
“家賃力”の素晴らしさを広め、人々を幸せにしたい
「私自身が経験をもって身につけた家賃力の素晴らしさを、多くの人に教えてあげること。そして、少しでも多くの困っている人に幸せを与えることが、当社の経営方針なのです」
そう話す坂上氏が1997年に立ち上げたLEE不動産は、札幌を中心に数多くの賃貸物件を所有し、いわゆる“大家業”や賃貸総合プロデュース業、さらには病院経営や、ニセコ・倶知安などの将来的な新幹線建設を見据えた開発事業までを展開する。それらすべてのプロジェクトを成功に導いてきたのが創業社長の坂上氏であり、その理念やノウハウは、『真・家賃力―不動産は「北海道」に買いなさい』(経済界)など、数々の著書でも惜しみなく披露されている。
そんな坂上氏が不動産の世界に足を踏み入れたのは80年代のこと。生命保険会社の辣腕営業マンだった当時、所長を勤めていた札幌の営業所に勤務する女性スタッフの夫が急逝し、残された物件の購入を頼まれたことがきっかけだった。
「事務所兼住居のような物件で、当時は借金までして買うのもどうかと思いましたが、社員を助けるつもりで購入したのです。約8%とローンの金利は高かったものの、借り手がついていたので月々の返済は無理なくできました。そのうえ、確定申告をすれば税金も安くなるし、還付金まで戻ってくる。物件自体は自分のものなのに、ローンは借主さんが払ってくれるわけですからね。賃貸経営はなんて素晴らしいんだと、そのときに衝撃を受けたんです」
以来、生命保険会社に勤めながら、転勤先の福岡や新潟などでもいくつかの物件を購入。ときはバブルの真っ只中。その追い風もあって所有する不動産はどんどん値上がりを続けたが、坂上氏が勤め先を退社することはなかったという。
「営業マンとしてたくさんの人に出会える仕事も好きでしたし、時代もおおらかで良かったのだと思います。株など他の投資なら難しかったかもしれませんが、そもそも賃貸経営はサラリーマンでも十分にできますからね。私からすれば辞める理由がなかったのです」
しかし、バブルの崩壊を契機に坂上氏にも転機が訪れる。幸い、札幌や福岡で自らが経営していた賃貸物件にバブル崩壊の影響はなかったが、サラリーマンとしての給与やボーナス、諸手当などはどんどんカットされていく。それにもまして坂上氏が「辛かった」と話すのが、バブル崩壊と不用意な投資が招いた多くの悲劇を目の当たりにしたことだった。
「私自身は各地で数多くの物件を見ていたことで、物件を見る目もありましたし、不動産価格を評価する収益還元法も身に染みついていました。しかし、当時は多くの人がバブルで相場以上に高騰した東京の不動産を業者に言われるまま購入し、大きな借金を負ってしまった。私の知り合いにもそうした借金を苦にして死を選んだ者がおり、もうこれ以上の悲劇を繰り返してはならないと。自らが不動産で成功したノウハウを広く人々に伝えるべく、会社を立ち上げることにしたのです」
以来、20余年、世間の相場に踊らされない地に足のついた経営をモットーに、すべての社員や顧客を不動産が生む“家賃力”で幸せにしてきた。