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鈴木 達也
SUZUKI TATSUYA

鈴木 達也

スズデンホールディング株式会社 代表取締役

カーボンニュートラルの早期達成を見据え
地域と共生する太陽光発電
太陽光発電、水力発電などの再生可能エネルギーを長く安定的に供給するには、技術や費用だけではなく、発電所を設置する地域からの信頼がなければ成り立たない。スズデンホールディング株式会社代表取締役、鈴木達也氏は目の前の人に真摯に向き合うコミュニケーションを大切にし、継続的な発電所運営に取り組んでいる。
鈴木 達也
地主や住民との密なコミュニケーションで地域産業の発展に貢献

山形県を拠点に太陽光発電事業を営むスズデンホールディング株式会社代表取締役、鈴木達也氏。彼が目指すのは、中小企業の強みを活かした長期的な発電所運営だ。

2050年までのカーボンニュートラル達成に大きく貢献する再生可能エネルギー事業は、その発電コストの高さや天候条件による安定供給の難しさから、大手事業者が中心的な役割を担う。スズデンホールディングのような中小事業者は「FIT(固定価格買取制度)」を活用し、再生可能エネルギーで発電した電気を国が決めた価格で電力会社に売電して収益を得るのが一般的なビジネスモデルだ。スズデンホールディングの場合、宮城、山形、福島にある計27カ所の太陽光発電所で作られる電気を100%東北電力に売電する。

ただしFITは再生可能エネルギー電力の普及促進を目的に2012年から始まった時限的な特別措置で、制度の見直しが行われている。再生可能エネルギーの普及や設備費用低下に伴い売電価格も低下しており、収益を確保するのは簡単なことではない。「我々のような中小事業者にとって最大の課題は『FIT終了後』の事業の方向性。それ以降も継続的に発電事業を続けるためにチャレンジングな取り組みを行っていきたい」と鈴木氏は語る。

一般的に、発電所運営はその土地の地主と20年間の契約を結び、契約期間が終了したら一年ほどかけて撤去作業をする。21年目以降も長くその土地で発電を続けるためには地主たちと良好な関係を作ることが大切だと鈴木氏は言う。
「やはり、その土地あっての発電所ですからね。地域の組合に顔を出したり、祭事の時に援助金を出したりして、地主さんだけでなく、住民や自治体とも円滑なコミュニケーションを図っています」
この心がけが、思わぬ展開を生んだことがある。スズデンホールディングスが所有する土地にある宮城県の白石発電所にあるモニュメント「愛の鐘」は、「地域に人を呼びたい」という地域住民の声に応えて作られた。同社の社員が日頃から組合に顔を出していたことにより生まれた、偶然の産物なのだという。

鈴木氏は「地域の憩いの場となり、住民の間に『きれいにしよう』という気持ちが自発的に芽生えていると思います。発電所事業はもちろん技術面も大事ですが、そこに住む人たちを大切にしないとできないことだと再認識しました」と振り返る。
その土地で長く発電所事業を続けるメリットは発電事業者側だけにあるわけではない。地主の収益や地域の雇用創出にもつながるため、鈴木氏は相手の話を親身に聞き、良好な関係性を築くコミュニケーションを心掛けているのだ。

鈴木 達也
亡き父の思いを継いで太陽光発電事業に邁進

スズデンホールディングは、母体である株式会社スズデンの電気工事事業と太陽光発電事業が事業分割して誕生した。鈴木氏が太陽光発電事業に邁進するのは、株式会社スズデン前社長であり、急逝した父の思いも継いでいるからだ。

「2011年の東日本大震災を機に、国内で原子力に取って変わる電力の確保が求められるようになりました。そこで、わが社は当時下火になっていた経営の起爆剤として、太陽光発電事業に一気に舵を切ることに。父は震災の被害が大きかった地元・山形市や米沢市に寄付を行っており、再生可能エネルギーを使った発電事業は生まれ育った山形に恩返しをしたい気持ちからだったと思います。私は志半ばでこの世を去った父の思いを引き継いで、地域の産業に貢献したいと考えています」

業界のターニングポイントになると予測するのが、2024年4月の施行が検討されている改正再エネ特措法。成立すれば太陽光パネルの更新・増設の現行ルールが見直されるため、長期的に発電所を運営しやすい環境が整うという。
「今の状態ではFIT終了後に収益が確実に減るので、パネルの更新・増設のルールが見直されれば多くの事業所にとってプラスになると思います。中小事業者でも経営が成り立つ仕組みを作り、新規参入しやすい環境を整えれば、もっと早い段階でカーボンニュートラルは達成できるのではないでしょうか」

スズデンホールディングは発電所を3カ所増やすほか、耐久年数を過ぎた古い設備を更新し、新技術で出力を増強する「リパワリング」に取り組み、既存の発電所を長く継続的に運営していくつもりだ。さらに、地域の組合で住民の声を拾ってモニュメントを作った事例のように、「発電」と「人を集めること」を組み合わせる試みを増やしていきたいと展望を語る。
父が愛した東北地域の発展、そして地球全体の未来のために。鈴木氏はこれからも人と環境に寄り添う事業を推進していく。

鈴木 達也

スズデンホールディング株式会社 代表取締役
https://suzuden-hd.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。