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竹田亨
TAKEDA TORU

竹田亨

株式会社P&A 代表取締役社長

死ぬまで自分の歯で生きるために
間違いだらけの歯磨きはもうやめよう
今に始まったことではないが、日本の歯科医院の総数はコンビニ店舗数を上回るそうだ。ここで素朴な疑問が生じる。それだけの歯科医院がありながら、なぜ人は歯を失うのか?これは構造的欠陥であると長く問題提起してきた人物がいる。株式会社P&A代表取締役、竹田亨氏である。竹田氏のライフワークである8020運動の真髄とともに、歯科業界の進むべき道を聞く。
竹田亨
画像はイメージです。
歯医者が教えない正しい歯磨き術

長く口腔ケアに関わってきた竹田社長にズバリ聞いた。一体、なぜ日本人に虫歯と歯周病が多いのか?「答えは簡単です。磨けてないから」。今までの歯磨き人生をひっくり返されたような答えに思わずのけぞってしまうが、気を取り直して。では、きちんと磨くためにはどうしたらいいのだろうか?「虫歯と歯周病の原因はなんですか? プラークですよね。さて、そのプラークはどこに溜まりますか?」

プラークとは汚れの塊である。総じて汚れが溜まる場所は隙間、口腔内で言えば、歯と歯の間、そして歯周ポケットである。そしてほとんどの人がこの隙間の汚れをブラッシングで落とすことができていない、というのである。竹田氏いわく、その要因は“道具”と“時間”だという。
「隙間の汚れを落とそうと思ったら、隙間より細いブラシが必要です。健康な人の歯と歯の間は約50ミクロン、一方市販されている歯ブラシの太さは約200ミクロン。そもそも入るわけがないのです。まずは隙間に入るブラシを選ぶこと。そして口腔内のプラークは柔らかい濡れ落ち葉のような状態ですから、毛の硬さよりもコシの強さが重要です。毛が硬いからコシがある訳ではなく、良い材料を使った普通か柔らかめのブラシの方が歯肉を傷めず、長い時間丁寧に磨くことができます」

そして時間である。ババっと表面だけ磨いても意味はない。隙間に毛先が入るように1本ずつ小刻みに丁寧に磨いていく。これを忠実に行ったとして、15分はかかる。朝の忙しい時にプラス15分は厳しい注文のような……。
「でしたら1日1回ゆっくりと磨く、もしくは2日に1回磨くでもいいんです。口の中のプラークはいずれ歯石になり、歯石になったら歯科でしか取れませんが、プラークが歯石化するまで72時間かかります。ですから一度丁寧に磨けば、最長72時間はプラークが歯石になる心配はありません」

同社が開発・販売している歯ブラシ「艶白」は、毛先が20ミクロン。実に市販ブラシの10分の1の太さ。50ミクロンの歯周ポケットに十分入る細さでありながら、磨いたときのコシにもこだわり、これまで大手メーカーの市販ブラシしか使ってこなかった人にとっては、未体験の爽快感が得られる逸品である。交換の目安は約2週間。ブラシの効果が最大限発揮できる期間だ。1本115円(艶白スタンダード)と精巧でありながら格安の値段を実現している。

「大手メーカーは売るために一般受けするものを作る。例えば毛先が丸だとか球だとか。でも、球体では隙間に入らないでしょう。商売ですから切り口は色々あっていいですが、しかし、弊社の理想とは大きく違います」

竹田亨
死ぬ間際にせんべいを齧れる、そんな人生のために

竹田氏の提唱するようなブラッシング、口腔ケアを続けていれば日本人の歯の問題はだいぶ解消されるはずである。しかし、大方の人はこうした正しいケアの仕方、道具を知らないでいる。この情報のミスマッチも日本の歯科業界の問題点だと竹田氏は語る。

「大方の歯科医は痛んだ歯には興味があるが、健康な歯に対する意識は低いと言わざるを得ません。その根本原因まで突き詰めていくと、診療報酬制度まで語らなければなりませんが、少なくとも今の患者の取り合いのような状態から、予防歯科に業界全体として舵を切るべきときだと思っています」

そんな竹田氏の信念は80歳で20本の歯を残す8020運動であるが、これも世間一般で言われているものとは少し違う。
「80歳で“神経が残っている健康な”歯を残すのです。例えば食べ物の中に髪の毛一本入っていたら気がつきませんか? それが感知できるぐらい歯は非常に繊細な器官なのです。こうした健康な歯が残っていれば、人生の最後まで食を楽しむことができるのです。歯があることは、すなわち終末期のクオリティ・オブ・ライフに直結する重要な問題だと思っています」

死ぬ間際にせんべいが食べられるだけで、人生の価値は変わってくるのかもしれない。P&A創業当初からこうした信念をもって事業に取り組んできた竹田氏は、これまでに何度も業界から爪弾きにされる経験をしてきた。だが、情熱を語り続けるうちに、考えに賛同してくれる歯科医や仲間も増えてきている。

また今後は歯科業界だけでなく、包括的な医療の一つとして口腔ケアの普及を進める考えだ。例えば歯周病菌を要因とする子宮内膜症、脳梗塞などの予防啓発活動である。地域の医療機関が共同で行うこのプロジェクトに竹田氏は期待を寄せている。
「歯科だけでなく地域医療全体と組むことで、より広い視野からの口腔ケアができると思っています。それこそ皆さんが待ち望んでいたことですし、歯科業界にとっても活性化するいい材料になると思っています」

竹田亨

株式会社P&A 代表取締役社長
https://www.p-and-a.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。