Powered by Newsweek logo

横田剛直
YOKOTA YOSHINAO

横田剛直

スカイホエール株式会社 代表取締役

災害時も平時もユーザーを“救う”
日本発のアプリを世界のスタンダードに
自社のノーコードアプリ作成ツールを中心としたアプリ制作から、企業のITインフラ支援までを行うスカイホエール株式会社。代表の横田剛直氏は、80年代にITの世界に飛び込み、90年代半ばには自らの会社を起業。大手銀行や証券会社、生保・損保などを顧客に先進的なシステムを企画して実稼働に導くなど、IT業界での地位を固めてきた。しかし、2008年のリーマンショックをきっかけに、金融各社のプロジェクトがストップ。当時、他分野へのシフトを模索していた横田氏にとって、大きな転機となったのが2011年3月の東日本大震災だった。
横田剛直
画像はイメージです。
被災時に命を守る地域応援アプリ

横田氏が育ったのは、津波で甚大な被害を受けた宮城県名取市。
「幸い両親は無事でしたが、多くの人が津波で為す術もなく流されていく光景を目の当たりにして、大きなショックを受けました。その頃から、自分が培ってきたITの技術を、人の命を守ることに役立てられないかと考えるようになったのです」
横田氏は当初、大手キャリアなどと連携した安否確認・被災時生存ツールを企画。しかし、当時は現在ほどスマートフォンが進化しておらず、専用の端末が必要になることがネックとなった。一方で、2015年からは大手生命保険会社の次期システム導入を基盤部長として任されたこともあり、数年間は計画を凍結。基盤部長を退任した2018年に、計画の再始動に向けてアプリプラットフォーム事業に参入した。

横田氏が考えたのは、「被災時にしか使われないものは被災時にも使われない」ということ。そこで2022年には、地域応援アプリ「appTown®」をリリース。同アプリでは、全国各地の飲食店など、あらゆるショップや企業が、安価で簡単にオンラインビジネスのプラットフォームを構築することができる。
「appTown®は世界一安くオンラインビジネスを構築できるツール。予約や通販、顧客管理やフォローアップ、クーポンの発行やスタンプカードの管理などをシンプルな操作で簡単にできるうえ、アプリの店舗ページ内に複数のSNSのリンクを貼ることも可能です。また、無料で利用できるユーザーの側からすると、店舗の営業時間や予約状況を確認するために、複数のSNSなどを検索する必要がなくなることが大きなメリットになります」

リリースから約1年で登録店舗数とユーザー数を順調に伸ばし、東日本大震災から12年が過ぎた2023年3月には、救命アプリとしての機能を追加。地震などで被災して救助を求める際に「要救助」の項目にチェックを入れることで、アプリのマップにピンが立ち、他のアプリユーザーに知らせる機能が実装された。
「地震や台風などの際には、まず近隣の人たちが力を合わせて救助活動を行うことで、命を救える可能性が高くなります。appTown®を使えば、要救助者の位置が一目でわかりますし、地域の救助団体などと連携すれば、スムーズな救助活動が可能になります。また、大きな災害時には、地域のアプリユーザーの状況を一覧で把握することもできるので、地域防災に力を入れる自治体などでもぜひご活用いただきたいと考えています」

横田剛直
暮らしと地続きに広がるメタバース空間

横田氏によれば、被災時に個人が無料で救助要請を行えるアプリは他になく、災害時に住民の安否をスピーディに把握する手立ても、各自治体で確立されていないのが日本の現状だ。
「大きな災害に遭った際、運を天に任せるのではなく、少しでも救われる可能性を高めるツールをもつ人を増やしたい。老若男女を問わず、将来的にはこのアプリを世界に普及させたいと思っています」
現在は、appTown®を独自のメタバースタウンへと進化させる計画も進行中。アプリ内のコミュニケーションをすべてメタバース空間で実現するというバージョンアップを、2024年を目処に実施する予定という。

「IT技術はどんどん進化していますが、メタバースなどの技術を有効に使ったコンテンツはまだ多くありません。それぞれの地域でのビジネスや防災といった人々の暮らしと、地続きになったメタバース空間を実現できるのがappTown®の強み。日本発のこのアプリを世界に広げ、新分野での巨人になることが我々の大きな目標です」
さらには、身体に障がいのある人や高齢者など、行きたい場所に行けない人と実際に現地で体験をする人をマッチングし、リアルタイムな仮想体験を提供するサービスなども開発を予定。

「災害時に人の命を“救う”というコンセプトからスタートしたappTown®は、被災時の救命アプリとしての機能はもちろん、ビジネスに悩みを抱える人やITツールを上手に使いこなせない人など、困難や課題を抱える人を救うアプリです。今後も“救う”をテーマに、医療をはじめとする様々な分野との連携など、多様な人を“救う”ことができるようにアプリを進化させていきたいと考えています」
 空想世界の空飛ぶくじらのように、新たなフィールドへ向けて舵を切る、スカイホエールの旅は始まったばかりだ。

横田剛直

スカイホエール株式会社 代表取締役
https://skywhale.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。