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山中伸亮
YAMANAKA SHINSUKE

山中伸亮

株式会社山中建設 代表取締役

型枠業界の持続可能な発展を目指して、
情報共有しつつ連携するネットワークを構築。
1959年の創業以来、型枠工事を専門に行っているのが兵庫県の株式会社山中建設。兵庫県や大阪府を中心に、ビルやマンション、物流倉庫、病院など、さまざまなコンクリート建造物の型枠工事を手がけている。
山中伸亮
画像はイメージです。
未来を見据えた協力の輪

鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の躯体は、鉄筋や鉄骨などで構成された骨組みの周囲に木製パネルなどを用いて型枠を設置し、その中にコンクリートを流し込むことで造られる。基礎から柱、梁、床に至るまで、コンクリート部分の形状は型枠によって決まるため、型枠の設置は建設の工程において非常に重要な役割を担っている。

「中学生の頃に、現場で働く先代の父の姿を見て『カッコいいな』と憧れました。学生時代には現場でアルバイトもしていましたし、この仕事を継ぐことに抵抗はありませんでした」と、3代目の代表取締役を務める山中伸亮氏は語る。大学で建築を学び、卒業後すぐに山中建設に就職。倉庫での資材整理などの下働きからはじめ、10数年の現場経験を経た後に内勤に移った。

「現場に出ていた頃は、担当の現場を責任もって納めることで必死でしたが、数年経ち経営にも関わるようになると、他社さんとの関係やお金の流れなどが少しずつ見えてきました」
そこで実感したのが、自社を取りまく環境の狭さと、情報の少なさだったという。

「クライアントのゼネコンは当時3〜4社。そうした狭い世界で仕事を取り合い、値付けを判断していました。『最近は仕事が少ないから、値段を下げてでもこの案件を取っておこうか』といった感じで、利益率などもあまり考えないどんぶり勘定でしたね。他社さんも同じような感じで、しかも『よそに取られるぐらいなら、無理をしてでも自分の所でやる』というように、独占欲が強くなりがち。ですから、無駄な価格競争が生じて、適正な価格で受注できていない状況がありました」

型枠工事業者の組合や業界団体はあるが、業者間の横のつながりは希薄だ。そこで自分なりに情報を得る方法を模索していた山中氏は、資材調達で付き合いのあった商社とのつながりで、京都の型枠関連会社の集まりである「いなほ会」に巡り合った。当時は3社ほどが参加する会だったが、みな山中氏と同じような事業承継者、事業承継予定者だった。同じような悩みを抱えていた者同士、すぐに意気投合したという。

「初めはただ飲み会を開いて仲よく情報交換していただけだったのですが、やがて業界の為に何かできないかと話し合うようになりました。ひとつの円は小さくても、協調し合うことで大きな円となり、お客様のニーズに対応できる組織が構築できると考えています」

山中伸亮
R2Nを発展させ、業界の発展に貢献したい

そして今年、名称をいなほ会から「ReaRize Network(リアライズネットワーク。以下R2N)」と改めた。参加企業は現在では京都、大阪、兵庫の約10社に拡大している。
「取引先で京都の案件がある場合は京都のメンバーに協力して頂くなど、仕事を独占することなく融通し合っています。今までは限られた職人で仕事をこなしていましたが、互いに協力し合うことでパイが大きくなり、対応できる仕事量が増えたので、人手不足の昨今でも安心して仕事がいただけています」

その結果、R2Nの参加企業はどこも会社の規模が大きくなっているという。山中建設も、今ではクライアントの数は20社近くに増え、4〜5年前まで13億円ほどだった売上も18億円と大きく向上した。

適正価格での受注によって企業経営の改善に取り組むことは、持続可能な業界の発展に欠かせないと山中氏は強調する。
「弊社の社員は現在23人ですが、現場作業ができるのは7人くらいで、あとは協力業者さんにご協力頂いています。そこが今後の課題です。若い職人を社員として雇用したいのですが、いわゆる『3K』に加え、給料が安い、稼ぐためには休みなしで働かなければいけないというイメージがあって、なかなか人が集まりません。そのため業界的に多重請負になりやすく、それが原因で最前線の職人さんまで利益が行き渡らないという負のスパイラルがあります。管理も杜撰になりがちなため、発注者であるゼネコンさん自身も、多重請負は避けたいというのが実情です」

適正な賃金や休日などの労働環境を整え、魅力ある業界を醸成することで人材確保につなげるには、適切な価格で請け負えるように交渉することが必要だ。そのためにも、R2Nをさらに拡大して交渉に説得力をもたせていきたいという。

「いずれはきちんと組織化して、R2Nとして取引先と交渉できるようにしたい。現在、R2N全体で抱えている職人さんは500人ほどですが、更に大規模なチームに成長させていきたいです。人員をしっかり確保できれば、工期を必ず守ってもらえるという信頼につながり、相場より高い価格での受注も可能になるはず。そうすることで職人さんの生活が豊かになったら、魅力を感じて若い人材が入ってくる相乗効果が生まれると思います。R2Nの輪を広げ、正確な情報を共有して業界全体に発信することで、持続可能な業界の発展に貢献したいですね」

山中伸亮

株式会社山中建設 代表取締役
https://www.yamanaka-cc.com
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。