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野坊戸薫
NOBOTO KAORU

野坊戸薫

株式会社誠輪物流 代表取締役社長

トラックドライバーの仕事の価値を
すべての人々に向けて発信したい
創業者である父の急逝を受け、誠輪物流の二代目社長となった野坊戸薫氏。以降、旧態依然としたトラック業界に独自のユニークな発想で切り込み、物流業界の常識を覆す数々のチャレンジを行っている。「私自身が彼らの大ファン。トラックドライバーを人びとが憧れる職業にしたい」と語る野坊戸氏の、物流業にかける情熱や開拓者精神の源泉に迫った。
野坊戸薫
物流業界に革命を起こす二代目女性社長

1996年に埼玉県鶴ヶ島市で創業した誠輪物流。以降、関東を中心に業務を拡大する同社を率いるのが、二代目社長の野坊戸薫氏だ。

高校時代まではソフトボールに打ち込み、卒業後はスポーツ専門学校へと進学。リラクゼーショントレーナーやスポーツショップの販売員など、様々な仕事を経験した後、父に誘われて誠輪物流で働き始めたという野坊戸氏。

「当初は掛け持ちのアルバイトでしたが、社員になってからは倉庫作業や配車など、社内の色々な業務に携わりました。当時は、自分の名前ではなく『社長の娘』や『お嬢』と呼ばれるのがとにかく悔しくて。地図をボロボロにしながらトラックにも乗ったり。とにかくすべての業務をこなせるようになろうと、朝から晩まで倒れるくらい必死に働いていましたね」

そんな野坊戸氏であったが、当時は父の跡を継ぐことを考えてはいなかった。
「トラック3台からスタートした会社をどんどん大きくする父は尊敬していましたが、経営者としての大変さも間近で見ていましたから。周囲には女性である私が社長になることに抵抗感をもつ人も多いだろうし、物流の仕事は楽しいけれど自分は自分で他の道を探したいとも考えていたんです」

ところが2017年3月に先代である父が急逝。二代目として社長に就任せざるを得ない状況になったとき、不思議と父の跡を継ぐ迷いは消えていた。

「甘くないとは思っていましたが、父が残した会社と仲間を絶対に私が守っていくんだという強い決意がありました。父が他界してすぐの頃は半年で倒産するんじゃないかとも言われましたが、支えてくれる仲間たちのおかげで3年が経った今も経営は順調。代替わりしてからの体制が整ってきた現在は、組織改革や働きやすい環境づくり、ドライバーや物流業界のイメージ向上を図る取り組みを進めているところです」と野坊戸氏は話す。

野坊戸薫
物流業界の常識を超える数々のチャレンジ

野坊戸氏が徹底するのが「人を大事にする経営」だ。
「父もとても社員に親身に接していましたが、私も同様に、仕事場では社員の“親”のような存在でありたいと考えています。だからこそ、一人ひとりの社員に自分の会社や職業に誇りや自信をもって欲しい。大きなトラックを自在に運転するトラックドライバーは、パイロットや電車の運転手さんに負けないくらいカッコいい。私自身がそう思っていますし、そんな彼らのカッコいいイメージを世間にもどんどん発信していきたい。そのためのブランド価値向上として、ラッキードットやサファリセイワなど、テーマに合わせたトラックのデザインを始めたんです」

カラフルな水玉が大胆にデザインされた「ラッキードット」に、ライオンやパンダなどの動物が描かれた「サファリセイワ」。よくある荷台部分だけのデザインではなく、動物の顔がトラックの正面から見えるようにデザインされているため、ドライバーと街をゆく人々のコミュニケーションにつながることもポイントだ。

「地元の方々も誠輪物流のトラックだとひと目でわかってくれますし、子どもたちが手を振ってくれたり、納品先の人たちがわざわざ駐車場まで見に来られたり。そうしたブランド価値向上のための広報ツールとしての役割も大きいですが、同時にドライバーも人に見られているという意識をより高くもつことができるため、モラルの向上や事故予防にもつながります。すでにサファリセイワの次のシリーズも考えていますし、今後はコックピットのようなトラックの内部をSNSなどで公開したり、実際に子どもたちに乗り込んでもらうようなイベントも実施したいと考えています」

トラックドライバーのイメージ向上を目指し、業界の常識にとらわれない発想で数々のチャレンジを行う。そんな野坊戸氏のユニークな発想は、自社の組織改革にも存分に活かされている。その最たるものが、昨年から導入されたグループ活動だ。

「そもそもトラックを運転するときは一人ですから、仲間同士のコミュニケーションが取りにくい。そこで全社員を8つのグループに分け、事故撲滅に向けたディスカッションや全員での昼食、社内の美化・リフォーム活動など、月に1回のグループ活動を行っています」

さらに今年はグループ毎にひまわりの花を育て、各グループ対抗のコンテストを実施。そうした活動を通じて社員が孤立せずコミュニケーションを取れるようになったことで、自ずと職場には笑顔や明るさが満ち、各グループの上長には責任感が育まれるようにもなった。

「リーダーには船頭さんや縁の下の力持ち、一緒に動くという3つのタイプがありますが、私は『仲間達と一緒にやる』ということを大切にしたいし、それしかできないと思っています。だから経営者としては常に愉快な仲間達と同じ目線に立ちつつ、個人的には物流業界の未来につながるような夢ももっています」

そう語る野坊戸氏が話してくれた夢が、運送の専門学校をつくること。
「たとえどれだけITが発展しても、物流は人々にとって絶対的に必要なもの。それを支えるトラックドライバーを即戦力として育成し、就業の場までを提供できる学校をつくりたい。そうした活動を通じて、現在のドライバー不足の解消や、物流業界のイメージ向上に貢献できればと思っています」

野坊戸薫

株式会社誠輪物流 代表取締役社長
http://seiwa-logi.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。