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谷本一典
TANIMOTO KAZUNORI

谷本一典

COVER HAIR group 代表 兼 ブランドプロデューサー

人材不足に左右されない、
人気美容チェーンのマネジメント術。
「お客様から生涯必要とされる美容室の追求」をミッションに掲げ、埼玉県内を拠点に10店舗の美容院を運営するCOVER HAIR group。人材不足が叫ばれる同業界においても雇用を増やし続け、働くスタッフ向けの教育専門サロンを開設するなど、独自の考えに基づくマネジメント力にも注目が集まっている。同グループの代表兼ブランドプロデューサーとして数々の実績を残してきた谷本一典氏に話を聞いた。
谷本一典
自身の経験を糧に、独自の理念を追求する

「美容業界は他業界と比べ、労働時間が長く低賃金であるなどの理由から、離職率が高い傾向にあると言われています。もっと美容師が働きやすく、仕事を続けられるような環境を作っていきたい」
そう話す谷本氏は今、美容室の価値をより高める事業運営やブランド力アップに注力し、さらなる雇用創出や人材教育の推進に繋げようとしている。定期的にスタッフミーティングや社内外での研修会も開催し、谷本氏自身がこれまでの経験から得てきたノウハウも積極的にスタッフへ伝授。一人ひとりの成長をサポートするコミュニケーションも活発化させているところだ。

これまで数々の有名サロンで活躍してきた谷本氏は、自身の経験を振り返り、「人の心の育成」が何よりも重要だと話す。「これからの組織に求められるのは、人が安心して働ける居場所作り。テクノロジーの発達が進む情報社会において、人の感情を丁寧に扱い、育成する場が必要不可欠。そうした心の育成ができれば、組織も働く人も明るい未来を描いていけるのではないでしょうか」

競争の激しい美容業界に足を踏み入れてからの30年間、谷本氏は「あるべき美容師の姿」を問い続けてきた。そして見えてきた答えは、「本質の追究」という普遍的な志だ。「若い頃は自分のやり方で自分のやりたいようにやるという信念のもとに行動していましたが、いざ人生の岐路で迷ったときに、何を基準にすればいいかわからなくなってしまったんです」

そんなとき、谷本氏の目に映ったのは、顧客に正面から向き合い、ひたむきに働くスタッフの姿だった。経済の浮き沈みとともに業績が伸び悩む時期であっても、根幹となる「人」の育成に注力し、運営機能を整えれば必ず強固な組織が出来上がるはず。そう確信したのだという。そして、美容業を通じて様々な人と対峙していくなかで、「感謝」「良心」「直感」という3つの本質を追求していくことが重要だと思い至った。

「例えば物事の判断に迫られたときは、自分が良いことをしているかどうかという基準で選択をすると、大きな間違いにはならないという経験則があります。そして仕事は一人で行うものではないですから、常に感謝の気持ちを忘れてはいけません。いろいろな失敗を繰り返してきたからこそ感覚が研ぎ澄まされて、人を敬えたり、自分の経験を社員に還元できるようになっていくものですから」

谷本一典
心の育成を通じて、自分にしかできない仕事へ

長時間労働や結果を求められるプレッシャーから疲弊していく美容師たちを幾人も見てきたなかで、スタッフ自身が成長し続け、豊かに働ける環境を何より重視した。だからこそ美容師の働き方も従来の業界の慣習に捉われることなく、「常にアップデートし続けなければいけない」と谷本氏は続ける。

「当社では何か問題が生じれば、その都度話し合いの場を設けるようにしています。問題をうやむやにせず、常に修正や改善を繰り返していくためです。経営者が何事にも口を挟む必要はないと思いますが、社内で起こる出来事を知る必要はある。わかってあげなくても、知ってあげることが重要なんです」
実際に谷本氏のスケジュールはスタッフとの面談に多くの時間が割かれており、社内の状況をつぶさに知る体制が整えられている。

またCOVER HAIR groupは創業から9年目を迎え、集客や運営、現場や教育に至るまで、様々な部門を適時に配置。組織は今も拡大の一途を辿っている。そんな状況にあるがゆえ、「各部門を任される統括者の育成や理念の共有、組織の方向性を擦り合わせていく作業が今後は重要になっていく」と谷本氏。大きな組織になればなるほど、その舵取りは一段と難しくなっていくだろう。

「各部門の統括者が指し示す判断や方向性を誤ってしまえば、組織として大きなブレを生じる可能性があります。ブレが生じればチームワークを失い、組織として社会に存在する意義も失ってしまうでしょう。そのために必要なことは、その人にしかできない仕事を見つけることだと思っています」
そのため谷本氏は、常識に捉われることを良しとしない。世の中にある情報を全てだと思わず、自分の価値観や感情を大切にしてもらい、「その人にしかできない仕事をする」というのが美容業を営むうえでの鉄則だと説く。

「例えば目の前のコーヒーを黒色だという人もいれば、薄いブラウンを混ぜた黒だという人もいる。前者が一般的な視点であったとしても、薄いブラウンを混ぜた黒だと言い切れる感覚があるならば、それを大事にしてもらいたいんです」。谷本氏にとっての挑戦とは、捨てることだ。捨てなければ拾えないものがあるからこそ、彼は今日も常識を捨て、ときにプライドや名誉も捨て、人づくりに没頭する。人の血が通う美容チェーンの革新から、今後も目が離せない。

谷本一典

COVER HAIR group 代表 兼 ブランドプロデューサー
http://www.cover-s.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。