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岡部達彦
OKABE TATSUHIKO

岡部達彦

近代化学株式会社 代表取締役社長

美と健康を求める声に応え、ヘアケア業界の発展に貢献
シャンプー&リンスにヘアカラーリング剤、育毛剤にスタイリング剤。多岐にわたるヘアケア製品に求められるものとは。OEM、ODMメーカーとしての長い実績を誇る近代化学株式会社の岡部社長の挑戦を紹介しよう。
岡部達彦
90年以上に及ぶヘアケアとの関わり

「来年何が流行るかなんて誰にもわかりませんが、願わくば私たちが開発している、または関わっている製品であってほしいといつも思っています。他社が真似のできない製品を開発して、世界中に私たちの製品を届けていきたいですね」と語る、近代化学株式会社代表取締役社長の岡部達彦氏。同社はヘアケア関連の化粧品および医薬部外品のOEM、ODMメーカーだ。

そのルーツは1930年に東京・銀座に創業した美容室で、昭和中期に国産初のパーマネント液を開発したことなどを機に、化粧品のOEMメーカーに転換。美容室時代も含め、90年以上にわたってヘアケア製品と共に歩んできた。同業他社には特定の化粧品メーカーのOEM専門のところも多いが、近代化学はこれまでにさまざまなメーカーや美容室とコラボレーションしながら、新しいヘアケア市場を開拓してきた。

戦前は粉末タイプが当たり前だったシャンプーやヘアカラー剤について、多忙な美容師のために液体化したり、近年ではヘアカラーリング剤の分野で独自の製品開発を行い、毎年数多くの新製品を開発している。
「ひと口にヘアカラーリング剤といっても、医薬部外品扱いの永久染毛剤と、化粧品扱いの染毛料があり、さらに染毛料にもさまざまな種類があります。
染毛料の一種であるカラートリートメントは、当社が開発を手がけ始めた15年ほど前は日本には市場自体ほとんどありませんでした。元々は天然染料を含む植物のヘナにHC(ヘアカラー)染料を混合することで、マイルドながら濃い色に染められる粉タイプの染毛料を開発したのですが、髪を傷めず、艶を保ったまま染められるということで、一部で人気が出たんです。それを機に当社を含め各社がこれをアレンジし、クリームやトリートメントに配合したものをつくって切磋琢磨してきました。またさらに大手メーカーさんが『毎日使える』ことを売り文句にして大々的に販売したこともあって、今ではヘアカラーリング剤市場全体の5〜7%、輸入品も含めて65億円ほどの市場に成長しました。近代化学はその中でもトップのシェアを占めております」
長い年月をかけて蓄積してきた豊富なノウハウ、そして毎年少しずつ手を入れて進化させている製造設備が近代化学の大きな強みだ。

岡部達彦
大学との共同研究を積極的に展開

「すべての人にとって100点満点の、究極のヘアケア製品というものはありえません」と語る、岡部氏。シャンプーやリンス、ヘアカラーリング剤などに求める要素は、たとえ同じユーザーであっても、流行や季節、ヘアスタイル、年齢などによって移ろっていくからだ。
「またヘアカラーリング剤なら、手早く染まり、色落ちしにくいが髪のダメージが大きくなり、逆に髪を傷めないものは色が抜けやすく、繰り返し染めなければならないといった相反する要素もあります」

そこで、さまざまな要素のうち何を優先するかについて、クライアントと詰めていく。「逆に言えば、優先順位がはっきりしていて、『もうちょっと刺激が少ないものを』といった具体的な要望をいただければ、たいていのものはつくれるという自信があります」。ときには無理難題に近い要望もあるが、基本的に断るということはしないで、何かつくって提案するようにしていると言う。

そうした技術力に定評のある近代化学だが、岡部氏は現状に満足してはいない。「コストが安くすむからという理由で当社に依頼するクライアントもまだ多い。価格競争に巻き込まれないように、当社でないとつくれない製品を増やし、『少々高くても近代化学に頼みたい』と思っていただけるように、挑戦を続けていきたいですね」。そこで近年は、大学との共同研究も積極的に行っている。主な目的は、エビデンスを得ることだ。

「生活に身近なヘアケア市場ですが、まだまだ解明されていないことだらけ。人はなぜ白髪になるのか、なぜ髪が薄くなるのか。そんな基本的なことですら絶対的な解決方法は分からない。また私たちも、経験的に『この材料を加えたらこうなる』ということはよく知っているのですが、どの成分がどのように作用してそうなっているのか、実はよく分かっていなかったりします。そういった疑問にしっかり答えられるようにしながら、データを新しい製品づくりに活かしていきたい。現在当社には7名の専門スタッフがおり、複数の大学と共同研究を行っていますが、とくに早稲田大学との共同研究が目覚ましい成果を上げ始めています」
そうした社内外の協力によるシナジーが進化の原動力となり、突破口になると語る岡部氏。美と健康を求める世界中のユーザーの声に応え、業界の発展に貢献する挑戦は、これからも続いていく。

岡部達彦

近代化学株式会社 代表取締役社長
https://www.kindaikagaku.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。