Powered by Newsweek logo

内野祥志
UCHINO SHOJI

内野祥志

株式会社エレメンタルプロジェクト 代表取締役

関わる人達全員が満足して笑顔になれる、
クライアントファーストのイベント制作。
コンサートやスポーツの試合、新製品の発表会など、さまざまな催し物を手掛けるイベント業界。コロナ禍によって大きな打撃を受けた業界のひとつだが、業績を着実に伸ばしているイベント制作会社がある。株式会社エレメンタルプロジェクトの代表取締役である内野祥志氏は、「顧客のことを考え誠実に仕事をしていれば、仕事は自ずと増える」と言い切る。
内野祥志
画像はイメージです。
被災地復興がきっかけでイベントの世界へ。

2021年11月に行われたFIBAバスケットボール ワールドカップ2023アジア地区予選の日本=中国戦、数々の男性スターを生み出してきたジュノン・スーパーボーイ・コンテスト、生活雑貨のロフトが開催している人気のビューティーイベント、コスメフェスティバルのオープニングイベントなど。多くの人が知っているイベントの演出や制作、運営などを一手に引き受けているのが東京にあるエレメンタルプロジェクトである。

「バスケットボールの試合だと、開場から試合開始までの間をお客様にどう楽しんでもらうか。会場に流す音楽をスポーツDJに選んでもらい、照明をどのようにするのか、どのタイミングでMCが話すのかといったことなど、すべてに対してキュー(合図)出しをします。その間にスポンサーのCMを流さないといけないなどの決まりがあるのですが、イレギュラーな事態は多々起こります。状況に応じて判断し、時間と戦いながら進行していきます」

もともと同社は、富裕層向けにゴルフのレッスンスクールを行う会社として2010年に設立。業務内容を変えたきっかけは、2011年の東日本大震災で面倒をよく見ていた後輩の実家が被災したことだった。その際に、後輩が経営していたイベント会社に常駐し、福島県いわき市で行われた被災地復興を目的としたイベントに関わった。

「当時、被災されたほとんどの方が家にこもりっぱなしでした。人と人との繋がりを絶ってしまってはいけないということで、震災前から定期的に開催していたイベントを再開することになりました。担当していたのは主にスタッフを手配して、イベントの現場を回す運営と呼ばれる仕事。お手伝い程度でしたが、何もない状態から形にしていくイベント業界の仕事にすっかり魅了されました。そして、ステージや空間の演出といった業界の仕事を深く知るに従い、イベントの仕事をしていきたいと思うようになったのです」

イベント業界の仕事は、企画を立案しコンテンツを決めていく企画・制作、舞台で行う内容を組み立て行く演出・進行、受付や案内のスタッフを手配し管理する運営など、細かく分かれている。エレメンタルプロジェクトが最初に始めたのは運営だったが、テレビ局が運営する複合施設の年間イベントに関わるなど、徐々に仕事を大きくしていく。そして、転機が訪れたのは2016年に行われた映画関係の仕事だった。

「以前より運営から演出する側にステップアップしたいと思っていました。だからある仕事で舞台監督がAD(アシスタントディレクター)を探していたときに、やったこともないのに『できます!』と手を挙げてしまいました。実際の現場では未経験だったことで十分な仕事ができませんでしたが、その後もADとしていろいろな仕事に忍び込んではスキルやノウハウを少しずつ身につけていきました」

内野祥志
クライアントにとってのベストを考える。

仕事の領域を企画・制作、演出・進行まで広げ、内野氏自身も驚くようなスピードで成長してきた。実はこれまでに営業らしい営業をすることはなく、これからも必要のない営業はしない方針なのだという。仕事に誠実に向かい合い、正しいことをしていれば、いろいろな人達が見てくれて、声をかけてくれる人が必ず現れるという信念を持っている。

「お仕事をくださいから始まってしまうと、その時点で上下関係が決まりパートナーではなくなってしまいます。そうなるとウィンウィンの関係が築きにくくなってしまい、何かを提案するにしてもいちいちお伺いを立てなくていけなくなる。もちろんクライアント(顧客)と完全に横並びになることはできませんが、お互いをリスペクトしながらやっていくと、どんな仕事も成功できると思っています」

同社の強みを表わしていることのひとつに、外部へ仕事を発注することをなるべく抑え、自社のスタッフで行うことを重視している点が挙げられる。さらに内野氏のように映像の撮影・編集と演出ができるなど、二刀流の技術をもつ社員が多い。そのメリットは、仕事に関わる人数を減らすことでコストを抑えることができ、顧客との意思疎通を図りやすくなることだ。結果的に、浮いたコストを他に充ててクオリティをアップできたり、納期を早くできたりする。

「外部へ仕事を発注すると管理しやすくなるかもしれませんが、それではクライアントにとってのベストとは言えません。クライアントのお金を預かっていることを肝に銘じ、無駄なことを極力省いたうえでかけるべきところにお金をかければ、もっといいものができる。またクライアントと顔を合わせることで、全社員が仕事を自分事化できる点や、制作スタッフが現場に出ているため、本番中に映像やデザインの修正依頼が来てもすぐに対応できる点も、内製化に力を入れているうちの強みです」

そう話す内野氏は、2019年より東京・蒲田にある日本工学院専門学校の講師に就任。コンサートイベント科イベント企画コースで、講義や実際にイベントを行う実習の授業を受けもっている。そして、2021年春には2名の教え子を新卒の社員として採用した。

「昔から付き合いのある会社が上場して社員を急激に増やしたことがありました。でも、その会社のよかった点はなくなってしまい、コロナ禍で業績が傾いたときに社員が辞めていくスピードも早かった。その様子を目の当たりにして、自分のマインドを着実に受け継いでくれる人間だけを採用していこうと決めました。学校では自分のいいところも悪いところも学生に見てもらえるし、働くうえで必要な姿勢や考え方も時間をかけて教えることができます。その結果、学校側にも喜んでいただいています」

これから目指すのは、イベント制作に関わった全員が笑顔になること。実際の現場は運営スタッフがピリピリしていることが多く、内野氏が不安を解消させると、生き生きとした表情になるのだという。それもイベント制作の隅々までを自社で知り尽くしているからできること。自分たちができることを増やしていく同社のスタイルを追従する会社が増えれば、イベントはもっと楽しいものになると信じている。

内野祥志

株式会社エレメンタルプロジェクト 代表取締役
https://elemental-project.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。