属性ではなく状況に注目した顧客データ活用
田中氏は学生時代にプロ野球選手を目指して野球に打ち込み、大学では学業に打ち込んだ。その傍らでイベントプロデュースなども実施し、企画からプロセス設計、数値管理などを行なったイベントでビジネスの基本を理解。同時に可能性を感じていたITの世界では、独学でプログラミングを学び、スマホサイトの開発を受託するビジネスを起業。アプリ事業やキュレーションメディア事業なども立ち上げバイアウトした後、DeNAに新規事業責任者として入社し、マネージャー業を経験した。
「DeNA在籍後、周囲の後押しもあり起業。メディア運営やコンサルティング業を通じて企業と顧客のコミュニケーションの在り方に疑問を感じ、ゲーム領域でコミュニティプラットフォームを運営、2年後バイアウトを経験しました。その後、コンサルティングファームで経験を積み、自らの経験やノウハウを活かし日本全体のプレゼンスを高めたいという思いからCS Technologies社を創業しました」
そう話す田中氏が、日本企業のビジネスを支援すべく開発したのが、自らのコミュニティづくりのノウハウを詰め込んだ「CSエリート」。開発の原点となったのは、田中氏が抱いていた日本の多くの企業で当たり前とされているデジタルコミュニケーション手法への違和感だ。
「特にBtoCのビジネスを行う企業の場合、企業と顧客のパワーバランスは企業の方が強くなります。広告やメールやSNSなどを使った一方通行で情報を「押し売り」のように発信することが当たり前です。しかしOMOの考え方が浸透し、状況ごとに顧客にとって都合が良く高品質なタッチポイントを顧客が自由に選ぶ時代です。この考え方や前提を企業側がもっていないと企業と顧客を繋ぐ”タッチポイントでの体験”に大きなズレがでます。これは多くの企業が顧客データを上手に活用できておらず、顧客がほしい体験を理解できてないことが要因なのです。容易にデータを取得したり分析したりすることができるツールが存在する中で、日本企業が自社の顧客を正しく理解できない理由としては2つ挙げられます。
1つは大前提の考えの間違いです。これまでの顧客理解の考え方は、顧客の属性データを使い顧客心理を深堀り、顧客の行動に因果関係をつけるというものでした。しかしこの考え方では、顧客の外的な状況が考慮されておらず、正しく顧客を理解することができません。
人間の意思決定には少なからず外的な状況が影響するにも関わらず、これまでの分析ではそのことは全く考慮されていませんでした。
2つ目は、タッチポイントの問題です。OMOの世界では、デジタル上での顧客のタッチポイントが必須になる中で、全て一方通行な発信では顧客の反応を見ることができません。
SNSでのタッチポイントでは、顧客の状況データを全てGAFAMに集められ、日本企業は属性データしか取得することができません。
個々の発言・行動の背景にまでフォーカスした“状況”を捉えることで、商品の品質や顧客体験の向上に繋がるデータの活用ができるのです」