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介護福祉施設の事業をウィンウィンの関係で提案
アテナ・パートナーズの主な事業内容は、農地や駐車場、あるいは活用されていない土地の所有者に対して、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、障害者グループホーム、児童発達支援センターといった高齢者や障害者、児童が利用する福祉施設をつくるプロジェクトの実施である。
計画の立案や建物の設計・施工だけでなく、資金調達支援、損害保険、補助金申請、法務、税務に関する業務など、すべての業務をワンストップで提供。もちろん、施設の運営会社の誘致も含まれている。主なエリアは首都圏を環状に結ぶ国道16号線の内側を対象にしている。
「土地所有者から土地を有効活用したいと相談を受ける場合と、福祉施設の運営会社から新規開所するための場所を探してほしいと相談を受ける場合があります。どちらでも、テナントとして入居する運営会社の要望に応じた建物を設計・施工し、土地所有者は運営会社から施設の家賃を受け取るという仕組みです。銀行借入して賃貸物件を建てることで土地の相続税評価額が下がりますから、主に相続税対策を考えている地主さんに有効的な提案をしています」
佐嘉田氏が最も大切にしていることは、土地所有者や施設の運営会社など、事業に参加するパートナーとウィンウィンの信頼関係を築くことだ。そのために、これまでに培ってきた経験やネットワークを駆使し、中立的な立場で課題を解決することを心掛けている。不動産や建築についてはもちろん、金融、法務、税務の分野でも十分な経験をもっていることが大きな強みといえるだろう。また、土地所有者に対してはリスクを軽減するための対策も怠らない。
「運営会社が途中で借りるのをやめる可能性もあります。その場合、施設の入所者やスタッフをそのまま引き継げるようにバックアップ体制をどうするかといった対策も事前に準備します。福祉施設は長期間にわたって利用されますから、地主さんだけでなく、その施設を利用する人やそこで働く人たちのことも考えなければならないのです。さらに、近隣住民や周辺地域、自然環境との調和にも配慮しながら計画を進めています」
不動産不動産の新たな価値を創造し地域活性化に貢献。
土地活用にとどまらず、地域との関係性も重視しているのは、これまでのキャリアが関係している。東京大学卒業後、中小企業の支援やコンサルティングに興味をもった佐嘉田氏は富士銀行(現みずほ銀行)に入行し、融資やマーケティングを担当。その後、建材の卸売や不動産業を営む家業を引き継ぐために福岡に帰郷した。
「地元の友人たちの会社と協業する形で、アパートやマンションの開発、建売住宅の分譲などにも事業を広げていきました。当時、福岡県内で商業施設が入る駅ビルの再生を手掛けていたのですが、2007年のリーマンショックで事業主が経営破綻し、プロジェクトの中断を余儀なくされました。結果的に駅ビル再生は実現しませんでしたが、行政や地元商店街もまき込んだまちづくりの原点となります」
その後、相模原市で建築不動産会社を立ち上げた知人から誘われる形で転職。この会社で介護福祉施設の企画設計・施工を行うという、現在のビジネスの原点となる事業をスタートさせた。並行して、宅地の開発・分譲、飲食店やスポーツジムの運営など、さまざまな新規事業の立ち上げにも携わることになる。そして、首都圏で高齢者施設を開発・運営する企業にヘッドハンティングされ、新たな開拓先として神奈川や多摩地区での事業を任された。
「ところが、全国展開する同業他社に買収されたことで営業方針が変わり、当時提案していたお客様にご迷惑をかける事になりました。その申し訳ないという気持ちとお客様からの期待を裏切らずに最後までプロジェクトをやり遂げたいという気持ちで、自分の力で挑戦したい気持ちが沸き上がり、2023年に起業することにしたのです」
今でも佐嘉田氏の心に残っているのは、福岡時代に頓挫した駅ビルの再生事業だ。当時、地域全体に活気がなくなっていたため、地元商店街の活性化も実現すべく行政とも連携していた。この経験から事業再生や不動産の開発を行うにしても、将来にわたる街づくりを考えなければいけないことを重視するようになったのである。
「最近携わってきた主な実績としては、流山市の児童発達支援センターと相模原市のデイサービス+障碍者グループホームの2件です。これまでの経験から感じるのは、新しく建てる施設は地域社会に溶け込み、地域を活性化させる存在を目指すべきであるということ。今後は地域の自然や歴史、伝統、文化、また地元の人たちが気づいていない魅力をコンセプトに新たな価値を創造し、後世に継承し発展させることのできる事業を展開していきたいと考えています。また、空き地や空き家を有効に活用することで、所有されるお客様はもちろんの事、社会が抱える課題の解決にもつながるはずです」
特に歴史を重ねて事業展開してきた地元の中小企業は、未活用の土地や不動産を所有していることが多く、その土地に根付いてきたからこそ地域を活性化させる起爆剤になれる可能性も大きいという。実際に、100年以上続く老舗の酒屋をリニューアルして、街に賑わいを取り戻したいという相談も舞い込んでいる。今後はイベントの企画など、ソフト面での事業展開も視野に入れている。そして、関わる人たち全員がよかったと思えるプロジェクトを推進し、最終的には地域の活性化という街づくりに貢献できる存在になることを目指している。