し込むことができます」(森下氏)

特に中小企業などでは、大きな予算を掛けた設備導入の成否が、事業の将来を大きく左右する。工場の自動化などの必要を感じながらも、失敗を恐れて二の足を踏む企業にとって、デジタルツインの活用は大きなメリットをもたらすのだ。製造プロセスの設計や設備シミュレーションなどを行うソフトウェアには、国内外で高く評価されるシーメンス社製の「Process Simulate」を使用。さらには目標に応じた作業手順や実際のロボットの動きを一括で最適計画できるNEC社製システムなどを使い、導入後の環境変化にも柔軟に対応できる製造現場の自動化を実現する。
また、現状では新たな製品の開発や製造ライン変更のたびに必要になる、ロボットティーチングやロボット干渉調整、工程実行順序の変更や最適化といった熟達者しか行えない作業を、リアルな仮想空間でのシミュレーションを通じて迅速かつ容易に行えるようになることも、製造現場がデジタルツインを導入する大きなメリットだ。

とはいえ、現状ではデジタルツインの導入や運用に高額な費用が掛かり、中小企業が活用を進めるうえでの大きなハードルとなっている。そこで同社では、数々の製造現場の自動化を請け負ってきたエンジニアの知見や技術を結集し、中小企業の工場などで活用できるデジタルツインの標準パッケージを構築。
「すでに大手製造業での実証実験を開始し、今後はできる限りのスピードでサービスを成熟させ、中小企業でも導入しやすい価格帯のサブスクリプション型での提供を実現したいと考えています」

さらには大手計測機器メーカーと共同で、デジタルツインやロボットシステムによる製造現場の最適化や自動化に加え、カーボンニュートラルへの取り組みに対応したソリューション開発にも挑戦する。
「世界的な脱炭素化の流れを受け、大手メーカーがサプライヤーへのカーボンニュートラルの取り組み要請を加速させる中、中小の工場にとっても、省人化や自動化、IoT化やDX化は今や必須となっています。今後も我々が培ってきた知見や技術を活かし、製造業はもちろん様々な業界で、企業の真のDX化を支援していきたい。そして将来的には、低価格でデジタルツインを活用できるサービスを海外に向けても展開していきたいと考えています」

そう話す有村氏を含め、4名の社員が個々の能力を最大限に発揮し、顧客企業の課題を解決する株式会社E-Mind。多くの工場が集中する大阪から世界を目指す、同社のビッグなチャレンジに注目だ。

有村紀栄

E-Mind株式会社 代表取締役
https://e-mind.ltd
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。