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スカイマーク株式会社 佐山展生
SAYAMA NOBUO

佐山展生

スカイマーク株式会社 代表取締役会長

企業や人の成長をもたらす、“面白そう”を追求する仕事観
「“面白そう”だと思うことを追求していく、そんな人生を送っていきたい」
そう話すのは、2015年9月よりスカイマーク株式会社の代表取締役会長に就任した佐山展生氏。これまでのキャリアと航空事業における新たな挑戦に耳を傾けながら、佐山氏ならでは“面白い”に着目した。
スカイマーク株式会社 佐山展生
受け身の人生から一転、自ら決めた道へ

「私の社会人としての礎を築いたのは、中学1年に入部した野球部での体験が大きかったように思います。そこから人生がガラッと変わりました」

佐山氏は中学時代、朝から晩まで野球漬けの日々を送った。そんななか、いつも監督に言われていたのは「とにかく挨拶を大切にしろ。時間を守れ。高3の夏まで野球を続けろ。必ず社会に出たら役に立つから」という様々な教えだったという。

「当時は何の役に立つのかと思っていましたが、今日の私があるのは野球をやっていたおかげ」と佐山氏が言う通り、図らずもスポーツに励む日々のなかで自身の人間性に磨きをかけていった。

その後、建築家を目指して京大を受験したものの、希望の学科には受からず工学部高分子化学科に合格。思わぬ形で自分の思いとはまったく違う道へ進むこととなり、卒業後の進路は当時の担任から勧められた企業へ入社するに至った。

「実に受け身の人生だった」と佐山氏は振り返る。
「私は野球から多くのことを学んできました。しかし野球はチームスポーツであり、監督や先輩から指示されたことを忠実にこなすのが当たり前。その習慣が身についているので、まさに私は上司の命令に従うサラリーマン気質の人間だったのではないでしょうか」

そんななか、大学卒業後に入社した化学大手の帝人では、チームとして一緒に働く楽しさややりがいを感じていく。忠実な仕事ぶりは周囲からも大きな信頼を集め、工場の自動化や増設、新製品の開発など、多くの業務を任されていくようになった。

しかし30歳になった頃から、佐山氏の中にある心境の変化が生まれ始める。「サラリーマンのベストケースは社長になることですが、決して優秀だから、実績を挙げたからといってなれるものではない」ということに改めて気付かされたのだという。そこに一種の危機感を覚えた佐山氏は、人生において初めて、自らの道を自ら決めていくと覚悟を新たにしたのである。

とはいえ当時は、終身雇用が当たり前とされていた時代。転職というもの自体が世の中のスタンダードではなく、佐山氏は前途多難な道へ自ら挑戦することになる。「とにかく食べていける職業に就こう」と思い立ち、たまたま新聞に出ていた三井銀行中途採用募集の広告が目に留まり、面接を受けることに。

年齢以外はまったく関わりのない募集だったものの、佐山氏にとって異業種であった金融業界で、「私のことをどう思うだろう?」という好奇心が応募をした動機となった。

その後、面接の場で佐山氏が初めて耳にしたのがM&Aという言葉。
「その言葉を聞いた途端、直感的に“面白そう”だと思ったんです。すぐに転職することを決めました」
それが佐山氏のビジネスの原点ともいうべき、“面白そう”を追求する第一歩でもあった。
入行後は、自身が希望していたM&A業務を担当し、独立系投資ファンドのユニゾン・キャピタルの共同設立やGCA株式会社の共同設立などの巨大プロジェクトを次々に実行。31年にわたり、事業再生の担い手としてその手腕を発揮していった。

スカイマーク株式会社 佐山展生
全従業員の気持ちが結集した底力

そんななか、佐山氏が初めてスカイマークを訪れたのは2014年12月のこと。当時、同社は巨額な投資が仇となって社員に対する賃金未払いが発生するまでの経営危機に陥っていた。その再建に、佐山氏が共同設立した独立系投資会社インテグラルが名乗りをあげたことがきっかけだった。2015年1月に民事再生の申し立てをした後、共同スポンサーを募り、同年9月にはスカイマークの代表取締役会長に就任。なぜ再建支援に手を挙げたかというと、「スカイマークが実質的に唯一の独立系の航空会社であったことと、約2000人の従業員の生活基盤を維持したかったから」というのが理由だった。

「儲けたいなんて気持ちは一切なかったです。民事再生というのは本当に大変なことで、面白いという言葉は適切じゃないかもしれませんが、誰もやらないことは私にとって面白いことだと思ったんです」
そして佐山氏は直ちに新体制を築き上げ、経営陣とともに社内改革に乗り出した。
「我々が一番に大切にしているのは、やはり安全です。そして次に、お客様の時間を大切すること。つまり、定時運航率を高めて欠航率を低くする取り組みに注力していきました」

しかし、一度離れてしまったお客様を引き戻すには、ただ定時運航率が良くなったというだけでは事足りない。佐山氏は日本一の航空会社を目指し、2年以上定時運航率日本一を目指すというメッセージを全社員に向けて発信し続けた。

その結果、18年1月に国土交通省が公表した17年度上半期の定時運航率で、スカイマークは92.59%となり、国内航空会社11社中1位を獲得。航空会社の総合力とも言える定時運航率において、映えある結果を導き出したのだ。

「人間の力に差異はほとんどないと思っています。それよりも大きいのが気持ちです。気持ちの強い方が勝負に勝つ。定時運航率の結果はその実証だと思っています」
そうした実績が会社全体の自信にも繋がり、次への挑戦の足がかりにもなっていく。

「私は30歳で初めて自分の人生を自分で考えだしました。それからは常に“面白そう”と思うことを追求しています。面白いことは皆やっていますので、実は面白くない。誰もやっていないけれど、面白そうだなということが、本当に面白いことなんです。ですから私自身の人生設計は昔から一切ありません。とにかく面白そうと思うことを追求してきた結果、振り返ってみたら面白かったな、ということなのです」

今後も佐山氏の“面白い”を追求する仕事の在り方が、スカイマークの成長の原動力になっていくだろう。

佐山展生

スカイマーク株式会社 代表取締役会長
https://www.skymark.co.jp/ja/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。