
未来を見据えた協力の輪
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の躯体は、鉄筋や鉄骨などで構成された骨組みの周囲に木製パネルなどを用いて型枠を設置し、その中にコンクリートを流し込むことで造られる。基礎から柱、梁、床に至るまで、コンクリート部分の形状は型枠によって決まるため、型枠の設置は建設の工程において非常に重要な役割を担っている。
「中学生の頃に、現場で働く先代の父の姿を見て『カッコいいな』と憧れました。学生時代には現場でアルバイトもしていましたし、この仕事を継ぐことに抵抗はありませんでした」と、3代目の代表取締役を務める山中伸亮氏は語る。大学で建築を学び、卒業後すぐに山中建設に就職。倉庫での資材整理などの下働きからはじめ、10数年の現場経験を経た後に内勤に移った。
「現場に出ていた頃は、担当の現場を責任もって納めることで必死でしたが、数年経ち経営にも関わるようになると、他社さんとの関係やお金の流れなどが少しずつ見えてきました」
そこで実感したのが、自社を取りまく環境の狭さと、情報の少なさだったという。
「クライアントのゼネコンは当時3〜4社。そうした狭い世界で仕事を取り合い、値付けを判断していました。『最近は仕事が少ないから、値段を下げてでもこの案件を取っておこうか』といった感じで、利益率などもあまり考えないどんぶり勘定でしたね。他社さんも同じような感じで、しかも『よそに取られるぐらいなら、無理をしてでも自分の所でやる』というように、独占欲が強くなりがち。ですから、無駄な価格競争が生じて、適正な価格で受注できていない状況がありました」
型枠工事業者の組合や業界団体はあるが、業者間の横のつながりは希薄だ。そこで自分なりに情報を得る方法を模索していた山中氏は、資材調達で付き合いのあった商社とのつながりで、京都の型枠関連会社の集まりである「いなほ会」に巡り合った。当時は3社ほどが参加する会だったが、みな山中氏と同じような事業承継者、事業承継予定者だった。同じような悩みを抱えていた者同士、すぐに意気投合したという。
「初めはただ飲み会を開いて仲よく情報交換していただけだったのですが、やがて業界の為に何かできないかと話し合うようになりました。ひとつの円は小さくても、協調し合うことで大きな円となり、お客様のニーズに対応できる組織が構築できると考えています」