
被災時に命を守る地域応援アプリ
横田氏が育ったのは、津波で甚大な被害を受けた宮城県名取市。
「幸い両親は無事でしたが、多くの人が津波で為す術もなく流されていく光景を目の当たりにして、大きなショックを受けました。その頃から、自分が培ってきたITの技術を、人の命を守ることに役立てられないかと考えるようになったのです」
横田氏は当初、大手キャリアなどと連携した安否確認・被災時生存ツールを企画。しかし、当時は現在ほどスマートフォンが進化しておらず、専用の端末が必要になることがネックとなった。一方で、2015年からは大手生命保険会社の次期システム導入を基盤部長として任されたこともあり、数年間は計画を凍結。基盤部長を退任した2018年に、計画の再始動に向けてアプリプラットフォーム事業に参入した。
横田氏が考えたのは、「被災時にしか使われないものは被災時にも使われない」ということ。そこで2022年には、地域応援アプリ「appTown®」をリリース。同アプリでは、全国各地の飲食店など、あらゆるショップや企業が、安価で簡単にオンラインビジネスのプラットフォームを構築することができる。
「appTown®は世界一安くオンラインビジネスを構築できるツール。予約や通販、顧客管理やフォローアップ、クーポンの発行やスタンプカードの管理などをシンプルな操作で簡単にできるうえ、アプリの店舗ページ内に複数のSNSのリンクを貼ることも可能です。また、無料で利用できるユーザーの側からすると、店舗の営業時間や予約状況を確認するために、複数のSNSなどを検索する必要がなくなることが大きなメリットになります」
リリースから約1年で登録店舗数とユーザー数を順調に伸ばし、東日本大震災から12年が過ぎた2023年3月には、救命アプリとしての機能を追加。地震などで被災して救助を求める際に「要救助」の項目にチェックを入れることで、アプリのマップにピンが立ち、他のアプリユーザーに知らせる機能が実装された。
「地震や台風などの際には、まず近隣の人たちが力を合わせて救助活動を行うことで、命を救える可能性が高くなります。appTown®を使えば、要救助者の位置が一目でわかりますし、地域の救助団体などと連携すれば、スムーズな救助活動が可能になります。また、大きな災害時には、地域のアプリユーザーの状況を一覧で把握することもできるので、地域防災に力を入れる自治体などでもぜひご活用いただきたいと考えています」