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角田智之
TSUNODA TOMOYUKI

角田智之

つのだデンタルケアクリニック 院長

増加する舌痛症患者に対して真摯に向き合い、
カウンセリングによって改善に導く
口の中の粘膜に原因不明の痛みを感じる「舌痛症」。心理的な要因が大きいとされるこの病気について、福岡県の「つのだデンタルケアクリニック」では、カウンセリングを取り入れることで歯科医でのワンストップ治療を行っている。
角田智之 ※画像はイメージです。
行き場をなくした舌痛症患者を救うカウンセリング治療

舌痛症とは、炎症などの病変が見られないのにもかかわらず、口腔内に痛みを感じる疾患だ。口腔内灼熱症候群とも呼ばれ、口の中のさまざまな場所で起こりうるが、特に舌に痛みを感じるケースが多いためにこの名前で知られている。

痛みの程度は千差万別で、舌先が何となくピリピリするという人もいれば、重度になると焼けるように痛いと訴える人もいて、そうした場合は日常生活に支障を来すことになる。

舌の痛みを感じた場合、どこの病院に行けばよいのか迷ってしまいそうだが、一般的にはまず歯科や耳鼻咽喉科、内科などで受診する患者が多いようだ。

「しかし、炎症や腫瘍などの器質的な病変がないため、『これはストレスによるものだから心配いりませんよ』と言われ、うがい薬や軟膏を処方される、あるいは心療内科を紹介されて、そこで抗不安薬や抗うつ薬を処方されることが多いようです」と語る、つのだデンタルケアクリニック院長の角田智之氏。

患者側も、「ストレスじゃしょうがない」とあきらめてしまったり、我慢できずにドクターショッピングを繰り返すようになる場合が多いのだという。

「現状では舌痛症を専門に診る医療機関は少ないので、患者の難民化が懸念されます。このような医療の隙間からこぼれおちてしまった患者さんを救いたいと思っています」

舌痛症の原因はまだ不明な点が多いが、心理的な要因によって発症するケースが多いと考えられている。

ならば初めから心療内科や精神科を訪れるのも間違いではないのだが、治療において重要なのは、まずは本当に口内に原因がないのかを確かめること。その点、角田氏は歯科口腔外科診療に長年従事してきたことから、舌を診ることには慣れている。

「どこにも病変が見当たらない、つまり舌痛症であるとなった場合、原因が心理的要因のため、これにしっかり対峙しないかぎり改善は見込めません。しかし心療内科に行くことに抵抗感を覚える方もいらっしゃいますし、また単純に別の病院に改めて行くのは患者さんにとって手間になります。そこでワンストップで診療できないかと考え、当院では数年前から舌痛症治療に力を入れるようになりました。具体的には投薬治療は行わず、カウンセリングによる改善を行っています」

角田智之
患者との対話を重視し、投薬に頼らない治療を目指す

角田氏がカウンセリングによる舌痛症治療に取り組みだしたのは、アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士が提唱した選択理論心理学およびリアリティセラピー(現実療法)と出合ったことがきっかけだ。

それまでの多くの心理学が人間の行動は外部からの刺激に対する反応であるとしていたのに対し、選択理論心理学は人の思考、行為、感情、生理反応は自らの選択であるという考え方に基づいている。

人の行動には必ず目的があり、見たり聞いたりするものは、あくまで情報。その情報をどう捉え行動するかは本人の選択。そこでリアリティセラピーでは、社会生活において他者との間に何か問題が発生した場合には、相手を非難して変えようとするのではなく、相手の考え方や価値観を受け入れつつ、自分との相違点を交渉することによって解決策を探るように導く。

リアリティセラピーは良好な人間関係を築くためのカウンセリングや組織のマネジメントによく活用されているが、病気の治療に用いられた事例は多くはない。角田氏も、知ったきっかけは個人的な興味からだったが、詳しく学ぶうちに舌痛症治療に応用できると思ったのだと言う。

「舌痛症を発症させる心理的要因は、具体的には不幸感と考えられますが、人間が感じる不幸感の多くは人間関係に起因するもの。この人間関係にフォーカスを絞り、患者さんの人間関係や取り巻く環境に対しどう対処すればよりよいかをカウンセリングを通して一緒に考えていきます」

患者が自分の欲求を整理し、その欲求に対する効果的な行動の選択をすることで心理的要因を改善できれば、舌痛症の痛みを緩解に導くことができると角田氏は語る。

今は新型コロナウイルス禍によって多くの人が経験したことのないストレスを感じているため、舌痛症になる人も増えていくことが考えられる。実際に角田氏のクリニックでも、舌痛症治療を行っていることが認知されてきたせいもあるが、以前は数カ月に一人の割合だった患者が最近は月に5〜6名に増えているそうだ。

8月からは舌痛症のオンライン診療も開始した。
「舌痛症をしっかり診る医療機関が少ないのは、舌痛症と診断したところでできることは簡単な投薬のみで、いわゆる“お金にならない”病気であることは否定できません。しかしそれは医療者サイドの問題であり、患者さんには何の関係もありません。私はそこに苦しんでいる患者さんがおられれば、一緒に改善していきたい」

こうした記事を通じて舌痛症はその背景にある人間関係や取り巻く様々な問題にしっかり対峙すれば必ず改善できる病気であることを知ってもらいたいと語る角田氏。それらに苦しむ人を少しでも減らしていくことこそが、氏にとっての挑戦なのだ。

角田智之

つのだデンタルケアクリニック 院長
https://zettsu.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。