業界トップクラスの実績を誇る理由
「昨今はスマートフォンなどの普及により、固定電話の利用者数は大きく減少していると言われています。しかし、コールセンターのマーケット規模はこの10年の間でほぼ変わっていません。むしろ企業の直接的なフロントであるという認識が高まり、その重要性は年々増しているんです」
そう話すのは、コムデザインの代表取締役を務める寺尾憲二氏だ。また、ここ数年はコストの削減や手軽さ、メンテナンス性が評価され、コールセンター業界にもクラウド化の波が押し寄せている最中。そうしたなかで主流となるのが、同社サービスの代名詞ともいえるCTI(Computer Telephony Integration)機能のクラウドサービスだ。
CTI機能とは、コンピューターと電話系装置を統合し、コールセンターなどの情報機能を効率化するシステムのこと。コールセンターでオペレーターが対応しただけでは記録が残らないため、それら通話データから定量的な情報を集約し、企業の業務改善に役立てたりするための機能だ。
このCTI機能は1995年頃にアメリカの電話会社から普及し始めたもので、その後、日本国内でも同機能を実装する企業が急増。なかでもCTI機能をクラウドサービスとして提供する同社は大きな注目を集め、時代の流れに乗る形で右肩がりに業績を伸ばし続けてきた。
「コールセンター業界には約15万に及ぶ席数があると言われていますが、そのうちクラウド化の対象席数は10万席程度。我々はそのマーケットの中で、4万席程度までシェアを拡大していくことを目標に掲げています」
明確な差別化で、夢のあるITの世界へ
2019年8月時点で約850テナント、1万5千席に及ぶ導入実績を誇る同社。そこには無論、確固たる成長の秘訣が隠されていた。活況なクラウド型CTIの他社競合サービスや従来型サービスに対して、明確な差別化を図っていることが理由に挙げられる。
例えば同様の機能を備える従来製品と比較した場合、安価であるという点は差別化の一つに挙げられるだろう。従来のCTI機能ではSIerが必要な交換機を仕入れ、アプリケーションを開発し、企業に提供するという流れが一般的。その場合、コールセンターはSIerが装置を仕入れることから始めなければいけないわけだが、同社はそのプラットフォーム自体を自社で開発し、構築から運用まで完結しているため、余分な中間コストが発生しない。それが安価にサービスを提供できる理由だ。
また、他社競合製品では実現できない「モバイルや既存電話設備を活かした導入も可能」にし、オペレーターとの会話が終わった時点でカスタマーからアンケートを自動で取得できる機能を追加できるなど、多様な自動応答システムの要望にも応えている。
「時代とともにカスタマイズのニーズは幅広くなっており、企業ごとに独自のコールセンターの在り方があります。我々はプラットフォームを自社開発しているため、効率的なカスタマイズができ、費用も無料。そうした対応力が当社の強みの一つでもあり、差別化できる要因にもなっているのでしょう」
社会人時代に日本電信電話公社(現 NTT)に身を置き、当時からインターネットと電話機の双方向通信のプラットフォーム確立を夢見ていた寺尾氏は、夢のあるITの世界で誰よりも大きな野心を抱いていた一人だ。
「ひと昔前、ITの世界には今よりもっと夢があり、当時のエンジニアは憧れの職業の一つでもありました。しかし時代とともにコンピュータリソースが安くなり、そこで働く人間の効率性だけを求める向きが強くなっています。夢よりもお金を優先する世界になったように感じます」と、寺尾氏はエンジニアの現状を悲観する。
そのなかで大きな鍵を握る試みが、開発・運用に習熟したエンジニアを育成すること。だからこそ、「お客様のために技術習得や研鑽を惜しまない人。器用にお金を儲ける人ではなく、“いい人”の雇用を促進させていきたい。そのためには企業が“いい環境”を提供する必要もあるでしょう」と寺尾氏。
提供するサービスによりカスタマーの笑顔を得ることが会社の価値となり、共に働くメンバーが「働く喜び」を実感できる同社のビジネスモデル。そうしたエンジニアの在り方が業界の産業構造自体を変える大きなきっかけになりうるかもしれない。
今後、AIを活用した音声認識サービスを来年にも実装予定だという同社だが、「自分が背伸びをしてでも改善できそうなことがあれば、積極的に挑んでいきたい」と寺尾氏はさらなる躍進を期待する。関わる企業、従業員が喜べる「いい人」の集団を深化させる挑戦は、まだ序章を迎えたばかりだ。