
医療と介護のトータルケアで利用者の命を繋ぐ
TDFは大阪府岸和田市に社屋を構え、ケアプランの作成やデイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者住宅の運営など、さまざまな介護事業を営んでいる。特筆すべきは300名以上の従業員のうち、約70名を看護師が占めていることだろう。一般的には定められた人員基準に従って従業員を配置していくが、同社では人員基準以上の看護師を配置し、利用者の命を繋いでいる。
「看護師は介護職員ができない処置ができるので、ご利用者様の入院リスクを減らすことができます。入院せずに済めば、医療報酬も介護報酬も支給されます。またグループ内には医療法人があり、すべての施設は往診できる半径16km圏内。看護師の困りごとのひとつである、医師からの指示が遅いという点についても、当社なら迅速に動くことができます」
つまり、利用者を第一に考えたうえで、確実に医療・介護報酬を支給してもらい、健全な経営を徹底していることが最大の強みになっている。介護報酬の金額は国が決めているため、介護に関わる従業員の給料を大幅に上げることはできないものの、待遇をよりよくするために最大限の努力が行われている。たとえば現場では、従業員の善意に頼らざるを得ないことも多いが、曖昧なままにはしない。
「介護保険で利用できる額の上限は、要介護状態の区分によって決まります。ご利用者様のご家族の中には、負担を減らすために一定金額以上のサービスはしないで欲しいという方もいます。しかし、ご利用者様の健康状況を考えると、それ以上使わないといけない場合や、介護スタッフの働きがボランティアになっている場合は、ご家族に理解してもらったうえで上限まで使っていただくこともあります。ですから、介護職員の給与などの待遇については、他社より手厚いと自負しています」
佐藤氏が介護業界に関心をもったのは20代の頃。祖母が要介護状態になり介護サービスを受けたところ、祖母に対する介護職員の対応が不誠実だと感じた。当時、人材派遣業を興していた佐藤氏は介護について勉強を始め、“本物の介護”を求めて2003年にTDFを設立。育った家庭が貧しく、子供の頃から家計を助けるために働いていたため、お金を稼ぐ大切さも身をもって知っていた。
「小さい頃から人助けばかりしていました。嘘をつかれても助けてほしいと言われたら助けていたし、大人になるにつれて人助けがビジネスになればいいのにと思っていました。ですから会社が上手くいってからも、人を助けたいという気持ちはずっとある。人助けは素晴らしいことだと思っている原点は、小さい頃の体験にあります」