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松原晋啓
MATSUBARA NOBUAKI

松原晋啓

​​アーカス・ジャパン株式会社 代表取締役社長

CRMの世界的第一人者が伝授する、IT版おもてなし精神で日本の真価を発揮。
顧客関係管理を意味し、現在のビジネスで重視されるCRM。顧客のことを深く理解し、顧客満足度を高めることで収益性を高める経営戦略を指す。このCRMの第一人者が、アーカス・ジャパン株式会社の代表取締役を務める松原晋啓氏だ。「本来CRMは、日本人がもっとも得意とする分野のひとつ。極めることで地方活性化にも役立てたい」と、日本が抱える問題の解決にも意欲を燃やす。
松原晋啓
画像はイメージです。
顧客が本当に欲しいものを行商人のように提案。

1990年代後半、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)によって確立されたCRM。顧客のデータベースを活用していた時代や、あらゆる情報を一元化したプラットフォームの時代を経て、一人ひとりに向き合うパーソナライズドCRM(Personalized CRM)として、ひとつの到達点を迎えた。アーカス・ジャパンは、AIを取り込んだCRM「EMOROCO AI」を開発し、これを組み込んだECプラットフォーム「Arcury」を2022年1月にローンチした。

「今では業界を問わず、中小企業でもCRMは必須です。Arcuryは、お客様が来るのを待つ従来のECとは異なる次世代のプラットフォーム。AIを取り入れたCRMによって細かなニーズを的確に汲み取り、自ら売りに行く行商人のイメージ。ですからECではなく、EM(e-Merchant)と呼んでいます。高精度なマッチングにより、お客様が本当に欲しいと思っている商品を提案できることが強み。動画で商品を販売するライブコマースや、実店舗とオンラインを統合したスマートショッピングカートなど、多彩な機能もカスタマイズできます」

松原氏のキャリアは、大学中退後に入社したシステム会社から始まった。孫請けの会社だったが、プロジェクト推進の手腕が評価され、世界最大級のコンサルティング会社であるアクセンチュアからヘッドハンティング。能力を遺憾なく発揮した後、アメリカのソフトウェア会社であるインフラジスティックスの日本法人設立に参画するために転職。経営を軌道に乗せた後に移った日本マイクロソフトで、CRM製品の立ち上げメンバーに抜擢された。

「当時はセールスフォース社の一強でした。マイクロソフトが後から出したCRM製品のDynamics CRMは売れるのかと疑問視されましたが、私がプラットフォーム型の戦略を打ち出して新しい市場を開拓。日本市場の売り上げ伸び率は世界でも断トツで、多くのシェアを奪取しました。そして、お客様とコミュニケーションする中で、日本でのCRMの問題点や可能性に気付いたのです。そこで熟練者ばかりを集め、マイクロソフトからスピンアウトしたチームを率いて、市場の活性化などに注力しました」

松原晋啓
ドローン事業を組み合わせて町おこしを推進。

その後、転職したIT企業のアーティサンからCRM部門を独立させたのが、現在のアーカス・ジャパンだ。世界的にもトップクラスのプロフェッショナルが集結し、CRMのコンサルティングからシステム導入、運用やメンテナンスまでを一気通貫で手掛けている。これまで松原氏がCRMに携わってきた中で、もっとも強く感じているのが、日本の企業にCRMを浸透させていく難しさだった。

「同じITでも会計や人事、生産などの管理を担うERP(基幹システム)が人間に例えると手足なのに対して、顧客との関係性をもとに新たな未来をつくるCRMは頭脳のような存在と言えます。クリエイティブな発想が求められ、日本の企業が不得意とする分野。CRMのシステムを導入しても活用できていない企業が多いのは、そうした背景があるからです。しかし、おもてなしの精神を大切にしてきた日本人は、本来CRMを実践するのは得意なはず。概念を形にするのに長けたアメリカに先を越されましたが、日本が巻き返すことのできる可能性は大いにあります」

そこでアーカス・ジャパンはCRMの領域に特化し、満を持してリリースしたのが前述の「Arcury」である。導入する際の初期費用や月額使用料はほとんどかからず、発生するのは商品が売れた際の手数料のみ。中小企業にも導入しやすい設定にしたのは、同社が地方活性化を企業理念のひとつに掲げているからだ。松原氏は日本の経済が停滞している理由のひとつに東京の一極集中を挙げ、改善するためには地方にこそCRMが不可欠であると説く。

「CRMを理解するのは難しいため、お客様に対するトレーニングも行っています。たとえば地方のITリテラシーを高めることで、地域全体を最先端の教育とサービスの町へ進化させることも可能。もうひとつの主力事業であるドローンでは、農薬散布や種まきを希望する農家とドローンパイロットとのマッチングサービスなども行い、こうした取組みによって町おこしを推進しています。日本の地方には素晴らしい文化や伝統が眠っているので、こうした財産を生かさない手はありません」

松原氏によれば、以前は土地やお金などの目に見えるものが強い「地の時代」だったが、今は「風の時代」に変わったのだという。それは人とのつながりなど、目に見えないものが価値をもつ時代。つながりを重視するCRMは、進むべき道を示す羅針盤のような存在なのだろう。

松原晋啓

​​アーカス・ジャパン株式会社 代表取締役社長
https://www.arcuss-japan.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。