Powered by Newsweek logo

秋田恭平
AKITA KYOHEI

秋田恭平

AndGain株式会社 代表取締役

グローバルな視点で人材を育て、世界に通じるイベント文化を創る。
スポーツや音楽などのイベント会場建設ラッシュが進む昨今、「業界は深刻な人手不足に陥っている」とAndGain株式会社の代表取締役を務める秋田恭平氏は指摘する。
彼は今、業界を「誰もが憧れる仕事」へと変革していくため、世界を奔走している。
秋田恭平
画像はイメージです。
“真っ当な”スタイルを貫く

コロナ禍でイベント業界は大きなダメージを受けたが、最近では音楽ライブや展示会、企業のカンファレンスなど、リアルイベント需要が急速に回復し、拡大を続けている。「体験価値」の重視や、地方創生との連動も追い風となり、会場(イベント会場やスペース)は建設ラッシュだ。

2025年4月には神戸に「GLION ARENA KOBE」が誕生し、夏は名古屋に「IGアリーナ」、秋はお台場に「TOYOTA ARENA TOKYO」が開業予定だ。そのほかにも、日本各地で新アリーナの建設構想が始動している。ぴあ総研は、2024年のライブ・エンタテインメント市場規模が、コロナ禍前を遥かに上回る7100億円に達したと推測している。

業界の状況は順風満帆に見えるが、AndGainでイベントの企画・制作・運営事業を行う秋田氏は、意外な落とし穴があると語る。
「実は、今のイベント業界は、深刻な人手不足に陥っています。技術スタッフや現場スタッフが確保できず、公演を開催することが出来ないケースすら起こりはじめています」
この切実な課題に対して、秋田氏は働く環境を根本から改善し、誰もが憧れる職業にしなければならないと強調する。

「イベント業界には、悪しき序列社会があちこちに残っています。正規スタッフには冷暖房の効いた部屋が用意されているのに、アルバイトスタッフの控え室は野ざらしのテントや倉庫というのは日常茶飯事。弁当が『白飯と唐揚げ一個だけ』という現場もありました。上からの暴言も頻繁にあります。音楽好きの優秀な学生もアルバイトに来るのに、これではすぐ離れていってしまいますし、人も育ちません。私が仕切る現場では、そういうことはさせない。根本から意識を変えて、それこそ東大卒の学生を採用できるような業界になっていかねばならないと思っています」

同社の設立は2020年だが、秋田氏が築いてきた人脈を活かして、著名アーティストの5大都市ツアーや大手企業主催のダンスイベント、K—POPのフェスなど、既に多くのイベントの企画・運営・ステージ制作を担ってきた。そして、同社の現場に関わった舞台監督や各部門のチーフ、スタッフが別の現場で仕事をすることによって、秋田氏の“真っ当な”スタイルが浸透しはじめている。

秋田恭平
「ベニュービジネス」を強化する

秋田氏とイベント業界との関わりは、大阪での学生時代のアルバイトに遡る。年間100本以上の公演で働き、経験を積んだ。やがて、アルバイトでありながら、会場の人員配置を決める「メンツ組み」の仕事まで任されるようになった。

生涯の仕事として意識しはじめたきっかけは、京都水族館で行われた海外アーティストのアフターパーティーだ。日本人のMCが、英語で幻想的な大水槽に泳ぐ魚の紹介をして、場を大いに盛り上げていた。
「日本人でも、世界を相手に活躍できるんだ」と感じた瞬間だった。すぐにフィジーやオーストラリアに飛んで英語を学ぶ。帰国後はイベント運営会社に就職し、東京への事業進出に携わった。アルバイト時代から有名アーティストとの付き合いがあったため、東京でも大きな仕事を獲得していった秋田氏。しかし、コロナ禍ですべてが止まってしまった。

「会社としては、事業を縮小してじっと耐えるのが自然ですが、私は何もしないことに耐えられず、やりたいことをどんどん進めたかった。そこでアルバイト時代からの“戦友”に声をかけて、AndGainを起業しました」

会社は映像の企画制作に特化するつもりだったが、リアルイベントが再開するにつれ、秋田氏に直接「イベント運営を頼みたい」という依頼がひっきりなしに届くようになる。半年間、断り続けたが、そこまでの要望があるならと、舵を切り直した。

同社は現在、国内だけでなく、アーティストのアジアツアーなど海外のイベントも手がけている。来年は海外拠点も構える計画だ。日本の高度なホスピタリティは、海外のイベント運営にも高い価値をもたらす。アジア市場を開拓しつつ、制作・運営ディレクターの国際的な交流や育成を促進していく。
さらに今後は、イベント会場の管理・運営を行う「ベニュービジネス」を強化していく方針だ。

「日本のアリーナ会場はスポーツ用に作られているため、吊り荷重がアメリカに比べて非常に少なく、年々ブラッシュアップされる会場演出に対応が出来なくなっています。ライブコンサートを各会場で行っていくのであれば、アーティストの考えている演出が行いやすい会場にしていくことも、重要だと考えています。さらに、会場だけでなく、駅から会場までの導線を考慮した『まちづくり』にまで視野を広げていきます。地元の人々を集め、故郷のスポーツチームを支援し、地域を活性化していく。そんな盛り上がりをつくっていきたいですね」

秋田恭平

AndGain株式会社 代表取締役
https://andgain.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。