技術の導入と充実した人材育成で
生活の基盤維持に貢献
同社の採用ホームページには、「時間通りに終わる仕事なので働きやすい」「男女関係なく、しっかり動いて働けば認めてもらえる」など、女性社員の声が積極的に取り上げられているのが特徴だ。ある女性社員は、解体工事で収集した産業廃棄物を分別するリサイクル部の職員として入社。だが、現場で見ているうちに重機に興味をもち、今では重機の運転免許取得に向けた練習を行っているという。
同社には重機操作の練習場があり、免許取得は全額会社負担。万全の体制で、従業員のスキルアップをサポートしていく。
渡辺氏は、「重機に乗っていれば、汚れることはありません。さらにエアコン完備で、最新機種ならBluetoothで音楽も聴ける。昔と違って、快適な空間で仕事をすることができます」と、世間のイメージとのギャップを明言する。さらに最近では、ICT(情報通信技術)を取り入れた機械の導入を進めており、2D・3Dの設計データを基に重機をコントロールすることが可能だという。誰でも重機を安全かつ効率的に動かせるようになることで、人手不足の解消や生産性向上に対しての期待が高まっている。
土木業界に若者が集まりにくい理由のひとつは、土木工事が担う「社会インフラ整備」の重要性が認知されていないことではないだろうか。渡辺ブルドーザ工事の受注案件の8割以上は、自治体の公共事業。道路工事や土地区画整理工事、土地造成工事、温暖化による海面上昇を防ぐ防波堤工事など、幅広い工事に対応している。
山を切り開き、新しい道路をつくる。土砂運搬により、災害の発生を防ぐ――。土木の仕事は、私たちの生活基盤を陰で支えるものだ。特に富士山を有する富士市は、崩落の危険と常に隣り合わせ。富士山には谷のように地形が崩れ落ちている箇所があり、中でも落石や土砂の流出が頻発する西斜面を「大沢崩れ」と呼ぶ。渡辺ブルドーザ工事は、60年以上にわたりこの土石流を谷の途中で受け止める堤防を造り、富士山の景観と周辺住民の安全を守ってきた。
渡辺氏の揺るぎない信念は、「困ったときに真っ先に駆けつけること」。その思いは、災害時の復旧活動にも大きく活かされている。2011年に起きた東日本大震災の際は、激しい揺れと津波の被害を受けた日本製紙の石巻工場(宮城県石巻市)に人員を派遣。震災発生から約1ヵ月後のことだった。2024年の元日を襲った能登半島地震の際も迅速に行動し、現地での復旧工事に貢献している。
「復旧作業は、停電や余震が常につきまとう中、自衛隊の先導により作業を進めるなど、普段の仕事とは違うことも多々あります。ただ、この業界はタフな人が多いので、精神的に参るようなことはない。現地に行きたくても行けない会社も多いので、声をかけてもらえることは誇りであり、『静岡の代表』という気持ちで頑張っています」と渡辺氏は熱く語る。