縁を繋いださまざまな人々のために尽力する
建築とは建物をつくることであり、建設には建築に加えて、道路や橋、トンネルなどを整備する土木が含まれる。万葉建設は社名に建設の言葉が使われているが、住宅や学校、工場などの建物の設計・施工を主な事業とする建築会社である。なかでも就労継続支援事業所や障害者グループホーム、老人ホーム、学童保育所といった福祉施設の建築に力を入れている。
「聴覚障害のある人たちを招いて木工教室を開いたり、子どもたちを無人島に連れて行ったりと、20代の頃から社会的弱者といわれる人たちに対するボランティア活動に取り組んでいます。約10年前から、本業の建築業でも福祉施設を手掛けるべきだと考えるようになりました。建てるだけでなく、開業や運営についてのサポートも行っているのが当社の強みです」
万葉建設は、佐々木氏と妻の2人でスタートした。2枚の葉が4枚、8枚、16枚と増え、やがて1万枚の笑顔の葉が茂る木にしたいという願いを込めて社名を決めた。1万枚の葉は従業員や顧客、協力会社、職人など、佐々木氏と縁を繋いださまざまな人々のことを指す。それらの人たちのために尽力することを、座右の銘としている。
「たとえば、新築の住宅を建てていただいたお客様が、10年後に両親が住む家の雨漏りで困る。その10年後には会社で偉い立場になり、自社ビルの耐震性を何とかしないといけないと悩む。こうしたお客様のライフステージ毎の悩みを解決し、頼られる存在になることを心がけています。人のために働くことで、会社は成長することができます。採用でも、人のために貢献することができるかを、選考基準のひとつにしています」
現在、同社は25人の従業員を抱え、約23億円の年間売上を計上する。だが、これまで順風満帆だったわけではない。設立から10年の間は、利益の追求が使命だと思い、徹夜を躊躇することなくがむしゃらに働いた。しかし、佐々木氏の思いとは裏腹に従業員の心は離れ、離職が絶えなかった。なかには現場の仕事を放置したまま、去ってしまった人間もいたという。
「経営者と従業員では、そもそも考え方が違います。改めて経営者の仕事は何だろうと考えたときに、従業員のことをどこまで思うかが大事であることに気付きました。万葉という社名を掲げながら、結果的に従業員には尽くしてこなかったのです。それなら、従業員に尽くして、従業員にも人に尽くすことができる人間になってもらおうと、考え方を改めました」
具体的には、時間外労働を減らして有休を取りやすくするなど、ワークライフバランスを改善。業界未経験者に対しては、たとえば建築士の資格を取得するために必要な学校の授業料の援助も行う。また、65歳定年にこだわることなく、働きたい人には活躍の場を用意。70歳を超えた従業員が第一線で働いているのも同社の特徴だ。