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高野正人
TAKANO MASATO

高野正人

株式会社まごころ清掃社 代表取締役

ゴミ処理の3Kのイメージを脱却し、
若者の夢を応援する企業へ。
店舗やオフィスなどから出る事業系ごみの処理を行う清掃会社として、八王子の地で1986年に創業した「まごころ清掃社」。地元の人々からの信頼を得て事業を大きく拡大させた先代の跡を継ぎ、業界や自社のさらなる発展を目指すユニークなチャレンジを続けるのが二代目の高野正人氏だ。
高野正人
画像はイメージです。
“家業”としてスタートしたゴミ清掃の仕事

産業・一般ごみの処理を行う清掃会社として、八王子の地で1986年に創業した「まごころ清掃社」。地元の人々からの信頼を得て事業を大きく拡大させた先代の跡を継ぎ、自社や業界のさらなる発展を目指してユニークなチャレンジを続けるのが、二代目の高野正人氏だ。
大手スーパーマーケットに勤めていた父とアパレル業界で働いていた母が、会社を辞めて独立すると決めたのは、高野氏が4歳の時のこと。

「人が生きていくうえで不可欠な仕事をしたいという思いから幾つかの選択肢に絞った両親は、幼い姉と私を呼んで家族会議を開き、話し合いの末にゴミ処理業を始めることになりました」
まさに“家業”としてスタートしたゴミ処理の仕事だった。

「父と母からは、『全員で決めたことだから、家族で力を合わせてやろう』と言われ、私も姉も幼い頃からパッカー車に乗って楽しく現場を回っていましたね」と、高野氏は幼少期を振り返る。とはいえ、学生時代には自らの夢を追い、大学では建築やデザインを専攻。一時は建築業界に進むことも考えたが、幼少期の約束や父の希望もあり、大学を卒業するとすぐにパッカー車のハンドルを握った。

「子どもや女性にも好かれる企業を目指し、“まごころ清掃社”という名をつけたのは母でした。そうしたブランディングのような取り組みや、八王子を中心に営業して回った父の苦労などもあり、私が入社した当時はパッカー車も4台ほどに増え、約10名の社員を抱えるまでになっていました。“すべてのゴミを処理し、まごころを込めて社会の環境づくりに貢献すること”が、創業時からの当社のモットー。私の入社後も、お客様のニーズに応えて一つひとつできることを増やしていくうち、現在では52台の車両と2つの中間処理施設、100名を超えるスタッフを抱えるまでに成長しています」

今も意気軒昂な父から代表の座を継ぎ、高野氏が代表取締役となったのは2022年のこと。創業時から受け継いできたモットーはそのままに、経営者として注力するのが、ゴミ処理の仕事に定着している“3K”のイメージからの脱却だ。

高野氏はまず、作業を行う際のユニフォームを一新。同社のスタッフが身を包むのは、従来の作業着ではなく、オリジナルのスタイリッシュなキャップやTシャツだ。パンツはジーンズが定番で、冬場はコーチジャケットも支給する。
さらに、ゴミ処理の仕事の“カッコ良さ”に焦点を当てたPR動画も制作。自社サイトやYouTubeで配信したクオリティの高い動画が大きな話題となり、現在は全国の同業他社や自治体、地域のスポーツチームなどのPR動画制作の依頼が舞い込むほど、その評判は業界の垣根を超えて広がっている。

「業界に根付く3Kのイメージを塗り替えるために、まずは社員たちの自社事業に対する意識を大きく変える必要があると感じていました。PR動画の制作を始めたのは、たまたま当社に動画制作が得意な若手社員が入社したからです。『2、3年後には独立して動画制作の仕事をしたい』という彼の夢を聞いて、それなら今すぐにやればいいと。彼の背中を押すつもりで自社のPR動画を撮ってもらったのが始まりですが、今では業界の価値向上を目指す当社の大きな武器となりました」

高野正人
若い力が羽ばたける業界への変革を目指す

廃棄物アートなどの制作も画期的な試みだ。地元の多摩美術大学の学生たちとコラボレーションしたもので、今年5月に東京ビッグサイトで開催されたNEW環境展での展示は好評を博した。また、2年前には「最後の晩餐」というユニークなネーミングの解体業を行う子会社を設立し、昨年は動画制作を通じた企業のブランディングなど、クリエイティブな事業を行う「mf(まごころファーム)」も社内に立ち上げている。

「ファームというのは養成所のような意味。106名のスタッフ全員と面談をして、夢や得意なことを聞いてみると、すべてのスタッフに好きなものや得意なことがあって、会社としてもその分だけ可能性が広がっていることに気づきました。動画制作のように新規事業に繋がる可能性もありますし、そこまでいかなくても、スタッフが各々の特技を発揮することで、生活に必要なさまざまなことがグループ内で賄えるようになるかもしれない。将来的には、福利厚生にも繋がるそうした小さなコロニーのようなシステムを、グループ内につくることが理想です」

王道楽土、つまり人徳によって皆の幸せを実現したいという高野氏が目指すのは、ゴミ処理業界を就職活動の最後に行き着く場所ではなく、若者が羽ばたける場所にすること。
「今後も、事業の垣根を越えた挑戦で業界のイメージアップを図ると同時に、若い人や子どもたちの夢を応援する”ナイスゥな企業”として成長していきたいと考えています」
スタッフの得意なことや好きなことを起点とする新規ビジネス。それらの事業を束ねるホールディングス化を目指す高野氏が、先に見据えるのは“人々のすべての困りごとに応える企業”だ。顧客と働き手ファーストな取り組みが、ゴミ処理業界のイメージを変えていく。

高野正人

株式会社まごころ清掃社 代表取締役
https://www.gomi-magokoro.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。