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偉大な父の背中を追ってエクステリア業界へ
杉本氏の父である英則氏は、1974年に東洋エクステリアを設立し、日本では馴染みのなかったウッドデッキを国内に広めるなど、ガーデンエクステリアの分野を切り拓いてきた人物だ。「父はとにかくエクステリアに対する思いが強く、いつも働いているイメージ。仕事に向き合う姿勢などには大きな影響を受けています」。幼き頃から見続けてきた父の姿をそう語る杉本氏もまた、いつしかエクステリアの世界に魅力を感じ、大学卒業後に一般公募で入社試験を受けて東洋エクステリアへと入社した。新人時代は営業部に配属され、新商品として社運をかけて発売された『ガーデンルーム』の営業を担当。
「門やフェンスなどの外構を中心に扱ってきた従来のエクステリア業界が、“アウトドアリビング”の思想をもった業界へと脱皮するタイミングで発売された製品が『ガーデンルーム』でした。屋根や開閉式のパネルが付き、一年を通して庭と繋がることのできる全天候型のテラスで、評判は上々でしたが最初の5年くらいはあまり売れなかった。しかしそこで諦めず、庭や屋外で過ごす楽しみを伝えるという使命感をもち、代理店に熱意をもって商品の魅力を伝えるなど、粘り強く営業を続けるうちにどんどん売れるようになりました。製品に対する思いや使命感をもち、粘り強くその魅力を伝えればいつか理解してもらうことができる。若手時代に苦労した末にそんな実感をもてた経験は、新製品の開発や営業はもちろん、会社経営を行ううえでも私の土台となっています」
その後は塗料などを扱う関連会社に移って営業マンとして辣腕を発揮。しかしエクステリアへの思いを捨てられず、東洋エクステリアを退社した父が創設した株式会社F&Fに自らアプローチして転職した。
自然と対話できる暮らしを実現する
同社で扱うのは、樹脂製の木目調板材を使ったフェンスなどのエクステリア製品。杉本氏は製品を販売する代理店との関係強化や新規顧客の開拓に奔走し、入社から8年目の2020年には代表取締役に就任。
新社長として掲げた理念が「ハーモニー・ネイチャー」だ。
「人と自然環境の調和した暮らしや、人にも環境に優しい循環型社会の実現に、庭のある暮らしをご提案することで貢献したいと考えています。朝は陽の光を浴びて起き、日中は体を動かして夜はよく眠る。庭はそんな風に人が自然とともに健やかに暮らす起点となる場所であり、家族の絆を深めたり、近隣の人々と繋がる場所にもなります。また、庭で自然と触れ合う毎日を送れば、子どもたちの自然環境に対する意識も自ずと育っていくはず。そうした庭のある暮らしをより楽しんでいただけるように、今後は独自性の高い製品の開発にも取り組んでいきたいと思っています」
すでに新製品として、特殊な発泡剤を使用した軽量のウォールや、国産の天然木を使ったフェンスなどを開発。
「発泡剤のウォールは地震の多い日本で重いブロック塀を使うリスクを解消できるうえ、高齢化する職人さんの負担も大幅に低減することができるプロダクト。天然木の方は、成熟して二酸化炭素の吸収能力が落ちた木を使うことで、森を循環させることにも繋がります。当社で扱う樹脂製の製品より高価にはなりますが、やはり本物の木の風合いは素晴らしく、色落ちや腐食といった課題を解決してくれる塗料が見つかったこともあり、天然木シリーズとして製品化することに決めたのです」
多くの人が住環境を見直すきっかけとなったコロナ禍では、エクステリア業界に追い風が吹き、会社の業績も大きく向上。そうした中でも、契約する代理店と強い信頼関係を構築する“限定代理店制度”など、独自の販売システムや営業スタイルを貫くのが同社の特徴だ。
「規模の拡大よりも代理店にきちんと儲けてもらい、当社の製品を扱い続けてもらうことが大切。そうした姿勢が結果的に、現場での丁寧な施工やお客様の満足にも繋がっていくと確信しています」
社員の働き方についても、残業や休日出勤が無くても十分な給料を支払える状態を目指し、社長である杉本氏が自らDX推進の先頭に立つなど、組織の効率化やより働きがいのある環境整備に努めてきた。
「私たちが目指すのは、庭のある生活を叶える魅力的な製品を開発することで、人々の暮らしに対する考え方に少しでも良い変化をもたらすこと」と杉本氏は話す。
日本人の住環境や自然に対する考え方は、コロナ禍の前後で大きく変わった。
「エクステリア業界としては今こそ前進するときであり、そうした状況で当社がどのような存在価値を創出していけるのか。今後も得意先や社会に貢献できる独自性のある商品の開発や、家族のような社員の幸せを前提とした企業運営を実践し、お客様にも市場にも胸を張れる会社であり続けたいと考えています」