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大久保武史
OKUBO TAKESHI

大久保武史

タイセーハウジング株式会社 代表取締役

建築棟数を年間50〜60棟に限定し、
一人一人の顧客に寄り添って感動する家をつくる
「挑戦とは、目の前のことに一生懸命やっていればその機会がやってきて、後になって振り返ってみて『あれはチャレンジだったな』と気づくようなものだと思います」
神奈川県厚木市を中心に、首都圏で戸建て住宅の建築を手がけるタイセーハウジング株式会社。代表取締役の大久保武史氏にとってこれまでで最大の挑戦といえば、リーマンショック渦中の2008年に同社を興したことだろう。
大久保武史
画像はイメージです。
顧客に寄り添い、契約した後もフォローを徹底

在籍していた建設会社でトップ営業マンとして活躍し、29歳で最年少役員に就任していた大久保氏が独立したのは「本当にお客さまのために家を作りたい」という思いから。
「私は入社後の2年間はまったく家を売ることができず、クビになる寸前のところをお客さまに助けていただいた。それを機に『売れるかどうかより、とにかくお客さまのために全力で働こう』と決意して一生懸命やっていたら、結果もついてきたんです。しかし会社が大きくなってくると、事業の売上ばかりが優先されるようになってきました。気持ちよく仕事をするには、自分で会社を興すしかないと思ったのです」

タイセーハウジングは、経営理念として「すべてはお客さまの笑顔のために」を掲げ、そのために全力を尽くすことを社是とする。大久保氏が考える“よい家”の条件とは、気持ちがこもった家であること。
「デザインや住宅の性能などももちろん大事ですが、まず気持ちがしっかりこもっていることが大事。お客さまの性格や生活背景など、すべてを考慮しながら寄り添って対応していくことで、感動してもらえる家ができると考えています」

設計・施工・アフターサービスまですべてを自社で行うタイセーハウジングでは、他社と比べて打ち合わせの回数が多い。20回でも30回でも、顧客が納得するまで打ち合わせして要件を詰めていく。
「回数が多ければよいというものでもないですが、労を惜しまずお客さまにしっかり寄り添っていくということを大事にしています。特に契約前よりも契約後のフォローを徹底しています。家を買われるお客さまって、契約後に『本当にこれでよかったのか』と不安になりがちなんです。ですから何もなくても『今日は体調いかがですか?』ぐらいのノリでお電話します」

訪問販売などと違ってクーリングオフはできないので、契約後はフォローの有無と関係なく家は建てられる。そこをあえてフォローして顧客の不安を払拭することが、完成時の満足度にもつながってくると言う。

大久保武史
棟数を限定し、職人の技と信頼を重視する経営を貫く

タイセーハウジングのもうひとつの強みは、抱えている職人の質だ。
「住宅を1棟建てる際には、内外装、外構工事も含めて20社50人の職人さんが関わっています。一人でもいい加減な仕事をするとその家はダメになってしまうところを、一人一人がお客さまの想い、私や会社の想いを汲んで、よい家を建てることに向かって一丸となってやっていただいています」

チーム体制で取り組んで均一で高い品質を保つために、タイセーハウジングのすべての家は同じ職人たちが手がけている。そのため一カ月に建てられる家は5棟まで。これから契約する顧客は着工が約1年後になるそうだ。それでも構わないと納得して契約する顧客が絶えないため、バックオーダーが一向に解消しそうにない点が悩みだという。

「お客さま、そして苦しいときも離れずに乗り越えてくれた従業員など、人に助けられてやってきているということを実感しています」と語る大久保氏。これまでの間には、業績が悪化して潰れそうになったこともあった。10期のときには店舗が4つ、従業員も約100人にまで増えていたが、急成長のあまり経費と利益が逆転してしまったのだ。自身の報酬を2年間ゼロ、従業員の給料も20%カットせざるを得ない状況に陥り、その結果約半分の従業員は社を去っていった。

「従業員が気持ちよく働ける環境を作りたくて独立したのに、いつの間にか辞めた会社と同じ方向に行っていた。従業員のことが見えてなかったし、お客さまのこともないがしろにしていた部分があったと思います」
間違った方向に向かっていたことを自覚した大久保氏は、会社の規模を大きくするという考えは捨て、今の顧客を大切にするという原点に立ち返った。棟数を年間50〜60棟に限定したのもこのときからだ。

「棟数を追っていくとどうしても数にバラつきが出がちで、暇なときが出てきてしまう。そうすると腕のよい職人さん達は逃げてしまう。それを見直して、棟数を限定し丁寧に作って品質を確保することにより、”より良い家”が出来上がる! そこに辿りつきました。今ではよかったと思っています」

反面、売上はほぼ一定となり、完成まで時間がかかることが理由で顧客を逃すこともある。しかし再び会社を大きくしないのかという問いに対して、大久保は首を振って答える。
「これが正解なのかどうかはわからないですが、5年後も10年後も、今の方針は貫き通します。これをひとつひとつ積み重ねていけたら、10年後のタイセーハウジングはきっとお客さまから愛され、なくてはならない必要不可欠な存在になっていると思います」

大久保武史

タイセーハウジング株式会社 代表取締役
https://www.taise-housing.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。