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尾熨斗啓介
ONOSHI KEISUKE

尾熨斗啓介

環境・省エネルギー計算センター 代表取締役

建築業界の持続可能な発展を支える
“建築物省エネ業界”の創造を目指して
世界的に加速化する脱炭素の流れを受け、日本では2021年に、「2050年までのカーボンニュートラルの達成と、2030年度の温室効果ガス排出量の2013年度比46パーセント削減」を宣言。2022年6月に交付された改正建築物省エネルギー法では、2025年度からすべての新規建築物に省エネ基準適合が義務付けられることが決まった。それに伴い想定されるのが、基準に適合するかどうかを調べる“省エネ計算業務”の爆発的なニーズの増加と、計算できないことによる“着工難民”の問題だ。建築物省エネ業界という新たな市場を創出し、それらの課題を解決すべく挑戦を続けるのが環境・省エネルギー計算センター(株式会社HorizonXX)。代表取締役の尾熨斗啓介氏に、建築業界の新たな未来を切り拓く、同社の事業について話を聞いた。
尾熨斗啓介
画像はイメージです。
建築出身者だから行える省エネ計算

「大学では建築学科で学んだものの、建築士として一般的なキャリアを歩んでも何者かになれる道筋が見えなかった」
そう話す尾熨斗氏は、大学を卒業後に大手証券会社に就職。新規ビジネスであった不動産ファンドアレンジメントやREIT主幹事業務などを手掛け、当時の日本では黎明期だった不動産証券化の分野において、若きパイオニアとして存在感を発揮した。
その後は独立して株式会社HorizonXXを設立。2020年には環境・省エネルギー計算センターとして、建築物の省エネ計算や不動産の環境性能認証コンサルティングにビジネスの軸足を置いた。

「日本の建築業界において、省エネ計算はまだ生まれたばかりの分野。新築建築物の省エネ計算を行う会社こそ出てきてはいるものの、既存の建築物の省エネ計算については、実施できる人材や企業がほとんどないような状況でした。一方、証券会社にいた時代に私が専門としてきた不動産証券化、さらにESG投資の文脈では、既存の不動産の環境性能評価が重要な意味をもってきています。当社は、建築士の資格をもつ省エネ計算のスペシャリストが多数在籍し、新築はもちろん、難易度の高い既存の建物、住宅・非住宅とあらゆる建物の省エネ計算に対応できるのが強み。また、補助金の対象となるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)への対応や、CASBEEなどの環境性能評価といった省エネ関連業務を、一気通貫で対応できるのも私たちの大きな強みです」

既存建築物の省エネ計算の難易度が高いのは、新築時の施工図に、その後の設備改修した図面・資料などをパズルのように繋ぎ合わせることが必要で、そのうえCADデータ化するため。建築の意匠や設備に精通する建築業界出身者が集う同社では、そうしたケースでも精緻な省エネ計算を行うことができる。
また、近年のESG投資の流れを受け、企業は自社が所有する不動産の環境評価を無視できない状況だ。REITや不動産投資の分野でも同様に、不動産の環境評価は今や投資家が投資先を決めるための重要な要素となっている。その点、不動産証券化の分野で長く知見を積み上げてきた尾熨斗氏の元には、不動産オーナーやREIT、不動産ファンドの運用会社、企業のESG担当者から、日々、数多くの相談やコンサルティングの依頼が寄せられる。

尾熨斗啓介
環境設計士という新しい働き方

「人類が初めて経験する地球温暖化に対する建築業界の課題解決に向けて、新しい業界である建築物省エネ業界を創造するため、当社では果敢な挑戦を続けています」
そう話す尾熨斗氏がチャレンジするのが、建築業界に省エネ計算の専門家である“環境設計士”を増やすための取り組みだ。

「従来の省エネ計算業務は、建築業界においてそれほど重要視されていませんでした。しかし2025年度からは、きちんと省エネ計算を行い環境評価の基準を満たさないと、あらゆる新築物件が着工できなくなります。そうした状況で着工難民を出さないために、私たちは省エネ計算のプロである環境設計士を、意匠、構造、設備に次ぐ存在と位置付け、その地位向上や人材の育成に力を入れているところです」

同社では大学などで建築を学んだ学生を中心に、新卒者を採用。ハウスメーカーや大手ゼネコンをはじめ、建築業界で経験を積んだ人々が省エネ計算の未来に可能性を感じ、同社にジョインするケースも増えている。
尾熨斗氏によると、現時点で省エネ計算に関わる建築出身者の総数は200人以下。2022年の新設住宅の着工戸数だけを見ても85万戸を超えており、2025年度以降の省エネ計算のニーズが爆発的に高まることは想像に難くない。「今、省エネ計算の分野に飛び込めば、まさにこの分野のパイオニアとなれる」と尾熨斗氏は話す。

様々なメディアを通じた情報発信に加え、建築業界に特化した就活情報サイトの新設、環境評価自己査定システムの開発やAIなどの導入も進め、優秀な人材を業界に集めることと省エネ計算の生産性向上というミッションを、同時に達成するべく奮闘する。さらには、比較的省エネ計算が簡易な新築住宅などを設計士が自ら計算できるように、省エネ計算オンラインスクールも創設。すでに自社が積み上げてきた省エネ計算のノウハウを、業界に広める活動もスタートさせた。

「当社のスローガンは“省エネ革命で地球を幸せにする”。競合他社とも協業しながら、丁寧に建築物省エネ業界を創造し、新たな業界のインフラを担う企業となりたいと考えています。我々が目指すのは、設計でも施工でもない、環境設計士という新しい働き方を建築業界に広げること。地球や社会への貢献も大きい仕事なので、これから建築業界を目指す方もすでに業界で活躍されている方も、ぜひ私たちとともに新しい業界を創造するためのチャレンジをして欲しいと考えています」

尾熨斗啓介

環境・省エネルギー計算センター 代表取締役
https://www.ceec.jp
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。