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田島恭子
TAJIMA KYOKO

田島恭子

岐阜自動車輸送株式会社 代表取締役

完成した新車を安全第一に運ぶためにも、働きやすい環境を整備するのが経営者の務め。
2024年から働き方改革関連法によって、ドライバーの時間外労働が上限規制された物流業界。働きやすくなったとはいえ、依然として人材不足が業界の課題になっている。そのような状況の中で、低い離職率を実現している会社がある。岐阜自動車輸送株式会社の代表取締役である田島恭子氏は、「仕事を安全に行うためには、働く環境が何よりも重要」と話す。
田島恭子
画像はイメージです。
安全のためにドライバーにはノルマを課さない

岐阜県各務原市に拠点を構える同社は、田島氏の祖父が1954年に設立した。トヨタグループの物流を担うトヨタ輸送株式会社の協力会社として、トヨタ車体株式会社に属する岐阜車体工業株式会社が製造するトヨタ車の輸送を担当。こうした協力会社は全国に53社あり、全社がトヨタ協輸会と呼ばれる組織に加盟。すべての仕事をトヨタ輸送から受注するなど、強い関係性で結ばれている。

「仕事は主に2つで、ひとつは岐阜車体工業の工場で完成した新車を、同じ敷地内にあるヤードに自走して運ぶこと。もうひとつは、それらの新車をトレーラー(牽引型車両)に載せて、名古屋港に運ぶことです。そして、全国にあるトヨタグループの工場から名古屋港へ運ばれてきたトヨタ車を、岐阜県内のディーラーへ運んでいます」

メインは2〜6台積載できるトレーラーによる輸送で、ハイエースやコースターなどの車種が中心。ドライバーは工場と名古屋港間の約50㎞を3往復する業務が基本で、一週間の昼夜交代制で車を運ぶ。営業をしなくても仕事を受注できるため、売上は安定しているが、厳格なルールに従って仕事を進めなければいけない点が、一般的な運送会社との大きな違いだ。

「車を止めてパーキングブレーキをかける際、運転席の計器盤にPのマークが点灯するのを指差しと声出しで確認するなど、すべての作業がルール化されています。名古屋港には業務を管理する人がいて、車を無事に運んでいるかだけでなく、作業手順もチェックされます」
もちろん、こうしたルールの運用は安全のためであり、田島氏がもっとも重視するのは安心して働くことができる環境づくりだ。たとえば、激しい雷雨などの悪天候が予想される場合は、自社の判断で運送を中止している。ドライバーの体調にも万全を期し、毎日の仕事を丁寧に行うことを目標に掲げて無事故に繋げている。

「力を入れているのは、ドライバーに対していかに負担を最小限にできるかどうか。万一事故を起こしても、”止める、呼ぶ、待つ“というルールがあります。事故が発生した時点で仕事を止め、管理者に連絡して、指示を待つという規則です。自分の判断では動かないことを徹底し、ドライバー自身が過度にプレッシャーを感じることがないようにしているのです」

田島恭子
謙虚な姿勢で無事故・無災害を目指して

こう話す田島氏が同社に入社したのは2008年。短大を卒業し、会社員として働いた後、結婚と出産を経て、子育てをしながら銀行でパート勤めをしていた頃だった。事務を担当していた伯母が辞めることになり、代表取締役を務めていた父からの連絡で急遽入社が決まった。そして約10年後のある日突然、父から「社長をやるか?」と代替わりを打診された。

「それまで会社を継いでほしいという話は一切なく、本当に降って湧いたような話でした。当社は祖父、父とずっと同族経営してきたので、長い歴史をここで終わらせるわけにはいかないという思いで覚悟を決めました。従業員の間では、父は厳しい人というイメージでしたから、私が社長になってから社内の雰囲気は変わったと思います」

誕生日を迎える従業員の給料袋にプリペイドのギフトカードを添える、クリスマスシーズンには従業員の子どもにお菓子をプレゼントするなど、田島氏は日々の業務の中で細やかな心遣いを積み重ねていった。時代に合わせて長期休暇も取りやすくし、さらに親の介護が必要といった特別な事情については、仕事内容や勤務時間に対して柔軟な選択ができるように制度を変えていった。

「定年については、60歳で退職金を支給し、本人が希望すれば同じ待遇で65歳まで勤務できます。その後は年契約になりますが、70歳を超えて働いている従業員もいます。工場の敷地内で車を運搬する仕事については、パートで働く女性の雇用も増えました」

しかし、若い世代の車離れが進む昨今、採用活動では期待していた反響は得られなくなってきたという。そのため、大型免許や牽引免許を取得する際にかかる費用を支援するほか、入社してから勤続年数が長くなるに従って手当が発生する制度を導入。その手当は、入社したドライバーの教育を担当した従業員にも支払われるなど、長く働いてもらうための環境づくりに尽力している。

「先々代、先代の地道な努力があって会社が続いています。この先、創業75年、80年を目指すためには、地域の皆様の理解も必要です。大きなトレーラーを走らせることでご迷惑をかけることもあり、常に感謝の気持ちを忘れないように心掛けています。そして、これからも事故がないように、謙虚な姿勢で仕事に向き合うことがもっとも大切なことだと考えています」

田島恭子

岐阜自動車輸送株式会社 代表取締役
https://gifujidosyayusou.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。